哀歌ーelegy-

sorarion914

文字の大きさ
7 / 49
追想

#5

しおりを挟む
「こいつは片山周平かたやましゅうへい。渡世名は剱崎隼人けんざきはやとっちゅう、洒落た名前を持つ男だ」

 矢島がそう言って、写真をテーブルの上に並べていく。
 長身痩躯でカジュアルなスーツに身を包んだ剱崎は、歳の頃40代前半。一見するとごく普通の、お洒落なサラリーマンのように見える。

「穏やかなツラしてるな。ヤクザには見えない」
 梶川がそう言うと、佐倉が言った。
「インテリ系とも少し違うな。堅気の雰囲気に近い。けど油断はするな。こいつはな男だよ」
「こいつは元、丸岡組の若頭だった。でも丸岡が潰れて岡嵜組に拾われた。今は岡嵜の跡目だ」
 以前あった桐生丸岡組は、表面上解散ということになっているが、実際は武闘派組織の一闘会に潰された。
 エリアにはもう一つ、武闘派の一闘会と肩を並べる大きな組織、関東厳武会かんとうげんぶかいという組がある。
「ここにいた岡嵜賢吾っていう幹部が独立して出来たのが今の岡嵜組だ」
「岡嵜は厳武の枝だよ。丸岡の元幹部や構成員の一部も、今は岡嵜にいる。組長の岡嵜は変わりもんでな」
「義理人情を大事にする、割と昔気質のヤクザだな」
 仁義に厚いって?と梶川は苦笑すると、佐倉も矢島も苦笑いを浮かべた。
「だが警察には一番協力的だ。ある意味、やり易いけど手ごわい組だよ、岡嵜は」
 矢島はそう言いながら、写真を並べ続ける。
「こいつは一闘会の組長、前島。こっちは厳武の組長、佐伯。犬猿の仲だ」
 写真をじっと見つめる梶川を、佐倉は興味深げに眺めた。
「俺たち警察とヤクザは、割と持ちつ持たれつってところがある。もちろん、犯罪を黙認するわけにはいかないが、情報を得るためのは大事だ。覚えとけ」
 佐倉はそう言って3人の組長の写真を手に取ると、それを顔の前に掲げて言った。
「足下見られない程度にする。あくまでも、主導権はこっちだ」
「……」
「取り込まれるなよ……舐められたら負けだ」
「なるほど……」
 梶川はそう言って笑った。
「だからここの連中はみんなガラが悪いんだな」
 互いに顔を見合わせると、矢島は頭をかき、佐倉は両腕を組んで仏頂面をした。
「さ。講釈はここまで。に行くぞ」
 佐倉はそう言って立ち上がると、梶川と連れ立って繁華街へと繰り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...