光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第196話 四人目の被害者

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広場では、多くのエルフがナタリーに釘付けになっていた。プニが魔力暴走したことで、プニの姿が見えない者にとっては、ナタリーから金色の魔力が溢れ出しているようにしか見えない。

「あの方は誰だ?」
一人のエルフが呟くと、近くにいた別のエルフが答える。

「ナダルニア調査団の聖女らしいぞ」

「あの方から溢れ出る金色の魔力に触れたら、俺の膝の痛みが消えたんだが!」

「私もだ!左目が霞んで見えなかったのが、今はっきり景色が見える!」

金色の魔力に触れた者たちが、自身の病気や怪我が治ったことを報告しあっている。中には、あまりの奇跡に涙ぐむエルフもいた。

ナタリーは衆目を集めていることに全く気づいていない。彼女の意識は、ヒカリが教えているプニの魔力操作の特訓に集中している。

(プニの魔力が減ったおかげで、制御出来ているの。これが、「魔力操作のコツ」なのね)

ナタリーは真剣な表情で、プニの体内を巡る魔力の流れを観察していた。

プニはナタリーの膝の上にちょこんと座りながら、ヒカリから魔力操作の特訓を受けていた。

「じゃあ次は、こうって魔力を外に出してみようか」
ヒカリはプニの目の前に手を出すと、その手のひらからゆっくりと光の魔力を流れ出させた。

「こんな感じでやってみて」

「プニ、分かった!」

プニは小さい手を前に出し、手のひらからの魔力放出を試みる。最初はゆっくりと流れ出た魔力だったが、すぐに勢いを増した。

「プニ、魔力抑えて」
ヒカリの指示に、プニは集中する。

「う、うん」
プニが意識的に制御すると、手のひらから出る魔力は徐々に弱まってきた。

「そうそう、フロストよりうまいよ」

ヒカリはプニの成功に笑みを浮かべた。その様子をナタリーも微笑みながら見守っていたが、周囲のエルフたちからは、ナタリーから金色の魔力が流れ出ているようにしか見えていなかった。

エルフたちは、遠巻きにナタリーを見つめ、ひそひそと囁き合っている。

「やはり聖女様だ。あれは癒しの光に違いない」

「ああ、こんな近くで聖女様の魔力を見られるとは、なんと光栄なことか」

ナタリーは、自身の膝の上で行われている精霊間の高度な魔力操作の特訓が、周囲に「聖女の奇跡」として誤解されていることに、全く気づいていなかった。彼女の意識は、全てプニに注がれている。

プニの魔力操作が安定している事を確認したヒカリは、次にイメージ操作を教えることにした。

「次はイメージ操作を教えるね」
プニは首を傾げる。

「お兄ちゃん、イメージ操作って何?」

「全員を治すなら、こうやって大量に魔力を放出すればいいんだけど」

ヒカリはそう言って、手のひらから再び金色の魔力を大量に放出した。広範囲を照らすその光は、周囲のエルフたちの顔を再び輝かせた。

「これで広範囲の人を治せるんだけど、ナタリーだけを治すなら、こんなに魔力は使わなくていいんだ」

ヒカリは魔力の放出を止めると、ナタリーの手の方にヒカリの手を向けた。

「ナタリーのお手々の怪我だけ治したいってイメージすると、魔力も少しだけ出てくるんだよ。ほら」

ヒカリの手から、今度は繊細で微細な光の粒がナタリーの手に向かって流れ、そっと消えた。ナタリーの手には元々怪我はなかったが、プニにはその違いが明確に伝わった。

「そうやってイメージすることで、魔力の強弱を無意識で使えるようになるんだ」

「なるほど……」ナタリーはヒカリの説明に感心していた。魔力操作の訓練は、技術だけでなく、精神的な集中とイメージが重要であることを改めて理解した。

プニは目を輝かせた。

「プニ、分かった!じゃあ次は、ナタリーのくしゃみを治す!」
ヒカリとナタリーは顔を見合わせて笑った。

(ヒカリ様の教え方は、本当に分かりやすいわ……)

