The kiss of death!!〜イケメン悪魔5兄弟VS私!!〜

朝比奈未涼

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17.強制召喚の真意

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「おめでとう、合格だよ、咲良」



魔王城登城当日。
魔界へ初めて強制的にやって来たあの謁見の間で私は魔王に冷たく微笑まれていた。

早速だが意味がわからない。

ここまでは仕事の都合が合ったヘンリーと共に来たが、この部屋には私しか通すことを魔王が許さなかった為、ヘンリーはもういない。

今更だが居て欲しかったと思ってしまう。
魔王の通訳として必要なのでは?



「あの…いきなり祝われましても何が何だが…。合格とは?人間界へ帰れると言うことですか?」



あまり期待はしていないが、僅かな期待を込めて、魔王に言葉の真意を聞いてみる。
すると魔王はその笑みを深めた。

初めて会った時はヘンリーが来るまで一度も笑わなかったくせに怖すぎる。
どういう意味の笑顔なのだろうか。



「まずお前はまだ人間界へは帰れない。そしてお前は本来の目的を果たす為のスタートラインに立てた…つまり合格だ」

「…はぁ」



笑顔だが、冷たい印象のままの魔王の言葉にやっぱり意味がわからず私は首を傾げる。
もう少し具体的な説明をお願いしたい。
本来の目的とは?



「…お前はここ2ヶ月ほど5兄弟たちと過ごしてどう思った?」

「…」



突然魔王にそう質問され、私はとりあえず5兄弟たちのことを頭に思い浮かべる。

長男ヘンリーは一見私によくしているように見えるが、全てそこには損得がある。表裏が激しい上に自分に利益がないと思えばバッサリと切る印象だ。

次男エドガーは一応私の世話係らしいが全く私の世話をしていない。むしろ私がエドガーの世話をしていると言っても過言ではない。強欲でスリルが大好きなエドガーから正直悪い意味で目が離せない。

三男ギャレットについてはまだまだ未知数だ。食事の時だけは留学の決まり事があるので、顔を見るがそれだけ。お互いに何の交流もない。

四男クラウスは苦手だ。まずあのチャラチャラした雰囲気が受け付けない。よく会えば話しかけてくるがどちらかと言うと口説かれている。話しかけられていない。ある意味まともな会話をしたことがない。

五男バッカスは無表情で何を考えているのかわからないが、食が関係してくると話が変わってくる。食の為なら何事にも積極的だ。だが裏を返せば食以外のことに無頓着で無関心すぎる。



「…自分の欲望に忠実ですね。良くも悪くも」

「なるほど。妥当だな」



私の5兄弟たちへのこれまでの率直な印象を聞き、魔王が納得したように頷く。



「悪魔には生まれ持った魔力量によって階級が与えられる。彼ら5兄弟の階級はこの魔界で50もいない最高階級、特級だ」

「…」



…特級。よく耳にしてきた言葉だ。
この前エドガーとの契約を断った時も「俺は特級悪魔だぞ!」と怒っていた。

5兄弟たちがここ魔界において特別な存在なのだろうとは学院での生活やあの馬鹿でかい家で何となく察していたが、思っていたよりもすごいらしくほんの少しだけ驚いた。

だがその階級の話が何故今必要なのだろうか?

その疑問はすぐに解消されることとなる。



「彼らは魔界随一の強さを持つと同時にお前の言った通り自分の欲望に忠実だ。そんな彼らだからこそ近い将来この魔界を滅ぼすと予言されている。彼らの力と欲望への忠実さによって」

「…はい?」



魔王のいきなり飛躍した話に思わず失礼を承知の上で表情を歪ませて聞き返してしまう。

待て待て待て。
いきなり話が大きくなってる。魔界が滅ぶとか現実味ゼロな話になってる。



「あの、勘違いだとは思うのですが、まさかその魔界を滅ぼす話に私自身が関係してくるなんてことは…」

「ある」



やっぱりー!

