光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第198話 クラリスの心の隙間

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クラリスは学院での充実した毎日を送っている中でたまに淋しげな表情を浮かべていた。

(カインのバカ……)

ルームメイトのファラやモニカと話をしたり、一緒に勉強したり。さらにセシリアとエリーナが加わると、部屋はさらに賑やかになる。休日は町で買い物や食事を楽しむなど、穏やかな日常を過ごしている。
ダンジョン訓練も順調に進んでおり、彼女たちのパーティーはついに五層に到達した。

五層の訓練中、精霊たちは周囲を警戒しながらも、契約者に手を貸すことはしなかった。ヒカリから契約者自身が状況を判断し、戦略を立てる力を養うための訓練だから手を出さないようにと言われている。

「ライン、どう?」
ファラが契約精霊のラインに話しかける。

「連携も取れてていいんじゃないか。この調子でいけば、次のフロアも問題ないだろう」

ファラだけでなく、セシリア、エリーナ、そしてアレンも、それぞれの契約精霊に戦略の確認などを取っていた。

みんなで話し合ったり、個人的に精霊に確認したりする中、クラリスの契約精霊であるカインはまだ世界樹から戻っておらず、クラリスはモニカと話をしていた。

「カインとヒカリまだ戻らないわね」
クラリスが少し寂しそうな表情でモニカに話しかける。

カインが死の森の瘴気によって暴走してしまい世界樹で静養する為に帰りが遅れることやヒカリは後始末で世界樹に残る事をラインからファラ経由で聞かされていた。

「大丈夫ですよクラリス。ヒカリ様が戻らないってことは、それだけ重要な用事があるってことだと思います」
モニカはそう言ってクラリスを励ました。

「そう、だよね……」
クラリスは、早くヒカリに、五層に到達したことを報告したいと思っていた。

クラリスにとって、ヒカリは五歳の時から常に共に過ごしてきた存在だった。

たまにふらりと居なくなることはあっても、ヒカリは必ずクラリスの元へと戻って来た。

(ちゃんと戻ってくるよね……ヒカリ……)

クラリスは、ダンジョン訓練の緊張感と、ヒカリが隣にいないという少しの不安が入り混じりながら、カインとヒカリの帰りを心待ちにしていた。

充実した毎日であっても、クラリスの胸の奥底には、ぽっかりと空いた穴があいていた。

周りには信頼できる友人たちがいる、訓練も順調に進んでいる。しかし、五歳の時からそばにいたヒカリが今、この場にいないという事実が、その小さな穴を埋めることを許さなかった。

(ヒカリ……あなたが居ないと、やっぱり少し、心細いよ)

クラリスは、周囲に悟られないよう、そっと胸元を押さえた。彼女にとってヒカリの存在は、自身の存在を支える「拠り所」そのものだったのだ。

その頃、ヒカリは世界樹の根元へと戻っていた。
闇精霊の具合を確認していると、すぐに違和感を覚えた。
「あれ? 闇精霊の魔力、減ってるね」

ヒカリの言葉に、カインもすぐに闇精霊を調べ、確認する。
「うむ、確かに減っているな」

ヒカリは、さらに闇精霊の奥底を探ってみた。すると、単なる闇属性の魔力だけでなく、色とりどりの魔力が渦巻いているのを感じた。

「うぉ! 他にも属性いっぱいあるよ、この子!」
ヒカリは驚きを隠せない。

「火、水、風、地、氷、雷で、闇だね」
ヒカリは一つ一つ数え上げた。

「光だけないね」

カインは静かに分析する。
「七属性。通常、一つの精霊が一つの属性を持つのが自然だ。これだけの属性を同時に有しているということは、他の精霊の魔力を無理やり組み込まれた可能性があるな……」

