The kiss of death!!〜イケメン悪魔5兄弟VS私!!〜

朝比奈未涼

文字の大きさ
10 / 47

10.怒りの一発

しおりを挟む




「…っ!生命力ゾンビかよ」



毒を盛られて3日後。
約3日ぶりに夕飯時の食堂に現れた私を見てエドガーは心底驚いたような顔してそう言った。

…大変失礼である。

今こうしてここへ居られるのもミアの素早い対応のおかげだ。
実は毒を盛られたあの日、最初こそは毒の影響を受けていたが、1日寝ていれば私の体力はほぼ回復していた。

次の日から普通に動けたがミアに止められ、今やっとミアから許可が出て私はここにいる。
ミアは3日間仕事を休んでまでずっと私の看病をしてくれた命の恩人だ。



「…チートじゃん」



私が現れたことに驚いたのはエドガーだけではない。
ギャレットもエドガーと同じ反応をしていた。



「「…」」



クラウス、バッカスも黙ったまま同じような反応をしている。

この場にいる全員、毒を私に盛ったことを隠す気が微塵もないらしい。

もちろんヘンリーもだ。



「体調はもう大丈夫なのか?咲良」



ただただ驚くだけで私に声をかけようとはしない兄弟たちの中でヘンリーだけはおかしそうに笑いながら私にそう声をかけた。



「まあ、おかげさまで。先日はありがとう」



怒りの気持ちを抑えて私はヘンリーに作り笑いを向ける。

毒で倒れたあの日。
ヘンリーは私の小屋へたまたまミアが席を外している時に現れた。

夕食の時間になっても現れなかった私を心配して来た、とヘンリーは言っていたが、おそらくそれは嘘だろう。

あの力なく横になる私を愉快そうに見下していたヘンリーの瞳が未だに忘れられない。

心配して来たというのは建前で、私が苦しんでいる姿を見に来たに違いないと察するには十分な表情だった。



「何故、咲良があんな目にあったのかこちらでも調べたよ。原因はおそらく朝食時に混じってしまった魔界のスパイスだ。あれは人間には猛毒になる。兄弟たちもそれを知っていたから君の復帰の早さに驚いているんだ」



私の疑いの目をすぐに察したのだろう。
ヘンリーはその疑いが晴れるようにすぐに笑顔で最もらしいことを言う。



「こちらの不手際だ。本当に申し訳ないことをした」



そしてヘンリーは申し訳なさそうな表情でだがどこか愉快そうにそう言った。

絶対にそんなこと思っていない。

そう思っていたのなら私が小屋から出られなかったあの数日間にちゃんとした形で謝罪に来たはずだ。
一応は謝りました、というヘンリーの抜かりない形だけの気持ちなど微塵もこもっていない謝罪にどんどんイライラが募る。

こっちはアンタたちの嫌がらせで死にかけたんだよ?
ふざけんなよ?



「咲良、魔界は怖いだろう?」

「…え?」



ヘンリーからの突然の問いかけに私は首を傾げる。



「学院の悪魔たちが異種族の咲良を排除したがったり、魔界の食べ物が咲良にとっては毒だったり…。留学を辞退したくなったのでは?」

「…」



なるほど。
笑顔のヘンリーの言葉から察するにヘンリーは私から留学を辞退したいと言わせたいらしい。

こっちだって辞退したいわ!
さっさと人間界に帰して欲しい!

でもアンタら兄弟と〝良好な関係を築く〟ことが人間界に帰してもらえる条件なんだよう!チクショウ!



「いいえ。知らないことを学べる環境は貴重です。慣れないこともあり大変な部分ももちろんありますがその分やり甲斐もあります」



必殺、社会人社交辞令。

今にも口から出てきそうな本音を一切感じさせないよう、私はふわりとヘンリーに笑い、思ってもいないことをペラペラと喋る。

ああ、社会人でよかった。学生の多感な私なら迷わず本音を言ってヘンリーに殴りかかりかねない。



「…そうか。それでは仕方ないな」



私の言葉を聞いてヘンリーはわざとらしく残念そうな表情を浮かべる。



「これが何かわかるか?咲良」

「…っ!私のスマホ…何で…」



笑顔のヘンリーが私に見せつけたもの、それは私のスマホだった。
あり得ない場所にある私のスマホに私は驚いて目を見開く。

スマホは一番大切な必需品なので肌身離さずずっと持っていたものだ。
今も本来なら私の制服のポケットに入っているはずなのに。



「先程食堂の入り口で拾った。人間界のスマホも魔界と同じような作りなのだな」



驚いている私にそう嘘っぽい説明をしてヘンリーは興味深そうに私のスマホを眺めている。

何故だろう。
ただヘンリーがスマホを眺めているだけなのにすごく嫌な予感がする。

そう思った時だった。

ボウ!とヘンリーの手の中にあった私のスマホが炎に包まれたのは。



「…っ!?」



なんで!?



