光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!

ほんわか

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第136話 ファナ・フォン・マクシマス

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「ふぅーっ……やっぱりアーチの風は気持ちいい!」

港に降り立ったファナ・フォン・マクシマスは、潮風に髪を揺らしながら大きく伸びをした。彼女はグロリア帝国の王女。けれど、その姿からは堅苦しい王族の気配は感じられなかった。

おてんばで好奇心旺盛なファナは、度々貿易船にこっそり乗り込んでは、ナダルニア王国の港町アーチへと遊びに来ていた。

同年代で、初めてだった。肩書きや立場を越えて、自然に話ができる存在。ファナにとって、クラリスとの出会いは衝撃だった。

母国では、どれだけ令嬢や子息に囲まれていても、それは「皇女様」に対するもの。対等な立場で話しかけてくれる者など、一人もいなかった。

そしてもう一人、ファナの心を大きく揺らした存在がいた。

「……ヒカリ? 光の精霊?」

淡い金色の光を纏い、凛と立つその姿。クラリスと共にいた光の精霊ヒカリの存在は、ファナの心に不思議な感情を呼び起こした。

「クラリスと……あたしも、あの学園に通いたい!」

王立セントラル学園――クラリスが入学すると聞いたとき、ファナは心からそう願った。

「でも……母国の学院に行っても、どうせまた周りはおべっか使いばっかりで、本当の友達なんてできない……」

その日から、ファナは本気で勉強を始めた。

「ナダルニア語は問題ないわ。ママ、ありがとうね。」

「ふふ、あなたに教えた甲斐があったわね。ファナ。」

ファナの母、皇妃エルナはナダルニアの出身で、日常的にその言葉を話していた。そのため、語学の壁は最初から存在していなかった。

「問題は……お父様をどう説得するか、よね。」

だが、その点も――

「安心して、ファナ。私が話をつけておいたわ。」

「ママ!? 本当に!?」

「ええ。ファナの願いだもの。」

そして、皇帝から正式に許可が下りた日。ファナは歓喜と――恐怖を同時に味わうことになる。

「い、一体どういうことなのよヒカリーっ!」
その日の夜。部屋で叫び声が上がった。

王立セントラル学園の入学試験。それは、ファナ一人で受ける特別な形となった。学園側の配慮で、他の生徒たちと顔を合わせず、個別試験として実施されたのだ。

数日後。合否通知がグロリア帝国の王宮に届く。

「ファナ、来たわよ。」

「ママっ、開けて、早く!」

震える手で封筒を開け、文面に目を通す。

「……『合格』。しかも……首席合格!?」

「ファナ……!」

「う、うそ……あたしが、首席……?」
エルナは涙を浮かべて娘を抱きしめた。

「よくやったわ、ファナ。本当に、よく頑張ったのね……」

そして報告を受けた皇帝も、喜んでいたが何処か寂しさをにじませた、ファナは入学のためにナダルニア王国へと旅立つことになった。

「ナダルニアの王宮に短期滞在するのね」

「ええ。私が父と話をつけておいたから。」
流石に隣国の、王女を宿に滞在させるわけにもいかない為、王は許可を出した。

「お祖父様とお祖母様に久しぶり会えるのね」
ファナは喜ぶ反面エドワード王太子に会うのは嫌だった。
ファナは、これまで何度か王太子エドワードと顔を合わせていた。が、その印象は正直良くなかった。

――けれど。

「ようこそ、ファナ王女。」

「……誰?」

「エドワードだよ。久しぶりだね。」

「え、うそ……」

そこにいたのは、以前とはまるで別人のような、明るく、そして威厳のある青年だった。

「エドワードって……こんなに明るかったっけ?」

「ある時を境に、視界が晴れたような気がしてね。」

エドワードはそう言って微笑む。その姿に、ファナはしばし言葉を失った。

――そして、さらに驚くことがあった。

「ちなみに、ファナが言ってたクラリスって私の婚約者だよ。」

「はっ!?」

あまりのことに、ファナは大声を上げてしまった。

「ちょ、ちょっと待って!? クラリスが……婚約者!? エドワードの!?」
ファナはエドワードの変わりように驚き婚約者がクラリスなのにも驚いた。

――クラリス、ヒカリとの学園生活。

「あたしも、……その中に入れるんだ。」

空を見上げたファナの目には、決意と喜び、そしてほんの少しの不安が浮かんでいた。

「……ヒカリ。あんたには、言いたいことがあるんだからね。」

つぶやくその言葉は、風に乗ってどこかへと流れていった。

だが、ファナの胸の内には、確かな期待が満ちていた。
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