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ETOILEとしての活動は、あとはデビュー会見を待つのみだ。
販促活動や雑誌の取材、イベント関係の日程は会見の後、俺達の夏休みを待ってから調整する事になってるみたいだから、明日からはCROWNのツアーリハとサプライズライブに集中しないといけない。
逆に考えれば、その二つに集中できるって事だ。
CROWNのツアーはちょうどサプライズライブの翌週から始まるけど、俺と恭也は期末テストの後からの参加になる。
今日のMV撮影も中間テスト直後にスケジュールを組んでくれたから、まだ学生の俺達のために調整してくれてる林さんには、高校卒業まで気苦労を掛けてしまうのが心苦しい。
「───あの、恭也。 あの日の事なんだけど」
聖南が車を回してくれてる間に、俺は恭也に例の件を話そうとしていた。
恭也は自分のお迎えを待ちがてら、スタジオ前の出入り口で聖南を待つ俺に付き合ってくれている。
「うん、例のアレね。 どうしたの?」
「今から聖南さんに、memoryのライブが来月あるから一緒にどうかって話をしようと思ってるんだ。 俺、絶対にボロが出そうになるから、恭也のお母さん来るまで一緒に居てくれない?」
「いいよ、もちろん。 話が終わるまで、いてあげるよ」
「ありがと! 心強い!」
「葉璃、嘘が下手そう、だもんね。 その素直なとこが、可愛いんだけど。 フォローは任せて」
「下手そうっていうか実際下手なんだよ。 何回も危機的状況に陥ってるし……」
最近の恭也は、俺の根暗時代を知ってるのにやたらとズバズバ言うようになった。
ちょっと俺をからかってるって分かるのに、クスクス笑っている楽しげな恭也を見ると怒りもそんな湧かない。
完全に巻き込む形の恭也には、サプライズライブで俺個人のために色々協力してもらわないといけないから、申し訳なく思いながら打ち明けてみたんだけど。
やっぱり恭也は二つ返事でOKしてくれて、ニコッと笑顔まで見せてくれたかと思ったら……。
『これから、お互い忙しくなると思うけど、セナさんより俺を、優先する日も作って。 空いた日に、一緒に映画に行ってくれるなら、喜んで』
と、俺にとっては嬉しい交換条件を出してきた。
だって俺には得しかないから、そんな事でいいの?って戸惑ってたらまた笑顔で頷いてたから、いいみたいだ。
これまでも何度も誘われる事から、恭也はどうやら映画鑑賞が趣味なようで、俺も二つ返事だった。
「あ、セナさん来たよ」
「……う、うん」
いよいよライブの事を話す日が来たから、ただ一緒に行こって誘うだけじゃない内心は心臓バクバクだった。
カメラの前に立ってた時くらい緊張する。
「葉璃、そんなに怖い顔してたら、勘付かれる。 笑って、笑って」
「なっ、やめっ……あはははっ……もうっ……!!」
笑って、ってそんな簡単には…と眉間にシワを寄せていると、恭也はガチガチになった俺の脇腹を突然くすぐり始めた。
くすぐったくて逃げようとしても、恭也に後ろからお腹を抱かれてて逃げられなくて、悶えて笑う事しか出来ない。
「葉璃、細いなぁ」
笑いながらそう恭也が呟いても、息が出来ないくらい笑わされて抵抗さえ許されなかった。
聖南の車が目の前にやって来るとようやくやめてくれて、急に支えが無くなったから倒れるように恭也の胸に飛び込んだ。
「はぁ……はぁ……疲れた……」
笑い過ぎて変な筋肉使っちゃったよ。
あ……でも、緊張、ほぐれたかも……。
「……楽しそうじゃん。 恭也、迎えは?」
スタジオ前に車を横付けした聖南は、無表情のまま運転席から降りてきて恭也にもたれ掛かった俺の腕を掴んで引き剥がした。
「母が来ますから、お気になさらず」
「そ? 来るまで待つ」
恭也を気に入ってる聖南も密着するのはダメみたいで、さり気ないその動作に俺と恭也は苦笑した。
まーたヤキモチかと呆れても、恭也もまだ未成年だから迎えが来るまで待ってくれるなんて、そんな大人びたところもある。
マイペースな人だと改めて思いながら、俺は聖南の顔を見上げた。
「あの、……聖南さん。 ……来月の二十二日に、memoryのライブがあるんです。 単独です」
「おぉ、マジで? あ、もしかしてTzホール? 先に押さえられてたんだよなぁ、memoryだったのか」
「そうです! 聖南さんお仕事無ければ一緒に……行きませんか? 関係者席取ってくれるみたいなんで」
わざとその日が聖南の誕生日だって事を知らないフリで、しかもすでに佐々木さんが関係者席を五席用意してくれてるという事まで話して様子を窺った。
それを悟らせないように嘘を吐くのがめちゃくちゃドキドキしたけど、恭也が視線で「大丈夫、うまいよ」って言ってくれてるから何とか最後まで躓かずに言えた。
「ちょっと待って、スケジュール貰うから」
そう言うと、聖南はスマホを取り出した。
「───あ、成田さん? 至急来月のスケジュールをメールして。 ……あぁ、うん。 大まかで構わねぇけど、二十二日は今日以降仕事入れないでくれ。 ……いや関係ねぇと思う、……うん、……おぉ、それじゃ」
「もしお仕事入っていても、少し遅れてもいいので、ぜひ一緒に行きましょう。 葉璃が、影武者としてがんばった、これまでダンススクールで汗を流した仲間がいる、memoryの単独ライブですから」
聖南の電話が終わるや、恭也がそう畳み掛けてくれた。
でも仕事が入ってたらしょうがないっていう場合も事前に考えてあって、その時は恭也に動画を撮ってもらうよう頼んでる。
一応カメラは持ち込み禁止だけど、関係者席での携帯操作は佐々木さんがOKしてくれた。 つくづく俺は特別待遇で、これもまた申し訳無いと思いつつも、動画はなんとノリノリな佐々木さんの提案だから素直にその提案を呑んだ。
「あぁ。 仕事入っててもキャンセルしてでも行くよ。 ほんとの春香のダンスを生で見た事ねーから見てやりてぇし」
スマホをポケットにしまいながら、聖南が恭也に笑顔を向けた。
春香の勇姿を見てあげたいって、そんな事を思ってくれるなんて……聖南の優しさの根源はどこからくるんだろう。
他事務所の後輩からも、もちろん大塚事務所の後輩達からも、聖南が慕われている理由がよく分かる。
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