冤罪で殺された悪役令嬢は精霊となって自分の姪を守護します 〜今更謝罪されても手遅れですわ〜

犬社護

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プロローグ

1話 安らぎからの暗雲

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「婚約破棄された挙句、毒殺されましたわ」

これまで順風満帆だった十七年間、それがまるで嘘のよう。

私の人生が、たった一つの冤罪で奈落の底に叩き落とされ、牢獄に収監されてしまい、何日も何日も事情聴取を受けることとなりました。度重なる心労のせいで、艶やかだった金色の髪や肌がボロボロとなり、人前には出られないような容姿へと変化しました。その間、皆が『これは冤罪だ‼︎』と懸命に訴え、必死にその証拠を探してくれたそうですが、どうやら犯人の方が一枚上手のようで、私は牢屋内で毒殺されました。

・一体、誰が私を毒殺したのかしら?
・私は死んだにも関わらず、何故意識があるのかしら?
・ここは何処なの?

周りは白い空間に覆われていて誰もおらず、私は死んだ時の薄汚れたワンピースを着たまま宙に浮いています。今までの何もかもが忘れてしまいそうな程、居心地が良い場所だわ。このまま身を委ねたら、消えてしまいそうな気がします。

「でも…私が受けた屈辱、そんな簡単に忘れられるわけがありませんわ‼︎ たとえ、この身がゴーストになろうとも、もう一度あの世界に舞い戻り、犯人を八つ裂きにしてやる!!」

私-ルーテシア・フォンテンスが犯したとされる罪、それは国王の姪にあたるニーナ・エクスランデ公爵令嬢の暗殺未遂です。

そう、全ては【あの事件】から始まったのです。


○○○


学園の夏季休暇で実家に帰省していた時、王都の治安を担っている治安騎士団の隊長と三名の部下が屋敷へ訪れました。彼らの求める相手がどうやら《私》のようで、それを伝えにきたメイドも当惑気味でしたね。たとえ治安騎士団であっても、貴族の屋敷へ訪れる際は、必ず先触れを出さないといけません。《それが無い》ということは、余程の案件だと思います。当時、フォンテンス侯爵家当主の父や母、兄も視察などの公務で留守にしていたので、自室で寛いでいた私は隊長達のいる玄関へと急ぎ向かいました。

玄関には、ミスリルで加工された白銀の鎧を纏う四名の人間がいました。
腰には、剣も装備されています。

鎧の中央に彫り込まれた紋章の紋様は【盾】、国民を護るという意味合いがあります。あれは、間違いなく治安騎士団の証となる紋章、しかも1人には、紋章の横に隊長を示す銀星が彫り込まれています。治安騎士団の隊長とは数度お会いしていますから、この方々が本物であるとわかります。隊長の名前は、確かフォルク・パルスマンですね。三十六歳、剣術と魔術の腕は超一流と言われ、他の騎士団の皆からも尊敬されていると聞き及んでいます。

私の姿を確認すると、玄関で待機していたパルスマン隊長はお辞儀をした後、私を惑わせる一言を放ちました。

「ルーテシア様が犯人だと未だに信じられませんが、拘束させて頂きます」

私は何を言われたのか、意味がわかりませんでした。

「犯人? 何の事ですか?」
「エクスランデ公爵令嬢の毒殺未遂の件について、当然知っていますね?」

何を当たり前の事を言っているのでしょうか?
七日前、国王様の姪にあたるニーナ様が何者かに毒殺されそうになった件は、新聞などを通して平民にまで知れ渡る程有名な事件です。幸い、エクスランデ公爵家の屋敷には優秀な医者と魔術師の方がおられたので、ニーナ様が毒物の摂取で倒れた後、すぐに科学的兼魔法的見地で解毒が施され、命が助かったと聞いています。

「もちろん知っています」
「夕食時、エクスランデ公爵令嬢がメインの料理を口にした瞬間倒れました。その原因を探った結果、毒物が料理ではなく、ナイフとフォークに付着していたのです。そのナイフとフォークは、ルーテシア様が差し上げたものでした」
「まさか、それだけで私が犯人と?」

確かに、私はニーナ様の誕生日会にて、有名ブランドの限定品食器一式をプレゼントしましたが、食器類には一切手を触れていません。

「勿論、それだけの物証で、貴方様を犯人だと我々も決めつけません」

その程度で私を犯人と決めつけたら、即訴えますわ。

「毒物が付着されたナイフとフォークを《科学魔術研究機関》へ依頼し鑑定してもらったところ、それぞれからルーテシア様の指紋が、毒物からはルーテシア様の魔力が微量ながら検出されたのです」
「なんですって!?」

どうして、私の指紋と魔力が検出されるの?
それでは、私が犯人ですと言っているようなものだわ!
私ならば、そんな愚かな失態を絶対に犯しません。

「我々としても、何者かがルーテシア様を陥れようと、何らかの工作をしていると睨んでいます。ですが、物的証拠がある以上、我々もあなたを拘束せざるを得ないのです」

「誓って言いますが、私は犯人ではありません。ここで私がとやかく言っても、あなた方を困らせるだけでしょう。あなた方の沽券にも関わってきますから、本来の犯罪者のように魔封じの腕輪で拘束して下さい。その後の調査を信じますわ」

私が拒否すると思ったのか、隊長を含めた騎士たちはやや驚いているようです。貴族にとって、《拘束される》という意味は侮辱行為となりますので、こういった事象が発生した場合、大抵の貴族たちは身分を盾に腕輪による拘束を拒否し、そのまま連行されていきます。

「申し訳ありません」

隊長や他の部下の方々は、侯爵令嬢に対して、どれ程の無礼を働いているのか重々承知しているのでしょう。頭を深々と下げた後、私を拘束しました。私の両腕には特殊な拘束具が嵌められ、外に待機させている馬車内へと入れられ、王城へと移動を始めました。

私の人生は、ここから急落していくこととなります。

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