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貢物じゃないんだけどっ?!

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目が覚めた
正しくは意識が戻ったかもしれない
もう何回目だろうか
一体どれぐらい時間が経ったのかも私にはわからない‥

ぼやけていた視界がハッキリしてくると目の前には
よく童話の中に出てくる王様が座る様な椅子が置いてある
赤くて金色の装飾がついていてやたら背もたれが高い‥
何私先輩の言う様に貴族か王族に売られちゃったの!?
えっじゃあ外国って事?
いやいや落ち着け私、ここまで死なずに怪我せずにやってこれたんだからきっと大丈夫
椅子ぐらいなら日本にもあるはずだし

ね?
そうだよね?
そうだと言って欲しい‥

もうこれ以上は受け止められない
キャパシティが‥

そういえばさっきの部屋では手足が自由が動かせたけど今はどうなってるんだろう
試しに腕を動かそうとするけどどうやら後ろで縛られているみたいで動かせない
ラッキーな事に足は縛られていない、バランスさえ取れれば立ち上がれるし立ち上がれれば脱出する事も出来るかもしれない
でも、何度も嗅がされたあの香りには気をつけないといけない
頭がボーッとするし、意識が遠のくから
それになんだか体の奥が熱くなるような感じもするし、匂いに惑わされてもしもことがあっては困る
だってまだ私まだ未経験だし‥

それにしても先輩にはいつ会えるんだろう
また後で会えるみたいな事言ってたと思ったんだけど記憶違いかな

いろいろ考えていると扉の開く音が聞こえて恐怖で体が萎縮する
たくさんの足音が聞こえてくる、恐怖のあまり目をギュッと閉じる

どんどん音が近づいてくるけれど私の近くには来ていない様だ

「大丈夫よ、何もしないわ」

先輩の声が聞こえて目をゆっくり開ける、目の前にあった椅子に座っている先輩は今までに見た事のない服を着ていてまるで別人の様だ
いつも先輩は系統的にはスポーティーな服装が多かったのに今はまるでお姫様みたいなドレスの様なものを着ている
お嬢様って呼ばれる理由はこれなのかな?

「やっぱりあなたは私が見込んだ通り素敵な商品になるわ、時間をかけた甲斐があった」

「商品…」

「そうね、あなたを見かけたあの日からこの日を夢見ていたのよ。あなたと過ごした時間分しっかり還元してもらいますわね」

「私先輩から声かけてくれて仲良くしてくれたのすごく、すごく嬉しかったのに‥全部嘘だったんですか?」

「嘘、嘘って言い方が美しくないわ。私はビジネスのためにやっただけ」

「ビジネス‥あんなに良くしてくれたのに‥嘘だあああああ‥」

「あらあら、心が壊れそうなのかしら?ダメよ、うちの商品は心が壊れていては売れないもの、うちは最高級の商品しか売らないのよ?」

先輩との今までの思い出は全部嘘だった、嘘だったの
そんな訳、そんな訳ないよね
きっとこれは夢だ、夢であって欲しい
私は自分のほっぺをつねってみる
ちゃんと痛い、ちゃんと痛い
そうだよね、こんなハッキリした夢なんてある訳ないよね
涙が溢れ出てきた

膝を抱え目を閉じこのまま時間が止まればいいと願う
悪い夢だ、悪い夢だ‥

現実はそんなに甘くない様だ‥
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