話の途中で薄々嫌な予感は感じていたが、ここでまさかの私にも関係してくる話になり、私は心の中で頭を抱えた。

そんな物騒な話に関わりたくなどない。命がいくつあっても足りないというやつではないか。



「この予言には続きがある。その続きとは5兄弟を止められる人物が人間界から現れる可能性があるというものだ。そして予言の人物にはいくつか定められた条件があり、その条件を満たせると私が判断したのが、咲良、お前だ」



えー。

魔王の名指し指名に思わず反抗的な声を出しそうになるが何とか抑える。
表情も我慢しているつもりだが、きっと嫌で嫌で仕方ない気持ちがダダ漏れな表情になっているに違いない。

…自覚はある。



「その条件を伺ってもよろしいですか?」



もし少しでも合っていないものがあれば即座に辞退してやろう。
そう思いながら魔王から〝予言の人物の条件〟とやらの具体的な内容を待つ。



「ああ。もちろん。今から伝えようと思っていたところだ。まず一つ目が人間界から来た女性であること。二つ目が兄弟全員と契約を結んでいることだ」

「はい!私はその二つ目の条件を満たしておりません!今回は非常に残念ではありますが辞退させて頂きます!」



私は魔王の予言の人物の条件を聞き、すぐ勢いよく手をあげ、丁寧に辞退の言葉を述べた。

仕方ないことだ。私は確かに性別は女性だが、5兄弟全員と契約などしていない。
私が契約しているのは5兄弟の中ではエドガーとだけだ。



「知っている。俺は先程、本来の目的を果たす為のスタートラインに立てた…と言っただろう?今は契約を結べていなくてもいい。これから結べばいいんだからな」

「…」



ニヤリと笑う魔王の顔を見て思う。
あれは何か悪いことを考えている顔だ。

嫌な予感しかしない。



「咲良、彼ら5兄弟と〝良好な関係を築け〟と私は言ったな?具体的な〝良好な関係を築け〟の意味を今伝えよう。〝良好な関係を築け〟とは5兄弟全員と契約を結べと言うことだ」

「…っ!!!!」



嫌な予感またまた的中ー!!!!!
冴え渡りすぎている勘が逆に嫌だー!!!!



「いや!ちょっと待ってください!考え直してください!私には無理です!」



当たってしまった嫌な予感。
その内容を今すぐ訂正してもらえるように魔王に対してぶんぶんと首を横に振る。

契約を結べー!?
無理無理無理!

ここでは関係ないが、ミアは優しさで私と契約してくれた。
エドガーの契約理由はよくわからない。多分気まぐれだろう。

私はもう一応2人の悪魔と契約をした経験があるがそれは私の力でではない。

どうすれば契約にこぎつけるかわからないのに残りの兄弟たちと契約をしろだなんて無理な話だ。

これでは永遠に人間界へ帰れなくなる。



「無理でもやるしかない。彼ら5兄弟と2ヶ月以上も共に過ごせたのは咲良、お前だけだからな」

「…え」

「私はこれまで魔界を破滅させない為に予言の女性を探し続け、咲良と同じように留学生として魔界へ連れてきた。咲良よりも年上の女性や咲良と同年代くらいの女性、10代の幼い子どもまでいろいろだ。だが咲良以外全員5兄弟によって精神を壊され人間界へ帰った」

「…」

「咲良だけなんだ。彼らと共に渡り合えたのは」



嘘。
まさか頑張っていたことが仇になるとは。

私もギブアップ宣言をしていれば帰れたということではないか。



「…か、彼らを見ると目眩が…。私もどうやら精神的な大きなダメージを負っており…」

「今更嘘が通用するとでも?」

「…すみません」



まだ間に合うか、と体調が悪いフリをしてみたが魔王に睨まれたのですぐに辞めた。

詰んだ。



「悪魔にとって契約とは己を縛るものであると同時に己の欲しいものを手に入れる手段でもある。弱い悪魔であればあるほど力を欲して契約者を選ぶ。だが強い悪魔は違う。すでに力がある分、強い悪魔は契約に対して気まぐれだ。万が一自分を縛る契約者が気に食わなければ、殺せる力もあるからな」

「…だからこそ何もない私でも契約できる可能性があるということですか」

「そうだ」



淡々と契約について説明をする魔王にげっそりとした表情で私は答える。
私の答えを聞くと魔王は満足げに頷いていた。

…最悪だ。
全員と契約を結ばなければ帰れないし、魔王の話的に契約を結べたとしても、契約した悪魔から常に命を狙われる可能性がある立場になってしまうのだ。

そんなの荷が重すぎる。



「では改めて。咲良、人間界へ帰りたければ特級悪魔5兄弟と契約を結べ」



私の気持ちなんて他所に冷たく笑う魔王に私は絶望の表情を浮かべた。


これは永遠に帰れないコースかも。



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