必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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41★ 7・葉璃の周りは賑やかです。

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「で?  何事なわけ?  俺に黙って病院とか」


 個室に入るなり、セナさんは葉璃を捕まえて両頬を取り、上向かせて、不機嫌をあらわにしている。

 アキラさんとケイタさんはベッドに腰掛けたから、俺は傍らの丸椅子に座って二人のやり取りを見ていた。


「え、いや……黙ってるつもりはなかったですよ?  聖南さん忙しそうだから、後から言おうと思ってただけで……」
「俺はてっきり、葉璃の方が忙しくてあんま連絡こねぇのかと思ったんだけど。  俺に遠慮なんかすんなよ。  分かった?」
「はい……」


 葉璃はセナさんの手にゆっくり自身のも重ねて瞳を閉じ、それを降ろした。

 触れないでと語っているかのような動作に、セナさんは葉璃の様子がおかしい事に気が付いたようだ。


「葉璃?  ……どした?」
「……なんでもないです」
「?」


 セナさんの表情が一転して無表情になり凝視するも、葉璃は俯いて肩を震わせた。

 どうしよう。

 葉璃のこのしょんぼりが俺のせいかもしれないって分かったら、セナさんに怒られてしまうかもしれない。

 でも何故葉璃がこんな状態なのか俺さえも分からないから、何の言い訳も出来ないし困った。

 アキラさんとケイタさんも不穏な空気を察知して葉璃を見詰めていると、ガラガラっと引き戸が開いて医師が顔を覗かせる。


「事情を聞いたんでここで診察するよ。  倉田葉璃くんはその椅子に掛けて」
「はい」


 前の人の診察が終わって看護師さんに事情を聞いた医師が、葉璃を丸椅子に腰掛けさせ
てカルテを見ながらその前に立つ。


「調子はどう?  痛みは?」
「あ、あの……痛み、減ってきたんです。  最近忙しくて薬飲むの忘れたり多々あったんですけど、ここ二週間くらいほとんど薬飲まなくても大丈夫になってきてて」


 葉璃がそう医師に説明しているのを、セナさんは腕を組んでジッと聞いていた。

 アキラさんとケイタさんも、葉璃の成長痛が回復傾向にある気配に胸を撫で下ろしている。

 三人とも、葉璃の事がよっぽど心配だったらしい。

 仕事の合間を縫って、揃ってやって来た事が何よりの証拠だ。


「そう。  ……君の場合は稀な症状だったからね。  今落ち着いているからと言って、今後もないとは限らないし、このまま落ち着くかもしれない。  現状はなんとも言えないから、今日はお薬出さずにいこうか。  一ヶ月後にまた来てもらえる?」
「分かりました」
「その前に何か変わった事があったらすぐに来てね。  あ、ちなみに身長は測ってみた?」
「いえ……」
「ここ身長計あったはずだから、君、測って記録しておいて」


 医師は付いていた看護師さんに託し、お大事に、と葉璃に微笑んで去って行った。

 ベッドの奥、壁際の身長計へ看護師さんが葉璃を誘導する。


「緊張しちゃうわぁ、CROWNが居るんだもん……」


 ベテランそうな看護師さんがそう苦笑して、緊張気味の葉璃へ笑いかけた。

 じわ…と身長計に乗る葉璃の顔が、いつも以上に強張ってる気がする。


「あ、俺らの事は気にしないでいいっすよ」
「ハル君のが終わったら俺らのも測ってもらえません?」
「おいケイタ、仕事の邪魔すんな」


 ベッドに腰掛けてマジマジと葉璃を見ていたケイタさんが、そんなお願いをしているのをセナさんが嗜めたけど、看護師さんは「いいですよ」と笑った。


「CROWNのみんなの身長測れるなんて、一生の自慢ですから」


 意外にも乗り気な看護師さんは、ニコニコしながら何度も「ラッキーだわぁ」と呟き、カルテに葉璃の身長を書き込んだ。




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