The kiss of death!!〜イケメン悪魔5兄弟VS私!!〜

朝比奈未涼

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45.今の彼らは

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テオの作った偽物の世界から帰って数日。
いよいよ明日、私は人間界へ帰る。
いろいろあったが、テオとしっかり話し合い、決めた日取りだ。

もちろん明日私が人間界へ帰ることを5兄弟たちも全員知っている。
帰ることについては、全てテオから5兄弟たちに話すと言っていたので、私の口からは簡単にしか伝えていないが、特に問題はないはずだ。
テオは本当に先回りし、いろいろしてくれる、気が利くいい子だ。

そんなことを思いながらも、朝、いつものようにメイクを終え、もう見慣れた小屋から出ようとする。
するとそれは突然聞こえてきた。



「おーい!咲良ぁ!朝だぞー!俺様エドガー様が迎えに来てやったぞ!」



ガンガンガンっ!と扉を強く叩く音と朝から元気なエドガーの声が聞こえる。

本当に朝から元気だ。
昨日の夜はあまり長居せずにすぐに小屋から出て行っていたので、またギャンブル帰りなのだろうか?

朝から元気すぎるおそらくギャンブル帰りのエドガーに呆れながらも、私は扉に手を伸ばす。



「…」



そしてふと、初めてここへ来た朝のことを思い出した。
そういえば、ここへ来たばかりの頃もこんなことがあったな、と。

金で買収されたエドガーが私の名前だけの世話係になって、私のことを一度だけ迎えに来たっけ。


『おおい!人間!朝だぞ!この俺様エドガー様が迎えに来てやったぞ!1秒たりとも俺を待たせるんじゃねぇ!今すぐ出て来い!』

『おうおうおう!人間!俺様を待たせるとはどういう了見してんだ?おい!』

『俺は次男のエドガー・ハワードだ。お前の不本意だが世話係にされた哀れな男だよ』


あの日、初めてエドガーに会ったあの朝のことやエドガーの自己紹介を改めて思い浮かべる。
あの時のエドガーには本当にただただ偉そうでクソガキだというイメージしかなかった。



「…おーい?咲良?起きてんだろ?」



出会ったばかりの1年以上前のエドガーのことを考えていると、扉の向こうからこちらの様子を伺うエドガーの声が聞こえてくる。



「ごめんごめん。おはよう、エドガー」



私はそんなエドガーの声を聞いて慌てて扉を開けた。

出会ったばかりのエドガーなら扉を壊す勢いでずっと扉を叩き続けていたはずだ。そう考えるとエドガーの態度は随分変わったものだ。



「おう、はよ」



扉を開けると、こちらにニカッと笑いかけているエドガーが立っていた。
改めて見ると本当に美形だ。

ギャンブル狂でなかったら最高なのに。



「今日はどうしたの?わざわざ迎えになんて来て」

「…俺はお前の世話係だろ?最後くらい仕事しようと思って」

「名前だけの世話係じゃん。いつ私の世話なんてしてくれたの?むしろ私が世話している立場じゃない?主に金銭面で」

「うぅ、金のことは言うな。また返すからよ…」



私に痛いところを突かれたエドガーは先程の笑顔を消し、しゅん、と肩を落とす。

全く信用のない〝返す〟だ。
返ってこないと思っていた方がいい。

不信感しかなく、全く信用できないいつも聞く〝また返す〟の言葉に私はエドガーに白い目を向けた。



「…とにかく!俺はお前の最初の悪魔で、世話係でお前の1番なんだよ。だからこれからもまずは俺を頼れよな」



そんな私にエドガーがばつが悪そうにそう言い、ぷいっと私から視線を逸らす。

ああ、エドガーはこれが言いたかったのか。
だから今日、私を迎えにわざわざ来たのか。



「…ふふ、ありがとう。そうさせてもらおうかな」



お前の世話なんか焼かねぇ!とか言っていた最初のエドガーが嘘かのような今の姿に思わず笑みが溢れる。

だが、私が知っている今のエドガーはこんなやつだ。
ギャンブラーで貞操のないところもあるが、一度自分の懐に入れた者への優しさと愛情は深い。



「…じゃあまずは私への借金を返してもらおうかな?」

「…今?今すぐ?」

「ふふ、嘘嘘」



エドガーと肩を並べて食堂へ向かう。
こんな他愛もない会話も悪くはない。むしろ心地よいとさえ思えた。




*****



形だけの朝食後。
私は慣れた足取りで無駄に広い屋敷の廊下を小屋へと向かって歩いていた。

その道中。
バッカスが蹲っていた。

よく見る光景だ。
最初の頃の私なら驚いたがもう驚かない。



「バッカス?お腹空いたの?」

「…その声は咲良か。…動けないんだ」

「…その言い方誤解を招くからやめた方がいいよ」



蹲っているバッカスを呆れたように見つめながらも、私は自身のポケットの中に手を入れる。
辛そうにしているバッカスだが、これも別に大したことではないので、特に心配する必要はない。

こんなやり取りもここへ来てもう何度もしてきたことだ。

そこまで考えて、ふと、バッカスの自己紹介や初めて廊下で蹲っていたバッカスに遭遇したあの時のことを思い出す。


『…五男のバッカス・ハワードだ。よろしく』

『…体調不良だ。腹が減った』

『…!ありがとう、咲良』


必要最低限のことしか口にせず、さらには無表情なバッカスには正直ヘンリー並みに何を考えているのかよくわからない印象が最初こそあった。
だが今ではだいたいのことがわかる。

私も成長したよね。



「…咲良、もう、俺は」



黙ったままそんなことを考えいると、今にも力尽きそうな声のバッカスがそう私に訴えてきた。

…忘れていた。



「はーい。バッカス。ナイトメアのチョコレートでーす」

「ああ、咲良。咲良は命の恩人だ。この恩は一生忘れない」

「あー。はいはい」



本当に真面目に冗談抜きで私を見つめるバッカスに私は軽く返事をする。
何度バッカスに一生忘れられない恩を与えて、恩人認定されてきたことか。



「咲良」

「ん?」

「俺はお前が好きだ」

「そりゃどうも」



真剣な眼差しで私が〝好き〟だと言っているバッカスだが、その好きの意味は友人や恩人に向けるものなので、全く何もときめかない。
初めの方は実質告白じゃん!とか、違うってわかっているけど心臓に悪いわ!と、思っていたが、今ではそうではないとわかる。

ちゃんと副声音が聞こえてくるのだ。
「〝ご飯をくれる〟お前が好き」だと。



「食べ物よりもお前がいい。一緒にいたい。ダメか?」

「はいはい…て、ん?」



食べ物に私が勝った?
おや?これは実質告白を通り越してプロポーズですか?



「食べ物よりも私がいいの?」

「ああ」

「それで私を選んで一緒に居たい、と?」



無表情に私を見つめ続けるバッカスの視線に私はたじたじなる。

冗談には聞こえない。
本気でそう思っている。

本当にプロポーズされた。
何てこった。



「…えっと、今だけなら?」



だか、きっとバッカスのことだ。
私が好きだと伝えたいだけで、深い意味はないはずだ。
だから私は言葉の通り〝今〟一緒に居ることを恐る恐る約束してみた。



「よかった。じゃあ早速咲良の朝ごはんを食べに行こう」

「…うん」



それでいいんだ。

私の答えを聞いて、満足そうに笑うバッカスに私は苦笑いを浮かべる。

そしていつものようにバッカスと私の小屋へ戻り、2人で朝食を食べたのであった。






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