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しおりを挟む運転しがてら、ダメ元で辺りを見回してみたが当然葉璃を発見する事は出来なかった。
気もそぞろだ。
しかし葉璃との約束でもあるので、どれだけ身が入らなくとも仕事は完璧にこなさなくてはならない。
聖南は雑誌の取材が二件と、前回撮ったスチール確認作業のため撮影スタジオにやって来た。 いつもは一度で決まる駐車を二、三度切り返し、やはり冷静さを欠いているなと苦笑する。
「───セナさん、今日はありがとうございました!」
「どもども。 こちらこそっす。 小林さんとこ久しぶりだったな」
「そうなんですよ! 最近は大御所の不倫スキャンダル多くて、そっちに駆り出されちゃって。 ずっとアイドル担当してたいわぁ」
「あはは……っ、だろうな。 人間の黒いとこってそうそう見たいもんじゃねぇよな」
「まったくです。 それでは撮影の方は後日よろしくお願いします!」
「了解ー。 お疲れ様」
───二社の取材は一時間ほどで終了し、少しの休憩時間の合間に聖南はスマホを取り出した。
『葉璃……どうしてっかな……』
取材の合間も、聖南の視線は度々壁に掛かった質素な丸時計にいっていた。
葉璃は自宅に帰っていると踏み、春香、アキラ、ケイタの順に連絡を取ってみる。
アキラは来クールのドラマ撮影中との事で成田が応答したため早々に通話を終えて、今度はケイタの方へと掛けてみた。
『セナ? どうした?』
「ケイタ、今どこにいる?」
『俺? 俺はいま西区のダンススタジオ。 振付依頼あったユニットに指導中なんだけど』
「そっか、お疲れ。 それ何時頃上がれそう?」
『え? 何時だろ、遅くとも十八時までには上がれんじゃないかな』
「それがケツ?」
『そうだけど。 何なんだよ?』
「じゃあ終わったらすぐ葉璃ん家向かってくんない? 一回送った事あるから家知ってんだろ?」
『はぁ?? ハル君の?? いや、いいけど、どういう事なんだよ』
なんの説明もナシに葉璃の家へ向かえと言われたケイタは、当然の反応を見せた。
仕事中であるケイタの時間を割いて悪いとは思ったが、こちらもそう悠長にはしていられない事情がある。 事の次第を一部始終話し、聖南の仕事をどれだけ巻きでやってもケイタより早くは上がれないと告げた。
「……そういう事だから、俺より先に葉璃ん家行って居るかどうか確認してほしい。 スマホの電源落としてるから連絡つかねぇんだよ」
『マジか……。 でもハル君がどこ行ったかなんて分かんないだろ』
「家に居ると思うんだけどな。 万が一居なかったら連絡くれるか」
『あ、お姉さんの方は?』
「連絡したけど出ねぇんだよ。 悪いけどケイタ、よろしくな」
『うん、分かった』
本当はすぐにでも聖南自身が動きたかったが、仕事がある以上そうもいかない。
二人ならこんな時、聖南の心と足になって面倒がらずに動いてくれると信頼しての行動であった。
この場から動けない聖南は、焦れてしょうがない。
もしも葉璃が心変わりをしてしまったのなら、話は別だった。
だが今回は決してそうではない。 どれだけ離れたがっても、それが聖南を思うがあまりの行いならば絶対に連れ戻さなければならない。
葉璃は、聖南と一緒に居てくれると言っていた。 もう離れないと何度も微笑んでくれていた。 好きです、と照れ笑いを浮かべて抱き締めてくれた。
それがほんの数時間前の事だ。
恐れをなして逃げ出す気持ちを理解はしてやっても、離れてやる気はさらさら無かった。
聖南を思って父親に代弁してくれた、あの時の葉璃の言葉こそ真意だと分かっている。
社長にバレても、世間にバレても、怖い事など何一つないと教えてやらなければ。
葉璃が無事に自宅に戻っている事を信じて、聖南は作業の為に眼鏡を掛けた。
昨日も散々抱きまくったから、きっと体は言う事をきかないだろう。
なぜ葉璃は度々、聖南との濃厚なセックスの後に切羽詰まるのか。 愛し合った翌日に逃げられる事に免疫が付くのはどうかと思う。
技術者の青木と共に作業に没頭する間、聖南は葉璃を想いながら苦笑した。
『俺がしっかりしなきゃだよな……』
聖南がポロポロと弱味を見せても、葉璃がすべてを全身で受け止めてくれるので甘え過ぎていたのかもしれない。
大好きだと伝え続けるだけでは、やはりダメなのだ。
何があっても大丈夫だ、守ってやるからと葉璃を安心させてあげなければ、この類いの悩みは葉璃の中で尽きる事はない。
聖南は葉璃さえ居れば何も要らないのだ。
その一言の重みを葉璃に受け取ってもらうためにはどうしたらいいのか、心配でたまらない胸中を抑えてそんな事を考えていた。
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