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二人の下ネタ会話の合間、ゆっくり瞳を開けるとアキラさんと目が合った。
「……ハル、俺と庭園を散歩しよっか」
「…………っ」
え、いいんですか!
俺は二つ返事で何度も頷いた。
とにかくそういう話は俺の居ないとこでやっててほしいし、ほっぺたの熱さも尋常じゃないから一刻も早く冷ましたかった。
アキラさんという心強い味方でいて良かった。 ほんとに良かった……。
「はぁ? アキラと葉璃が散歩? ダメに決まってんだろ。 こんな雰囲気あるとこでアキラと葉璃を二人っきりにするはずねぇじゃん」
「やだ! ちょっとだけだから許してください! アキラさん、行こ!」
小走りでアキラさんのとこまで行って腕を取ると、「はいはい」と俺の手を握り返してくれて、俺達はそそくさと下ネタ部屋から出た。
聖南のキツい視線と怒号は、今だけは聞かないもんね。
俺をりんごにした罪は重いっ。
「おいアキラ! 手は繋ぐな!」
閉まった襖の向こうから聖南の声が聞こえたけど、アキラさんも俺と同じで構わなかった。
フッと笑って、
「聞こえなかったって事で」
と俺の手をきゅっと握ったアキラさんはいつも変わらずクールだ。
下ネタでキャッキャしてた中の二人とは大違い。
「ふふっ……。 そもそもあんな話始めるからいけないんですよね!」
「ほんとだよ。 ケイタがマジになってんのにセナも便乗してたからな。 あの二人今頃まだエッチな話してるぞ」
「わぁぁ……良かった、抜け出せて。 アキラさん、気を使ってもらってすみません。 ありがとうございます」
聖南が一番歳上なはずなのに、俺はお礼を言いながらもアキラさんが長男みたいだと笑ってしまった。
あんな大胆な話の場にいつまでも居たら、今度こそ俺の頭から煙が出てたとこだ。
CROWNの長男、アキラさんに手を引かれて連れて来られたのは、淡くライトアップされた素晴らしい日本庭園だった。
料亭の敷地内にも関わらず、ここはまるで別世界に迷い込んでしまったみたいに壮観で思わず見回してしまった。
きっとここは、深夜じゃなくても静かな和みの空間なんだろうな。
深そうな林をジッと見詰めていると、アキラさんが「マジの散歩しよ」と誘ってきた。
え、と俺が顔を強張らせた理由は、散策コースだって分かってても先が見えない暗がりに進む勇気が無くて、……足が竦んだ。
「……アキラさん、そこ怖い。 ……あっち行きましょうよ、明るい方」
「大丈夫だって。 静かなとこで気持ち落ち着けてから戻ろ」
「……えー……」
気乗りしてない俺の手を引いたまま、全然怖くなさそうなアキラさんはゆっくりと、だけど確実に奥へと進んでいった。
折り返し地点にある綺麗に手入れされた東屋でようやく、休憩しようかと立ち止まってくれて、ここはそんなに暗くないからホッとする。
もうすぐ0時を回るからかちょっと冷えてきた。
体を擦りながらベンチに腰掛けると、アキラさんが自分が巻いてたマフラーを俺の首に掛けてくれる。
こんなとこまでお兄さんって感じだ。
「まだ夜中は冷えるよな。 今まで俺してたやつだから温かいだろ?」
「はい、でもアキラさんが寒いでしょ」
「歩いたからポカポカ。 一緒の距離歩いたのに何でハルは寒いんだ?」
確かにそうだけど、寒いもんは寒いんだからしょうがない。
かっこよくクスクス笑うアキラさんの香水の匂いが、マフラーから香った。 それを冷たくなった鼻まで上げると、首元が温まって何となく体の冷えもやわらいでくる。
「ハル、セナの親父さんに怒鳴ったんだ」
足を組んでリラックスしたアキラさんは、目の前の雑木林を見た。
気になってたらしいアキラさんを見上げて、俺は曖昧に頷く。
「あーはい、まぁ……。 怒鳴ってないですってさっきは言いましたけど、あれは怒鳴ったのと一緒です。 ……キレちゃいました」
「そうなんだ。 あんだけ泣いてたから心配してたんだよ。 途中過呼吸っぽくなってたし」
「そうなんですか? ……あんまり記憶にないです。 とにかく悲しくて、聖南さんが可哀想で……。 俺、もっと早く出会ってあげたかった。 小さい頃の聖南さんと。 そうしたらいっぱい遊んであげられたのに」
「小さい頃のセナも今のセナもあんまり変わらねぇよ。 体ばっかデカくなって、中身はガキのまんま」
「あはは……っ! そうかもしれないですね。 さっき聖南さんがお二人に感謝してるって言ってたの聞いて、また泣きそうになってしまいました。 聖南さん、二人には相当恩を感じてるんだと思います。 アキラさんとケイタさんなら、今日の事を知ったら一緒に気持ちを分かち合ってくれるって、聖南さんは思ったんだろうなぁ」
これは、聖南の気持ちを感じながら俺自身も思ってた事。
聖南の心を保たせてあげるには、俺だけじゃ絶対に駄目なんだ。
あの時、聖南はもう俺しか居なくなったって言ってたけど、それは違う。
アキラさんとケイタさんが居てくれたから今の聖南があるんだ。
これからも支え合っていかなきゃいけない大切な家族として、二人には聖南を守ってあげてほしい。
俺だけじゃ役不足なほど、聖南は少しの間心のバランスが取れないかもしれない。
そんな時に、ただそばにいてあげるだけでいいんだ。
聖南は、多くを求めてない。 誰にも。
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