「…あぁ、悪い。つい夢中になってスマホを燃やしてしまった」



驚く私をよそにヘンリーがクスリと笑って私にまた形だけの謝罪する。



「おいおい。ヘンリー。力加減しろよー」



そんなヘンリーにおかしそうにエドガーが笑う。



「くくっ、ヘンリー、チートすぎ。スマホ燃やせんのかよ」



ギャレットもどこかおかしそうに笑っている。



「わぁ、スマホの炎もなかなか美しんじゃない?」



クラウスも楽しそうに笑っている。



「あの炎で肉を焼こう」



バッカスも同じだ。


みんな、ここにいる誰1人私を気づかう素振りすら見せない。

そんな彼らの様子を見て、ぷちん、と私の中の何かが切れた。
きっともう限界だったのだろう。



「クソ野郎がぁ!!」



気がつくと私はそう怒鳴ってヘンリーの元まで走っていた。

そしてヘンリーの元まで辿り着くとゴンッ!とヘンリーの頬を思いっきりグーで殴った。

おめでとう。私はまだ多感なお年頃のようだ。



「私だってなぁ!好きで留学生やってんじゃねぇんだよ!クソ野郎!死ねぇ!」



こんなにも本心を曝け出したのはいつぶりだろうか。
私はヘンリーにそう叫ぶと今度は5兄弟全員を睨み付けた。



「お望み通りこんな家出て行ってやらぁ!」



大変汚い言葉遣いだ。
それでも私は止まらず本心を包み隠さず吐くだけ吐いて食堂から飛び出した。

あまりにも怒りが爆発しすぎて周りのことが見えなくなっていた私は5兄弟がどんなリアクションをしていたのかまでは把握できなかった。



*****



「ユリアさぁぁぁん!」

「ぎゃぁぁぁ!何!?」


必要な荷物をまとめるだけまとめて私はあのクソ家を飛び出し、ナイトメアに突撃してしていた。
私のいきなりの登場にユリアさんが驚いて普段なら聞けないような低い声を出す。



「…な、何…、咲良?いきなり大きな声出さないでよ…。このおバカ」

「すみません」



私の姿を見て苦笑いを浮かべているユリアさんに私は頭を下げて謝った。

驚かせようとは微塵も思っていませんでした。



「で?どうしたの?仕事復帰はまだ先でしょう?」

「そうなんですが実は…」



そこから私はユリアさんにいろいろオブラートに包んで家から飛び出してきたことを伝えた。



「あらあら。家出ねぇ」

「はい。もう帰りたくないんです。フルタイムで、いえ、ずっと終日働きます。住み込みでここに居させてください」



私の話を聞いた後、心配そうに私を見つめるユリアさんに私は真剣な顔で頭を下げ、お願いをする。

頼れるところがここしかない今、この提案を断られたくない。



「…おいで、咲良」



ユリアさんの返事を待っているとユリアさんは優しい笑顔で手を広げ私を呼んだ。

これは抱きしめてくれるということだろうか?



「…はい」



私はユリアさんに言われるがままユリアさんの元へ行きユリアさんに抱きしめられる。



「アンタここに来てずっと頑張っていたもんね。偉いわ」

「…」



ユリアさんに優しい声で労われて涙腺が緩む。



「いくらでもここに居なさい。従業員はアタシの家族。咲良もアタシの家族よ」

「…っ」



ユリアさんの言葉に私の瞳からついに涙が流れた。



「…あ、りがとう、ございます」

「ふふ、礼なんていらないわ。それにアタシ美少女には弱いの」



泣きながらユリアさんにお礼を言うとユリアさんは優しくそう言った。

ユリアさんの腕の中はとても暖かく優しい場所だった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。  全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。  そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。  人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。  1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。  異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります! 【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...