必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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「……俺の目に触れさせたくないって何ですか」


 聖南の声は扉の外にまで漏れ聞こえていたらしく、葉璃が怒ったような悲しんでいるような複雑な表情で入って来た。


「聖南さん、何なんですか」


 なぜか聖南だけでなく、その場に居るアキラとケイタも問い詰められているかのような気分になってしまう。

 あの雑誌には文字通り、いかがわしいと捉えられてもおかしくない写真がドーンと載っている。

 葉璃に見せたくない、というより見せてはいけないと三人の気持ちは同じであった。


「何でもないよ」
「うん、そうそう!  ハル君の聞き間違いじゃないかな?」
「……俺に見せたくないものって何ですか」


 固まる聖南を横目にアキラとケイタが弁解するも、そんなものは無駄です、とチラとだけ二人に視線をくれた葉璃はまた聖南に視線を戻した。


「俺を不安にさせないで下さい、聖南さん。  気になって夜も眠れなくなるから。  ……教えて」
「…………アキラ、それ葉璃に渡してくれるか」


 聖南が葉璃にいつも口酸っぱく言っている事を突きつけられては、逃れられなかった。

 逆の立場になったからといって、聖南は身勝手に振る舞う事など出来るはずもなく。

 当然、不安を覚えさせたくはないし、写真を見せて嫌な気持ちにもさせたくない。

 これはもはやどちらに転んでも悪しかなくて、この期に及んでも麗々に怒りが湧いた。


「……はい、これ」
「あ、聖南さんが載ってるやつだ。  見ていいですか?」
「……あぁ」


 アキラが雑誌を手渡すと、毎号どこかしらに聖南が載っている事を知っている素振りでパラパラっと捲り始めた。

 あれを見た葉璃がどんな反応を見せるのか、三人はその様子を固唾を呑んで見守る。


「…………あ……」


 例のページに辿りつき、葉璃は見事に固まった。

 そして雑誌を落とした。

 聖南が予想していた通り、物凄い動揺と戸惑いが葉璃を襲っている。

 ゆっくり葉璃に近付くと、聖南は屈んで顔を覗き込んだ。


「葉璃、……葉璃、俺がこれ見せたくねぇって言った意味、分かったろ?」
「あ、いえ、あの、大丈夫です!  この事、聞いてましたから!」


 ははは…っと愛想笑いを浮かべる葉璃が、落とした雑誌を拾って聖南の目を見るも、すぐに逸らす。

 ───嫌な予感しかしない。


「…………葉璃?」
「いや、あの……なんていうか、お似合いです、すごく。  二人とも、違和感ないなって感じで……」


『あー……やっぱこう思っちまうよな、葉璃は……』


 目の前で肩を震わせ始めた葉璃を優しく抱き締めてやる。

 まさに聖南が案じていたままに、葉璃はネガティブを全開に出してきた。

 こうなると葉璃はぐるぐると負の殻へ閉じ篭っていく、そんな気がしていたから、聖南は見せたくなかったのだ。



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