「実験での影響ってことかな……」

ヒカリは、闇の崇拝者が世界樹の生命力を使った「王の完全復活」を目論んでいるという情報を思い出し、闇精霊が何らかの非道な実験の犠牲になっていることは認識している。

カインの表情が険しくなる。闇精霊の魔力の減少は生命力の低下に直結し、このままでは精霊の命が危ない。

「この魔力の減少を止めなければ、闇精霊の存在そのものが消滅してしまうぞ」

「この子の事を相談できる人って誰だろ……」
ヒカリは当初ララに相談する予定だったが、闇精霊の異様さに、迂闊に相談できないと判断した。

「一人居るんだけどな……」

「ほう」
カインが静かに促す。

「いつもいきなり話しかけてくるおばさんが居てさ」

「おばさんとは何だ?」
カインは聞き慣れない言葉に怪訝な声を上げた。

「年を取ってる人って意味だよ」
ヒカリは説明を加えた。

「そのおばさん、今寝てるんだよな」

「そのおばさんとやらを起こせばいいのではないか?」
カインが当然のように提案する。

「そのおばさんの起こし方が分からないんだよね」

「おばさん、何処に居るかも分からないしさ」

ぶち!
「ん?カイン何か言った?」

「我は何も言ってないぞ」

「おばさんを起こす方法な……」

ぶち!ぶち!
「このわっぱ!」
突如、ヒカリの頭の中に声がこだました。

「うおっ!」
ヒカリは驚いて飛び上がった。

「どうした、ヒカリ?」
カインが尋ねるが、ヒカリはそれどころではなかった。

「おばさんとは妾のことか!」

(お! 反応した!)
ヒカリは内心でガッツポーズを取りながらも、すぐに愛想笑いを浮かべた。

「いえ、滅相もございません!」

「起きた次いでにご相談があるのですが?」

「わっぱ、消えたいらしいな!」
声が頭に響き、ヒカリは慌てて否定した。

「謹んでお断りいたします!」

「まったく……図々しいのう、光精霊。で、何の用じゃ。妾を起こすほどの急ぎの用と申すか?」
怒りを含んだ声だったが、ヒカリが退かないことに観念したように、問うてきた。

「実は、闇精霊の容態が異常でして。魔力が減っている上に、七属性の魔力が混ざっているんです」
ヒカリはすぐに本題に入った。

ヒカリの言葉を聞き、その存在の声色が初めて真剣なものへと変わった。

「……七属性じゃと? それは、ただ事ではないのう……。どれ、妾に見せてみい」

ヒカリは闇精霊にそっと手を置いた。
「魔力が回復したと思ったら、また減りだしたんですが」ヒカリが報告する。

「ふむ、かなり核がやられておるようじゃな」
大精霊の声が響いた。

「核の修復で魔力を使っているようじゃが、魔力が足りておらんな」

「魔力の回復を待ってから核を修復しとるようじゃが治りきらない所で魔力が枯渇しかけてまた魔力を回復するサイクルをやっておるようじゃ」

「この精霊の力だけでは核が治ることはないのう」

「では、どうすれば?」

「お主の魔力を分けてやればよいぞ」

「光の魔力を与えて問題ないのですか?」

「ふむ、眷属化すれば問題ないのじゃ」
ヒカリは「眷属化」という言葉で、プニのことを思い出した。

(プニに名前付けたらごっそりと魔力を持っていかれたアレのことか)

ヒカリの思考を読み取った大精霊が、即座に答える。
「ふむ、合っておるぞ」

ヒカリはあることを企てる
「火属性でも問題ないでしょうか?」

「魔力を与えることだけじゃからな属性は問わんぞ」
ヒカリはニヤリとしてカインに話しかけた。

「カイン、この子に名前を与えると治るんだって。良い名前無いかな」

ヒカリの言葉に、カインはぶつぶつと呟いた。
「名前か……アイン……コイン……サイン……レイン……ライン……むむむ!あやつも入ってしまうではないか……しかし…」

(なぜ自分の名前を入れようとしてるんだ)ヒカリは心の中でツッコミを入れる。

「レインはどうだ?」

(いやいや、レインって雨だし水属性だし、あなたの弱点属性なんですけど……まぁこの世界のレインが雨とは限らないからな)

「カインがそれでいいならいいんじゃないかな」

「うむ、ならこやつはレインだ」
次の瞬間カインからレインに魔力が流れた

「うぉ!魔力が吸われたぞ」

「おめでとうレインはカインの弟になりました」

「な、なぜだ!」
また一精霊カインの兄弟が増えた。

闇精霊レインの魔力が核の修復で枯渇寸前だったが、カインの眷属になることによって魔力が回復し核が修復された。

「あれ?闇の魔力が薄くなっちゃったね」
レインの闇属性が小さくなった代わりに火属性が大きくなった。

「火属性の眷属になった影響じゃろうな」
それでも七属性に変わりはなかった。

「妾はもう寝るのじゃ……次起こしたら消すぞ」

「ありがとうございました」

「うむ……」
光の大精霊はまた深い眠りについた。
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