僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護

文字の大きさ
38 / 38
最終章 アキト、隣接する2つの辺境伯領の架け橋となる

最終話 今はまだこの関係性でいいよね

しおりを挟む
ワイバーンが着陸すると、フリオさんが飛び降りる。かなりの高さがあるのに、平気で着地している。一瞬、お腹は大丈夫なのかと心配したけど、顔色も良いから、きっとポーションやお腹を整えるお薬を飲んで回復したのかもしれない。ギフトでお腹の環境を強制的に劣悪にしたけど、呪いでもなんでもないから、食生活を整えれば自然に治ると、マグナリアも言ってたもんね。

お腹も全快したようで良かったよ。

「アーサム様、ご要望通りの方々をお連れしました」

誰を連れてきたの?

「マグナリア様が、こちらで起きた事を全てお話ししており、アーサム様の抱える懸念事項についても説明しています。あとは、互いの話し合いのみです」

マグナリアが、そっちにいるの!?
何か大事な用事があると言っていたけど、彼女は誰を連れてきたの?

「助かる。これは、国家間に関わる事だからな」

国家間!?
僕は、邸内にいた方がいいんじゃあ?
あ、籠の扉が開いた!

中から出てきたのは大人の男性と女性で、男性の顔に見覚えがある。
リリアナのお父さん、セルザスパ辺境伯だ。
誘拐される前、遺跡で見たカッコいい男性だ。

「お父様! お母様!」

僕の横にいたリリアナが急に叫んで、2人のもとへ駆けていく。

「「リリアナ!」」

リリアナが両親のもとに到着すると、父親に抱きしめられる。

「リリアナ、無事で良かった。随分前にアーサムとフリオから聞いてはいたが、かなり厄介な状況だったから迎えにいけなかった。すまない」

「怪我もないようで良かったわ」

感動の再会なんだけど、なんか振る舞いが違う。
3人共、凄く上品だ。

一応、僕も貴族としての礼儀を習ったから、両親と再会しても、あまり騒がないようにしよう。

「アキトとマグナリア様のおかげよ。私1人だけだったら、今頃…」
「そうだな。事情は、マグナリア様から全て聞いているよ。おっと、話を進める前に、あの方々にも出てきてもらわないと。少し移動しようか」

そう言うと、3人は籠から少し離れると、扉から現れたのは、小さなマグナリアと……え? 嘘…なんで…いるの?

「お父さん! お母さん!」
「「アキト!」」

何だろう…急に心が満たされたせいなのか、涙が出てくる。
我慢しないといけないのはわかるけど、衝動が抑えきれそうにない。
気づけば、僕は両親のもとへ駆けていき、お父さんに抱きつく。

「あのね、誘拐されてから、色々な事があったんだ」

2人とも僕の訴えを聞いて、顔を見合わせると、優しく微笑んでくれた。

「マグナリア様から聞いたよ。頑張ったな、アキト」
「偉いわ。リリアナ様やシェリル様を守ってくれたのね」

「うん! 今は、マグナリアとガルーダ様から魔力制御の方法を、ミランダ様たちから礼儀作法を教えてもらっているんだ。この前のパーティーで、色んな人たちと知り合いになれたし、僕の作法を褒めてくれたんだよ」

あれ? 
パーティーや礼儀作法の件を話したら、2人の笑顔が歪になった。
なんで?

「あ~、アキトは貴族になりたいか?」

お父さんからの質問に、僕はポカンとしてしまう。

「平民から貴族になれるものなの?」
「国に大きく貢献した者は、平民であっても貴族になれるんだ」

それは初耳だよ。
貴族…か。

「この敷地内に限って、リリアナやシェリルとは普通に話せるんだけど、周囲に大勢の人々がいる中だと、身分のせいでどうしても話せないんだ。僕は、どんな場所に行っても、いまのような感じで、2人と話し合いたい。もし、その願いが貴族になることで叶えられるなら、貴族になりたい……って、以前の僕なら言ってたかな」

「今は、どうなのかな?」

この際だから、本音を言おう。

「誘拐騒動で、貴族の方々が色んな責任を背負って、領地の治安やその地に住む人たちの生活を守ってくれていると肌で感じたんだ。だから、貴族になりたいなんて、軽々しく言っちゃいけないことだと思った」

お父さんとお母さんだけでなく、アーサム様たちも僕の言葉を聞いて驚いている。というか、お父さんもお母さんもなんで涙ぐんでいるの?

