必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 恭也を自宅まで送り届けて(今日は彼女を見なくて済んだ!)、聖南は少し遠回りをしながら俺の家を目指している。

 さすがにもう何度も行き来してるから道は覚えてきた。

 どうして遠回りしてるの?なんて、聞かなくても分かった。 もしかして聖南、お父さんとの会食の話を俺に打ち明けたいんじゃないかなって思ったんだ。

 いつになく口数が少なくて、恭也が居なくなった途端スキンシップが激しくなったから、多分今……すごく悩んでる。

 俺の右手を取って恋人繋ぎして、聖南は片手で運転してるから危ないよって言いたいのに、社長の台詞には聖南本人が一番心を揺さぶられてるんだよね。

 信号待ちの度に、手のひらをぎゅっと強く握ってくる。

 いつもしつこいくらい俺の瞳を覗き込んでくるのに、不自然にずっと前を見据えたままだ。

 会議室にやって来た時とのテンションの差が、明らかだった。

 聖南……話したいけど、話せないんだ…。 聖南……すごくすごく動揺してるんだ……。


「じゃな、葉璃。 今日聞いた事はとりあえず忘れといていいから。 今はレッスン頑張れよ」
「はい。 聖南さん、……気を付けて」


 聖南はたくさん遠回りをして俺を家まで送ってくれた。

 結局、お父さんとの事は話してくれなかった。

 俺の頬を優しく撫でて切ない笑顔を浮かべた聖南は、今日は「離れたくない」とゴネることはしなくて。

 言いたそうにはしてたけど、思うところがあるのか俺に無言で甘えるだけ甘えて帰って行った。

 明日の勇気のための充電、少しはできたかな……。

 聖南から聞いた話だけの情報しか知らないけど、聖南パパは普通に考えてヒドイ親だ。 子どもを愛さない父親がこの世にほんとにいるんだって知ってゾッとした。

 それなのに聖南は、こんなにも思慮深い。

 見た目は冷たい印象だし、素っ気なさそうに見えるし、喋り方も乱雑だけど、実はほんとに気が利いて優しい。

 それらは俺には特になのかもしれないけど、きっとあれは聖南の本質なんだろうから、どこに行っても気に入られるのは当然だ。 おまけに人懐っこくて物怖じしないから、目上の人に可愛がられるのも分かる気がした。

 ……どうしよう。 俺の大事な大事な聖南が、思い悩んでる。

 恋人である俺でさえも簡単には入り込めない深く暗い闇の中で、聖南がポツンと佇む姿を想像すると胸が痛くて涙が出そうになる。

 顔も見たくない、と言ってたほどなのに、どうして会食なんか行く事になったんだろう。

 誰か、事情を知ってる人居ないかな……。

 何も出来ないながら、俺は無意識に出来る事を探していた。

 スマホの電話帳を開いて一番上に最適な人の名前を見付けた俺は、迷わず発信を押す。

 もしかしたら仕事中かもしれないから、三コール鳴らしたら切ろうと思ってたけど、その三コール目で呼び出し音が途切れた。


『……もしもし、ハル? どうしたんだ?』



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