学生たちの明晰夢

ざわ

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学生達の明晰夢 第1章

勇気を出した結果は?

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気づけば、季節は、寒空の下、枯葉を落とし寒そうな枯れ木を見て、心まで震える。そんな季節に変わっていた。
いつもの教室はシワだらけの白いシャツではなく、黒いブレザーに完全に支配されていた。
退屈な授業をかろうじて終わらせた後、冷たい教室の空気に耐えられず、俺は自分に教科書を戻すためと、よく分からない理由を付けて席を立った。ロッカーの鍵を開けて教科書をしまって、ふと顔を上げた時、クラスの違和感を感じた。どこか男子も女子もワクワクしていて落ち着きがない、この雰囲気はなんだ?そんな矢先、いつもの甘い声が聞こえた。
「ねぇ~ 助~ ちょっといい?」
「ん?どうした?」
「これ、上げる♡」
そう、古谷に渡されたものは、オシャレな紙袋、その中を除くとパンケーキらしきものが入っていた。
「なんだ?急に、俺なんかしたか?」
「 いやぁ~今日はプレゼント渡す日だから♡」
そうか、これが違和感の理由か、今日はあのクリスマスイブだっただったのだ。
「あの」とは、
俺はクリスマスイブにあまりいいイメージはない、というより季節のイベントにだ
特に冬のイベント。
何故、冬のイベントには恋人前提のイベントが多いのだ。クリスマスしかりバレタインしかり、冬の寒さに負けそうになる気持ちを誤魔化すためのなのか?
まあこんな具合にイベントが嫌い… いや恋人が嫌いなのだ。ただ今回は状況が違う。
なんせ、自分が恋をしているし、その恋をしている人にプレゼントをもらったのだから。
多分、古谷の方は「友達」としてなのだろう。だが例えそうだとしても構わない。
大事なのは、「友達」とか「好きな人」では無い
「プレゼントをしてくれる」という行為自体なのである。
古谷のせいで嫌いだったものがどんどん好きになっていっている。
俺はそのプレゼントを素直に受け取ることにした。
そんな事をしているうちにクラスメートの悲鳴と共に授業開始のチャイムが響いた。

全ての授業を終わらせて夢にまで見た放課後がやってきた。少しだけ空いた窓から吹く風にクリーム色のカーテンが舞い、温かい橙色の光が注ぎ込む、そんな俺の好きな時間。
この季節になると、すごい勢いで暗闇が襲ってくるためこの時間は限定的で特別な感じがする。
残っているのはいつものメンバー、いわゆるイツメンである。
「さっきはありがとうな」
「いえいえ 大丈夫だよぉ~」
「古谷 野沢菜にプレゼントあげたの?」
「うんっ ムーミンもいる?」
「いや、やめておくよ 今日は荷物が多いから」
「お、パンケーキ作って来たのか、古谷ァ、武藤が食わないなら俺がもらっていいかい?」
「うんっ いいよ」
そんな、なんも変わりのない話、武藤と川岸には行事という感覚はないのだろう。
するとさっきまで古谷のパンケーキをパクついていた川岸が俺の方へ来て
「あ、悪かったな パンケーキ、もらっちった」
「別にいいけど、なんで謝るんだ?」
「いやさ、ザワ、古谷のこと好きなんだろ?」
「まあ、それはそうだが、いちいちそんな事で嫉妬しないわ」
「んだよ 気を使って損したな、でもきーつけろよ、恋は盲目って言葉があるからよ
大事なもん失わないようにな」
「分かった なんかありがとうな」
「なぁーに 気にするな たいしたァことは言ってねェ」
忘れていたが、この男は哲学かぶれだった。
その言葉は少し大袈裟だが、ヤツなりに俺を勇気づけようとしてくれていると俺は感じた。
いつも騒いでいるだけの2人がここまで俺の事を気にしてくれている。ほんの少しだけ2人に感謝した。

青春ドラマのワンシーンのような放課後の教室も気づけば暗闇に囲まれていた。
俺の通う県立凰南高校は6時になると門がしまるので、それまでに学校を出る必要がある。俺は勇気を出して、古谷にこんなことを言ってみた。
「なぁ 古谷 外、暗いし送ってくか?」
古谷は少し間を開けて
「うんっ お願いっ」と明るい声で答えた。
こうして俺の勇気は見事に形となった。
川岸と森本が帰る方向の電車が先にやってきた。俺たち3人は2人を見送り、自分たちの電車を待った。しばらくしないうちに電車がやってきた。都合がいい事に、3席空いていたので、俺たちは迷わずそこに座った。
そこからたわいもない話をしていると
古谷の降りる駅になった。
俺たちは武藤に別れを告げて改札を降りた。
だが、この駅が古谷の地元では無い、ここから乗り換えをするのだ。
この駅から金沢八景の方へ向かう唯一の電車である、シーサイドラインに乗ることが出来る。
俺たちはすぐにやってきた電車に乗ると今度こそ古谷の地元に向かった。
疲れが出たのか俺は電車の心地よい揺れに負けて、眠ってしまった。

俺が目を開けたのは古谷に起こされた時だった。
この時、俺は後悔した。古谷と少しでも長く話をできるチャンスだったのに。
「助~ どうしたぁ~?」
「い、いや なんでもない」
「そうなのぉ~? ならいいけどっ」
丁度、駅の階段を降りる時だった。
夜の潮風が2人の微妙な距離感の間を吹き抜けていった。
そんな時、胸の中から俺の知らない感情が
湧き出して来た。
とうとうその感情に負け、俺は古谷に話しかけた
「な、なぁ 古谷」
「ん? なぁーにぃ?」
「お、俺さ」
「うんっ」
「お、お前の事… 好きなんだ」
「え? 助、今なんて言った?」
「だから、お前のことが好きだ 俺と付き合って欲しい」
「…」
「いきなり、すまない」
「ううん ちゃんと言ってくれて嬉しいよぉ
でも、テスト終わるまで待ってってくれるかな?」
そうだ、忘れていた。クリスマスで浮かれていてる暇などでは無い、ほんの3週間程でテストがやってくるのだ。古谷の言い分も分かる。俺は古谷の願いを聞き入れた。
俺は、最後まで送りたかったが、さすがに気まづい空気になることを察したらしく、古谷の方から、ここでいいとお役御免をくらった。まあ仕方がない。俺は古谷に一言告げて
帰りの電車へと向かった。
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