光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第118話 エルフの国へ

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「失敗したな……ファナに聞けばよかった」

グロリア帝国を離れたヒカリは、空を飛びながらぼやいた。あの騒ぎのあと、逃げるように出てきたため、ファナにこの世界の地理を尋ねる暇もなかった。

「あの状況だと、説教と説明に時間取られるからな……。ファナ、大丈夫かな」

心配そうに空を見上げるヒカリだったが、すぐに首を振った。

「ま、いいや!」

気持ちを切り替え、ヒカリは再び空を飛び続けた。しかし──

「うーん、どっちに行けばいいんだろ……」

さすがに手掛かりなしで空を飛び続けるのは無理があった。しばらく考え込んだ末、ヒカリはぽんと手を打った。

「そうだ!」

何かを思いついたらしく、ぐんぐんと高度を上げていく。やがて雲を突き抜け、高度2万メートル──成層圏に達した。

そこから地上を見下ろすと──

「お、あった!」

ヒカリの目に飛び込んできたのは、空に届くほどの巨大な樹木だった。

「故郷、到着!」

ヒカリが見つけたもの。それは、かつて自分が育った場所──世界樹だった。

「何年ぶりだろ……」

世界樹の周りでは、色とりどりの精霊たちがふわふわと漂っている。

「俺もこんな感じだったなぁ」

懐かしさを胸に、ヒカリは世界樹の周辺を探索した。そして、樹の根元近くに、自然と調和した家々が立ち並ぶ光景を発見する。

そこは、エルフたちが暮らす国──リンドの国だった。

「おー、エルフだ!」

興奮気味に声を上げながら、ヒカリは辺りを見回した。しかし──

「これって……国っていうより、集落にしか見えないんだよな」

王国や帝国のような威圧感はなく、静かで自然と一体化した空間だった。

王がどこにいるのか見当もつかないヒカリは、ひときわ大きな家を目指すことにした。

「世界樹に近いからか、精霊がいっぱい居るな」

ナダルニア王国やグロリア帝国では、精霊を見るのは稀だった。それに比べ、ここではあちこちに精霊が舞っている。

ふわふわ漂う精霊たちに話しかけてみたが、まだ自我を持っていないらしく、返事はなかった。

やがて、目当ての大きな家に到着したヒカリは、ためらいなく中へと入っていった。

「お邪魔します──って、返事は、ないか」

無意識に日本人だった頃の癖で声をかけた。だが──

「いらっしゃい」

返事が返ってきた。

「え? え?」

驚いたヒカリの前に、クラリスと同じくらいの年頃のエルフの少女が立っていた。

「どうしたの、精霊さん?」

少女はにっこりと笑った。

「いや、返事が返ってくるとは思わなくて……」

ヒカリが戸惑いながら言うと、少女はクスクスと笑った。

「うん、家に入ってくる精霊はいるけど、『お邪魔します』って挨拶して入ってくる精霊は初めてかな」

そう言って、彼女は自ら名乗った。

「私はこの国の第一王女、ララノア。みんなからはララ様って呼ばれてるわ」

「はじめまして。光精霊のヒカリって言います。ララ様、ご機嫌麗しゅうございますか!」

ぺこりと頭を下げたヒカリに、ララノア──ララは一瞬きょとんとした後、手で口を押さえ、くすくすと笑い出した。

「面白い方ね、ヒカリは」

「でも、ララ様。なんで俺のことが見えるの? 光属性なの?」

「いいえ、私は地属性よ。でもね、私には精霊を見る目があるの」

ララは自分の目を指差して言った。

「この目を持つ者が、次の女王になるって言われているの」

「へぇー、すごいな」

「それに、私のことはララでいいわ。様なんていらないわ」

「わかったララ! じゃあ俺もヒカリで!」

二人は笑い合った。

「ってことはさ、ララのお母さん──女王様も俺のこと見えるってこと?」

