必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 抱き締めたまま柔らかな髪の毛を撫でて落ち着かせようとしていると、葉璃に胸を押されて離れられてしまった。


「……あの、アキラさんとケイタさんの前ですから」
「俺らの事は居ないと思ってていいよ」
「今は存在消しといてあげるから」
「そう言われても……」


 ……違う。

 葉璃は恐らく、二人の前だから離れたのではない。

 聖南の生々しい写真を見て、葉璃はまたも「俺が聖南の隣にいるなんて相応しくない」と思い始めていそうだった。

 表情で分かるようになってしまった。


「CROWNさーん、スタンバイお願いしまーす!」
「はーい。  ……俺ら先に行くから、セナはギリギリまでハルと話しな」


 本番の声が掛かってアキラとケイタは立ち上がり、出て行く直前に入り口で棒立ちになっている葉璃の頭を撫でた。


「ハル君、それ、セナは一瞬で離れたって聞いてるし、そのモデルとのツーショット撮影はもう今後ないからね。 ハル君がセナに言ってくれたように、お仕事として割り切ってあげて」
「………………」


 二人はそうフォローを入れてくれると、聖南に苦笑を見せて会議室を出て行った。

 二人の声が届いていたかも怪しいほど、葉璃は微動だにしない。

 こんな事で葉璃との仲がこじれてしまうなどあり得ないと、聖南は葉璃の両肩を掴んでもう一度顔を覗き込む。


「葉璃、……愛してるからな。  大好きなのは、葉璃だけだからな」
「……はい、分かってますよ。  どうしたんですか?  俺なら大丈夫です」
「大丈夫そうに見えねぇよ」
「大丈夫ですってば。  やだなぁ、ちょっとビックリしただけですよー」


 へへ、と笑う葉璃の笑顔はいつものそれなのに、もはや聖南はどんな小さな違いも見逃さなくなっていた。

 微笑む瞳の奥が寂しげに揺れているのを分かっていて、放っておけるはずがない。


「おいで、葉璃。  ぎゅーしよ」
「……ん。  聖南さん甘えたい気分なんですか?」
「そうそう。  甘えたい気分。  俺がな」


 葉璃は大丈夫と言い張っていても、抱き締めてみてハッキリと分かった。

 体が小刻みに震えている。

 聖南が役者なら、聖南自身も、そして葉璃ももう少しダメージは少なかったかもしれない。

 だが聖南は演技の類いはまったく出演しないし、やったとしても大根だと葉璃に言った事もあったので、まさかモデルとしてこういう場面を見てしまうとは思わなかっただろう。

 何を隠そう、仕事上で誰かとキスをするなど、聖南にとっても初めての経験であった。

 それが公に晒されるという事、葉璃が見てしまってショックを与えてしまう事、麗々の始末よりも先にそこがネックであった。

 すべて分かっていたから差し替えを強く希望していたけれど、葉璃からも「なるべく周りに迷惑かけないように解決して」と熱心に諭された手前、こんな末路となってしまった。

 葉璃は大丈夫だと言う。

 けれど、絶対に、そんなはずはない。




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