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うちのばあちゃんは達人
しおりを挟むうちのばあちゃんはそろばんの達人だ。
パチパチパチパチと僕が片手で珠を弾くところを、ばあちゃんの場合……。
―――シャラララララ
目にも止まらない早業というのは、まさにこのことだろう。
僕が片手で2桁、3桁の掛け算を1問解く間に、ばあちゃんは5桁、6桁の掛け算を2問、3問と解いていくんだ。
しかも両手で。
凄い、きっとばあちゃんは世界一そろばんが上手いんじゃないかな。
心からそう思った。
「ひぇっひぇっひぇ! どうだい、凄いだろう? あたしゃ、こいつだけは今まで誰にも負けたことないんだから!」
……うん、そう、凄いんだけど。
「ほらほら、まだ3問目じゃないか。あたしのを見てごらんよ、もう10問は解いてるよ? まだ手加減が足りなかったかねぇ?」
……ばあちゃんはそろばんの達人だ。
滅茶苦茶凄い、そう思う。
だけどそれと同じくらい、滅茶苦茶腹が立つ。
「……そろばんより、普通に電卓使った方が早いんじゃないの? 今時、そろばんなんて流行らないって」
「ひぇっひぇっひぇっ。じゃぁ、やってみるかい?」
不貞腐れながら言う僕に、ばあちゃんはにやりと意地悪そうな笑顔を浮かべる。
流石に電卓なら負けないだろう。
そう思って勝負を挑む。
―――ポチ、ポチ、ポチ
―――シャララララ
「はい、終わり」
「え、ちょ、嘘!?」
「ほんとさね、ほら」
ばあちゃんのそろばんを見ると、本当に終わっているみたいだった。
だけどまだ計算が合ってるとは限らない。
僕も電卓での計算を終わらせて、答えを見比べる。
「……あってる」
「ひぇっひぇっひぇっ! ほぉら、ごらんよ!」
大釜をかき混ぜてる魔女みたいな笑い声をあげながら、鼻高々に勝利を誇示してくるばあちゃん。
電卓使った僕が言うのもどうかと思うけど、少し大人げないと思う。
「わかったら、あんたも電卓よりそろばん使いな、そろばん」
「えぇ……でも、めんどくさいし」
「なぁに言ってんだよぉ! そろばんはいいよ? 指使うから頭が柔らかくなるし、ボケ防止になるし、暗算だって早くなる。いいことずくめさ! 指も柔軟になれば、そろばん以外でも役に立つってもんさね」
あたしのを見てごらんよと、ばあちゃんは指をグネグネ動かす。
「うわ、きもっ」
「肝? なに、肝が据わってるって?」
「指がグネグネ動いてて、気持ち悪いってこと」
「あんだってぇ!?」
ぺちんと後ろ頭をひっぱたかれる。
地味に痛い。
「決めた。絶対あんたの指も、こんくらい柔らかくしたげるよ」
「え、えぇ……」
ばあちゃんはそろばんの達人だ。
だけど大人げないし、すぐムキになる。
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