「ええ、もちろん」

「よっしゃ、ラッキー!」
ヒカリはガッツポーズを取った。

「ララさ、ちょっと女王様に会いたいんだけど、会えないかな?」

「女王様に?」

ララは小首をかしげた。ヒカリは、自分が探しているブレスレット──精霊大戦後に作られた王の証について、簡単に説明した。

「……たしかに。お母様の腕には、ブレスレットがあるわ」

ララは真剣な顔で頷いた。

「よかったー! じゃあ、女王様に会わせてくれる?」

ヒカリが身を乗り出すと、ララは少し困ったように笑った。

「ふふ、いいけど……お母様、今はお昼寝中なのよね」

「ええ……女王様ってそんな自由なんだ……」

「エルフの時間はゆったりしてるから。焦らなくても大丈夫よ」

ララはヒカリに手招きした。

「お母様が起きるまで、私と一緒に待たない? リンドの国、案内してあげる」

「おお、ありがたい! よろしく頼むよ、ララ!」

ヒカリは嬉しそうに飛び上がった。

ララに案内され、ヒカリはリンドの国の中を見て回った。
そこには、人間の国とはまるで違う、自然と調和した暮らしが広がっていた。

「ここの木の家、全部生きてるんだよ」

ララは誇らしげに言った。

「生きてる?」

「うん、切り倒して作ったんじゃなくて、お願いして形を作ってもらったの。地の精霊たちと一緒にね」

「へぇー、エルフってすごいな……」

「ヒカリだって精霊なんだから、お願いしたらできるんじゃない?」

「いやー、俺、光属性だからさお願いすると夜も明るすぎて寝れなくなるよ」

「ぷっ……あははは!」

ララはお腹を抱えて笑った。ヒカリもつられて笑う。

そんなふうにのんびりと国を回っていると、遠くの方で鐘の音が鳴り響いた。

「起きたみたいね」

ララがにっこり微笑んだ。

「女王様、目覚めたってことか!」

「うん。こっちよ!」

ララに手を引かれるまま、ヒカリは再び大きな家へと向かった。

中に入ると、奥の部屋に一人の女性が立っていた。
長い黄緑色の髪と、深い緑の瞳──そして、優雅な雰囲気を纏ったエルフの女王だった。

「お母様、精霊さんを連れてきたわ」

「……精霊、ね」

女王は静かにヒカリを見つめた。そして、微笑んだ。

「光精霊よ、ようこそリンドの国へ。私はこの国の女王、エルミナ」

「はじめまして、エルミナ様! 光精霊ヒカリと申します!」

ぺこりと頭を下げたヒカリに、エルミナは柔らかくうなずいた。

「何か、用があって訪ねてきたのかしら?」

「はい! あの、女王様のブレスレットのことをお聞きしたくて!」

ヒカリは一気に、精霊大戦後に作られたブレスレットのこと、そしてその浄化能力を確かめたいことを説明した。

話を聞き終えたエルミナは、ふっと笑った。

「なるほど、そういうことね。確かに、私の腕にはそれがあるわ」

彼女は左手首を見せた。そこには、美しい文様が刻まれた銀のブレスレットが輝いていた。

ヒカリは近づき、そっとブレスレットに手をかざして
ブレスレットに魔力を流し込んだ。自身の光属性の魔力がブレスレットに触れた瞬間、部屋全体がまばゆい金色の輝きに包まれた。

「っ!?」

「……うん、反応してる!」

ヒカリの指先に、光の粒が吸い寄せられるように集まった。
間違いない。このブレスレットには、浄化の力が宿っている。

「よかった……!」

思わず胸をなでおろしたヒカリに、エルミナが優しく微笑んだ。

「これが、あなたの探していたものね」

「はい! エルミナ様、ありがとうございます!」

「いいえ、こちらこそ。こうして精霊たちが再び力を貸してくれるなら、私たちも未来に希望を持てるわ」

エルミナの言葉に、ヒカリは強く頷いた。

こうして、リンドの国での目的を果たしたヒカリは少しリンドの国に滞在することにした
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