光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第85話 アレンの出生の秘密

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クラリスは父、現公爵の執務室に呼ばれた。

重厚な扉をくぐると、そこには厳格な表情を浮かべた父が座っていた。

「クラリス、よく来たな」

「はい、お父様。今日は何の御用でしょうか?」

父は静かに息をつき、クラリスを見据える。

「お前に話しておくべきことがある。……アレンの出生についてだ」

「アレンの……出生?」

クラリスは少し驚いたが、父の真剣な表情に黙って続きを待った。

「アレンは、前辺境伯の子息だ」

「えっ……!?」

クラリスは思わず目を見開いた。

「前辺境伯……それって、確か……」

「そうだ。約十年ほど前、弟による謀反で命を落とした男だ」

クラリスの父は淡々と語り始めた。

「前辺境伯は王に忠誠を誓い、領地を守る優れた当主だった。しかし、彼の弟――つまりアレンの叔父にあたる男が謀反を起こし、彼を討ったのだ」

「そんな……!」

クラリスは手を口元に当て、信じられないという表情を浮かべた。

「しかし、その弟は無能だった。王への反乱を起こす度胸もなく、結局は領地の統治すらままならず、ほどなくして没落を命じられた」

「では、今の辺境伯の領地は……?」

「現在は王族の管理下にある。辺境伯家は名実ともに消滅した。しかし――」

父はクラリスをじっと見つめた。

「アレンが生きている。前辺境伯の正当な血筋としてな」

「……!」

「いずれは、アレンを辺境伯として領地を継がせる予定だ」

「アレンを、辺境伯に……?」

クラリスの胸が大きく揺れ動く。アレンが貴族の出であるとは思っていたが、まさかそんな重い運命を背負っていたとは――。

「しかし、今はそのことを伏せておくように王より言いつかった。彼には学園を卒業した後、正式に辺境伯の当主になってもらうことになる」

父はそう言い切った。

「……アレンも、学園に通うのですか?」

「そうだ。魔力を持っている以上、普通に学園に通わせる予定だ」

クラリスは父の厳しい声に思わず背筋を伸ばした。

「クラリス、この事をアレンに言うことを禁ずる。卒業後に王より正式に任命されるまで、決して口外してはならん」

「……はい」

クラリスはしっかりと頷いたが、心の中は複雑だった。アレン自身が自分の出生を知らずにいるのは当然だったとしても、彼の未来がすでに決められていることに少し戸惑いを感じた。

(アレンは、この事実をどう受け止めるのかしら……)

だが、父の言葉はまだ続く。

「そして、クラリス。お前の王妃教育の際、王城には執事見習いとしてアレンを付ける」

「執事……見習い?」

クラリスは少し意外に思った。アレンを辺境伯にするならば、それなりの貴族教育を受けさせるべきではないのか。

父は淡々と説明を続けた。

「アレンには、お前が教育を受けている間、王城の騎士団で鍛錬してもらうことが決まっている。単なる貴族教育だけでなく、剣と魔法の実戦経験も積ませる。それが、今後の彼に必要なものだからな」

「なるほど……」

クラリスは納得した。確かに、ただ貴族として振る舞うだけでなく、実力を持った辺境伯として認められるためには、戦いの技術も不可欠だ。

しかし――

「アレンは……それを受け入れるでしょうか?」

「おそらく、彼自身は何も疑問に思わんだろう。彼はすでに騎士としての修行を積んでいるし、これまでの生き方を考えれば、鍛錬の機会を拒むことはないはずだ」

父の言うことはもっともだった。アレンは剣の腕も立ち、魔力の素養も持っている。王城での騎士団の鍛錬を申し付けられれば、むしろ積極的に励むだろう。

「しかし……執事見習いというのは?」

「それは、王城に出入りする貴族としての礼儀作法を学ばせるためだ。実際に王の目に触れる機会を増やし、いずれ正式に辺境伯として認められるための布石となる」

「……なるほど」

クラリスはもう一度考えた。

(アレンが王城で騎士団の鍛錬を受け、執事見習いとして宮廷の礼儀作法を学ぶ……そして卒業後に正式に辺境伯となる)

アレン自身は今、このことを何も知らない。

(だけど、彼ならきっと……)

クラリスは微笑んだ。

「お父様、分かりました。アレンにはこのことを言いません」

「うむ。それでいい」

父は満足そうに頷いた。

「お前も王妃教育が始まれば、王城と屋敷の行き来が多くなる。アレンも共に動くことになるが、くれぐれも変に情を移しすぎるな」

「……はい」

その言葉に、クラリスの胸がわずかにざわついた。

(情を移しすぎるな、か……)
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