光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

文字の大きさ
45 / 199

第45話 クラリスの婚約と領地巡り

しおりを挟む
クラリスの父である公爵は、久しぶりに娘と対面すると、開口一番こう告げた。

「クラリス、お前は12歳になると王宮でのお妃教育が始まることになるぞ。」

クラリスは、その言葉に眉をひそめた。

「……お父様、私はまだ王子との婚約について返答をしていないはずです。」

王子との婚約話は以前から持ち上がっていたが、クラリス自身はまだ正式な返答をしていない。

だが、公爵はまるでそれが当然のことのように、あっさりと告げた。

「決まっていることだ。お前がどう思おうと、この話はすでに進んでいる。」

クラリスは言葉を失った。

(……やっぱり、お父様は最初から私の意見など聞くつもりはなかったのね。)

「その上で、お前には今年のうちに我が領地を見て回るように言い渡す。」

「領地を……?」

「そうだ。公爵令嬢として、民の生活や領地の状況を知っておくべきだ。」

クラリスは困惑しながらも、公爵令嬢として当然のことなのだと、無理にでも自分を納得させるしかなかった。

その夜、クラリスはベッドに座りながらため息をついていた。

「はぁ……。」

王子との婚約話は、もはや避けられない状況になっている。
さらに領地巡りも急に決まってしまい、心の整理がつかない。

「……なんで私の人生は、全部決められてしまうのかしら。」

ふと、窓際に目をやると、光の精霊ヒカリがふわふわと浮いていた。

「クラリス、今度領地を見て回るんだよね?」

クラリスは暗い表情のまま、ぼそりと答えた。

「ええ……そうよ。」

ヒカリは少し考え込むような仕草をしてから、明るい声を上げた。

「公爵家の領地には何があるんだろうな!」

クラリスはその言葉に少し驚いた。

「え?」

「俺、クラリスが見たことないものとか、聞いたことのないことがいっぱいあると思うんだ。」

ヒカリはくるくると回りながら、楽しそうに言う。

「俺とカインがついてるし、楽しく旅をしようよ!」

「……楽しく、旅を?」

クラリスの表情が少しだけ和らいだ。

「そうだ。気晴らしにはちょうどいいだろう。」

カインも腕を組みながら頷いた。

「どうせ行くなら、少しは楽しめるようにしろ。」

「……そうね。」

クラリスは小さく微笑んだ。

(王子との婚約や公爵令嬢としての責務に囚われていたけれど……ヒカリとカインと一緒なら、少しは前向きに考えられるかもしれない。)

「ありがとう、ヒカリ、カイン。」

数日後——。

クラリスは馬車に乗り込み、公爵家の領地巡りを開始した。

「さて、最初の目的地は西の村ね。」

馬車の外では、豊かな田園風景が広がっている。
ヒカリとカインもクラリスの周りをふわふわと漂いながら、景色を眺めていた。

「うわぁ! こんなに広い畑があるんだね!」

「ふん、田舎の景色だな。」

カインは興味なさそうに言うが、ヒカリは楽しそうに窓の外を眺めている。

「クラリス、あれって何を育ててるの?」

クラリスは窓から畑を見つめる。

「……あれは小麦ね。公爵家の領地では、小麦がよく育つの。」

「へぇ~、パンとか作るのかな?」

「ええ、ここの小麦は王宮にも送られているのよ。」

クラリスが説明すると、ヒカリは感心したように頷いた。

「すごいね! じゃあ、この村の人たちが頑張って育てた小麦が、王宮の料理にも使われてるんだ!」

「……そうね。」

クラリスは改めて、自分の領地の重要性を実感した。

「でも、王宮に送られる分が多いから、村の人たちが十分に食べられているかが心配ね。」

「ん? そうなの?」

「ええ……貴族の食事を優先するために、農民たちの生活が苦しくなることもあるわ。」

ヒカリの表情が少し曇った。

「それって……ちょっと不公平じゃない?」

「……そうね。でも、それが貴族社会の現実よ。」

クラリスは寂しそうに微笑んだ。

「……でも、私はこの領地をもっと良くしたい。」

「クラリス……。」

ヒカリとカインは、そんなクラリスの想いを静かに聞いていた。

しばらくして、馬車は西の村に到着した。

「お嬢様、こちらが村長です。」

執事の紹介で、村長がクラリスの前に跪いた。

「クラリス様、おいでいただき光栄です。」

「ええ、今日は村の様子を見に来ました。案内をお願いできますか?」

村長は緊張しながらも、村のあちこちを案内してくれた。

畑、家畜小屋、市場——。

どこも活気に満ちているが、その裏では厳しい生活をしている人々の姿も見えた。

「……やはり、食料が足りていないのね。」

クラリスは村の子どもたちが小さなパンを分け合っているのを見つめながら、そう呟いた。

ヒカリは、そんな彼女の肩にそっと寄り添う。

「クラリス、できることはあるよね?」

「……ええ。私は公爵令嬢として、この領地をより良くする方法を考えないと。」

クラリスは決意を込めて、村の人々の生活を目に焼き付けた。

こうして、クラリスの領地巡りの旅が始まったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

処理中です...