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54★ 葉璃のサプライズ計画〜準備中〜③
しおりを挟む弟系って何だ!って息巻いてた葉璃に、駅前のコーヒーショップで名前からして甘そうなチョコリスタなるものを買ってあげた。
遠慮がちに受け取る前から、作ってくれてる様子をまじまじと見詰めていて、店員さんがやりにくそうで笑ってしまった。
出来上がったそれを見て、「うわぁ~」と葉璃の顔がほころんだから、俺もつい嬉しくなってしまう。
葉璃はこれまで、学校とダンススクールしか活動範囲が無かった。
こういうコーヒーショップすら物珍しいようで、周囲には知らない人がたくさん居るせいか俺から離れようとしなかった。
「美味しー! これ美味しい! ファンになった!」
「そんなに美味しい? オレンジジュースじゃなくて、良かったの?」
「いい、これがいい。 これ好き!」
自販機のジュースなんて学校で飲み飽きてるだろうから、せっかくなら美味しそうなものをと思って買ったんだけど。
こんなに喜んでくれるなら、毎日でも買ってあげたい。
電車を待つ駅のホームで、嬉しそうにストローを咥える葉璃は目の保養だ。
毎日会ってるのに、色褪せない葉璃への大好きな気持ち。
いつまでも見ていたいけど、葉璃はmemoryの方に合流しないといけないから、そんなにのんびりはしてられなかった。
「でも、……俺が払うって言ったのに……」
間もなく電車が来るというアナウンスが流れてふと葉璃を見ると、ご機嫌だったはずの口元がいつの間にかとんがっている。
ファミレスの会計もチョコリスタも俺持ちではあったけど、何も気にしてないし、むしろ葉璃には何だってしてあげたいって思ってるのに、度々こうして葉璃は俺に謙虚さを出してくるから壁があるみたいで嫌だ。
「何言ってるの。 俺の都合で、出よって言ったんだから」
「いや、あれもこれもって、いっつも恭也払ってない?」
「そんな事ないよ。 俺と葉璃は、そんな小さな事、気にする仲じゃないよね? 葉璃にとって、俺はまだ、遠慮する存在なの?」
「そうじゃないけど……悪いなって……」
「何も気にしないで。 俺が、好きでやってる事、だから」
葉璃には遠慮なんかしてほしくない。
こんな些細なこともそうだけど、ツラい時や悲しい時は俺を頼ってほしいって思ってる。
以前、成長痛が治まって不安そうに病院への付き添いを頼んできた時、とても嬉しかった。
だからセナさんとの関係でぐるぐるするのも、一人でじゃなくて、俺にも相談してほしい。 今までの葉璃を知ってるからこそ分かってあげられる事もたくさんあるんだから、支えになってあげたい。
怖がらないで、一人ぼっちの殻を突き破ってきてよ。 ……葉璃。
「あ、電車きた」
葉璃は、ものの数分で飲み切ったチョコリスタのカップをゴミ箱に捨てて、「美味しかった、ごちそうさま」って笑顔を向けてきた。
レールと車輪の擦れる音と共に車両が停車して、プシューっと扉の開閉音がする。
続々と乗り降りする人波を見て、葉璃もこれに乗って行ってしまうと思うと寂しい。
もうお別れだ。
今日一日が、終わってしまう。
「……ねぇ葉璃、俺達はETOILEでつながってるわけじゃ、ないからね。 俺は葉璃の、一番の味方。 親友。 それだけは、覚えておいて」
「そんなの当たり前でしょ。 恭也が居ない俺の人生なんて考えられないもん。 何で今さらそんな事……」
「ほら乗って、電車行っちゃうよ。 ……葉璃、また明日ね」
え、と困惑する葉璃の背中を優しく押して、乗り過ごしてしまわないように車両の中へと押し込んだ。
扉が閉まって、車窓から葉璃がまだ困惑顔のまま手を振ってくれる。
「…………また、明日ね、葉璃」
名残惜しい気持ちを抱えながら、俺も手を振り返して電車を見送った。
これからmemoryのリハに合流するなんて、いくらセナさんのためとはいえすごくキツイはずだ。
でも葉璃は、「がんばりたい」って言ってた。
春香ちゃんの気持ちと、セナさんへの想いを胸に秘めて、サプライズプレゼントとなるライブへ向けて葉璃は邁進する。
葉璃のために、そして葉璃が大好きなセナさんのために、俺は俺にできる事をしよう。
きっとみんなが笑顔になるサプライズがうまくいくように。
大切な葉璃のために。
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