ナタリーが感動している一方、周囲のエルフたちはヒカリのデモンストレーションに目を奪われていた。

「すごい!聖女様は、自分の意のままに光を操っておられるぞ!」

「最初の大規模な光は、私たち町民への施し。そして、今の微細な光は、ご自身を気遣うための……聖なる錬成だ!」

エルフたちは、ナタリーの周囲で行われている精霊の特訓を、全て「聖女ナタリー」の偉大なる力だと解釈し、一層深く頭を垂れるのだった。

プニの魔力が徐々に回復してきているが、魔力操作が乱れることは無いことを確認したヒカリは、世界樹へと戻ることにした。

「うん、魔力量が増えても安定してるね」

「ナタリー、俺、世界樹に戻るから後はよろしくね」

「もう暴走はしないと思う」

「はい、分かりました」
ヒカリが周囲を見渡すと、かなりの数のエルフが広場に集まっている。その中には、ララとムムの姿もあった。

ララはエルミナに世界樹の報告を終え、この騒ぎの確認のために広場へとやって来たのだ。

「それじゃあ行くね。あとララが来てるから報告よろしく」

「え?どういうことですか?」
ナタリーが周囲を見渡すと、多くのエルフが自分を見ていることにようやく気づいた。

「羽目を外すとこうなるってことかな」
クラリス、モニカ、ファラに続いて、ナタリーまでもがヒカリによって災難に巻き込まれるのだった。

「え?ちょ、ヒカリ様……」
ナタリーが慌てて呼び止めるが、ヒカリはララに声をかける。

「ララ、あとよろしくね」
ヒカリはそう言うと、そのまま空へと飛び立っていった。

ララは、人々の熱い視線に囲まれているナタリーの下へと歩いてきた。

ララはニコリと微笑むと、ナタリーに声をかけた。
「ナタリー様、女王エルミナの下へとお越しいただけますか?」

「え、あ、はい……」
ナタリーはララに連れられて、群衆の中を歩き始めた。ようやく周囲の声が、ナタリーの耳に届くようになる。

「聖女様、ありがとうございます!」

「聖女様の金色の魔力で、見えなかった景色が見えるようになりました!」

一人の老婆が涙ぐみながらナタリーにお礼を述べると、周囲からも「聖女様!」コールが溢れ出した。

突然の事態に困惑するナタリーは、助けを求めるようにララを見るが、ララはただ微笑むだけだった。

プニはそんなナタリーの肩にちょこんと座り、「ナタリー、すごーい!」と無邪気に喜んでいた。

ヒカリは、黒フードの男のことが気になった。
「そういえば黒フードの男どうなったかな」

「ちょっと寄ってから戻るかな。ソラリスが尋問するって言ってたけど、どこにいるんだろ」
ヒカリはソラリスの魔力を探る。

「お、あった」

ヒカリはソラリスの魔力のする方へ向かうと、そこにはエルフの詰所があった。詰所の奥へと進むと階段があり、それを下りた先にソラリスがいた。

ソラリスの近くまで行くと、ソラリスはヒカリの方を見て話しかけた。

「光精霊や」

「何?」

「こ奴の光の拘束を解いてくれんかの?」

ソラリスは地面に転がる黒フードの男を指差した。男はヒカリがかけた光の拘束から解放されていなかった。

「別にいいけど、どうしたの?」

ソラリスは、黒フードの男に自白の魔法を試みたが、ヒカリのかけた光の拘束が悪しき魔力を吸収し、浄化してしまうことを説明した。

「え?そんな機能あるの!」
ヒカリは驚きの声を上げた。

「なぜ自分でかけた魔法の効果がわからんのじゃ!」
ソラリスは苛立ちを隠せない。

「いやー……ドンマイ」

ソラリスは溜め息をつく。
「はぁ……とりあえず頼むのじゃ」

「は~い了解。解除っと」
黒フードの男にかかっていた光の拘束が消え去る。

「それにしてもこいつ、凄く怯えているね」
黒フードの男はガタガタと音を立てて震えていた。

「呪いの刻印で自殺を計ったが、何故か回復してまた苦しんでを繰り返しておった影響で精神が壊れただけじゃ」
ソラリスは事も無げに言った。

「そうなんだ。こんな状況で情報なんて聞けるの?」

「精神が壊れたのは、ちょうどよかったんじゃ」

「へー、そうなんだ」

「もともと自白魔法は精神力を弱らせてから使わないと抵抗されて上手くいかない魔法なんじゃが、魔法を使うと光の拘束に吸収されてのう」

ソラリスは、プニの暴走魔法が、意図せず尋問に必要な下準備を済ませてくれたことに、気づいていない。
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