「今の僕にはね、夢があるんだ」
「夢?」

これからお世話になるアーサム様たちもいるから、みんなにも知ってもらおう。

「うん。神様から貰ったスキルやギフトを使って、シェリルやリリアナのいる領地に貢献したい! 僕の周囲にいる人たちの生活を豊かにして、みんな笑顔で過ごせるようにしたいのが、僕の夢!」

あれ? お父さんが遂に泣き出した! 
お母さんは半泣きで、笑顔を保ってる。

「立派に育って嬉しいんだが…息子はまだ5歳なのに、色んなことをすっ飛ばして…お父さん、複雑な気分だよ」

それって褒めてるの?

「ね…ねえ、アキト」

リリアナがドギマギしながら、僕に話しかけてきた。

「何?」
「あのさ…仮に…仮によ…あなたが両方の国に大きな貢献をして、貴族になったとしましょう。その時、あなたはどっちの領に定住したい?」

え? 
う~ん、そんなこと考えたことなかったな。

「その答え、私も知りたいわ」

なんか、シェリルとリリアナが凄い視線で、僕に答えを求めてくる。この眼差し、答えないとまずい展開だよね。

「正直、そんな先のことまで考えたことないよ。強いてあげるなら、今はこの関係性のままでいいかな。セルザスパ領とティムランド領を行ったり来たりして、僕のギフトでどっちも幸せになってもらうんだ」

定住したら、どちらかの領に留まることになるから、それだとなんか嫌だな。

「あはははは」

僕が答えを出すと、アーサム様が急に笑い出す。

「そうか、そうだな。今は、まだこの関係性を保ちたい時期だな。リリアナ嬢もシェリルも、今はそれで納得しなさい。アキトが力を付けた時、いずれ選択する時が必ず訪れる。その時までに、彼の身分がどうなっているかはわからんが、この調子でいけば…おそらく…」

「お父様……そうですね。その時までに、もっと…」

アーサム様とシェリルが、何かを理解したかのように僕を見る。貴族なんて、そう簡単になれるものじゃないでしょ? 今回だって、前世で知っているステンレスに関わる情報をレンヤさんに教えて、彼がミスリル合金を作り上げたのだから。パーティーで起きた騒動についても、一応僕(アキ)と精霊たちが悪意を祓ったけど、大騒動にまで発展してないから、国に貢献したとは言えないよね。

「そうね…今はまだこの関係性でいいわ。でも、シェリル…」
「わかっているわ、リリアナ…」

何故だろう? 2人は見つめ合っているけど、火花が飛ぶくらいのようなバチバチした雰囲気を感じるよ。

「リリアナも、良いお友達が出来て良かったな。アーサム、ずっとここで話し合うのもなんだし、そろそろ…」

「ああ、そうだな。皆さん、続きは邸内で行いましょう」

アーサム様先導のもと、みんなが一斉に移動を始める。
さっきの話の内容が妙に気になるけど、まあいいか。

僕のギフトと前世の知識で、二つのリリアナとシェリルのいる領を幸せにしよう。そこで上手くいけば、結果的に国の貢献につながるのかもしれない。もし、貴族になった時、どっちの領に定住するのか、それはその時に考えよう。

僕はお父さんとお母さんと手を繋いで、3人笑顔でアーサム様の後をついていく。


                《完》
しおりを挟む
感想 12

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(12件)

蒼月丸
2024.10.07 蒼月丸

見ましたが、面白かったです!次回作も楽しみにしています!
こちらも小説を書いていますが、お互い書籍化目指して頑張りましょう!

2024.10.09 犬社護

蒼月丸さん、本作品を最後まで読んで頂き、ありがとうございます( ◠‿◠ )
はい、書籍を目指し、お互い頑張りましょうね!

解除
猫3号
2024.06.09 猫3号

最終話
敷いてあげるなら、今はこの関係性のままでいいかな。 → 強いてあげるなら

アキトが今の関係性の意味を理解するのは、まだまだ先のこと。

2024.06.09 犬社護

誤字報告、ありがとうございます!
該当箇所を修正しました( ◠‿◠ )

猫3号さん、本作品を最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
アキト自身、まだ5歳なので、関係性を問われても、きちんと理解していないお年頃。
意味を理解するのは、もう少し先になりそうです(^。^)

解除
猫3号
2024.06.07 猫3号

アキトとリリアナの両親到着かな? アキトにお腹の調子を治してもらえてないフリオ。空の旅でワイバーンの鞍を汚してないと良いけど。

2024.06.07 犬社護

次回、最終話となります( ◠‿◠ )

解除

あなたにおすすめの小説

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。 それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。 唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。 だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。 ――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。 しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。 自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。 飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。 その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。 無断朗読・無断使用・無断転載禁止。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。