必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
378 / 541
54★

54★ 葉璃のサプライズ計画〜準備中〜③

しおりを挟む



 弟系って何だ!って息巻いてた葉璃に、駅前のコーヒーショップで名前からして甘そうなチョコリスタなるものを買ってあげた。

 遠慮がちに受け取る前から、作ってくれてる様子をまじまじと見詰めていて、店員さんがやりにくそうで笑ってしまった。

 出来上がったそれを見て、「うわぁ~」と葉璃の顔がほころんだから、俺もつい嬉しくなってしまう。

 葉璃はこれまで、学校とダンススクールしか活動範囲が無かった。

 こういうコーヒーショップすら物珍しいようで、周囲には知らない人がたくさん居るせいか俺から離れようとしなかった。


「美味しー! これ美味しい! ファンになった!」
「そんなに美味しい? オレンジジュースじゃなくて、良かったの?」
「いい、これがいい。 これ好き!」


 自販機のジュースなんて学校で飲み飽きてるだろうから、せっかくなら美味しそうなものをと思って買ったんだけど。

 こんなに喜んでくれるなら、毎日でも買ってあげたい。

 電車を待つ駅のホームで、嬉しそうにストローを咥える葉璃は目の保養だ。

 毎日会ってるのに、色褪せない葉璃への大好きな気持ち。

 いつまでも見ていたいけど、葉璃はmemoryの方に合流しないといけないから、そんなにのんびりはしてられなかった。


「でも、……俺が払うって言ったのに……」


 間もなく電車が来るというアナウンスが流れてふと葉璃を見ると、ご機嫌だったはずの口元がいつの間にかとんがっている。

 ファミレスの会計もチョコリスタも俺持ちではあったけど、何も気にしてないし、むしろ葉璃には何だってしてあげたいって思ってるのに、度々こうして葉璃は俺に謙虚さを出してくるから壁があるみたいで嫌だ。


「何言ってるの。 俺の都合で、出よって言ったんだから」
「いや、あれもこれもって、いっつも恭也払ってない?」
「そんな事ないよ。 俺と葉璃は、そんな小さな事、気にする仲じゃないよね? 葉璃にとって、俺はまだ、遠慮する存在なの?」
「そうじゃないけど……悪いなって……」
「何も気にしないで。 俺が、好きでやってる事、だから」


 葉璃には遠慮なんかしてほしくない。

 こんな些細なこともそうだけど、ツラい時や悲しい時は俺を頼ってほしいって思ってる。

 以前、成長痛が治まって不安そうに病院への付き添いを頼んできた時、とても嬉しかった。

 だからセナさんとの関係でぐるぐるするのも、一人でじゃなくて、俺にも相談してほしい。 今までの葉璃を知ってるからこそ分かってあげられる事もたくさんあるんだから、支えになってあげたい。

 怖がらないで、一人ぼっちの殻を突き破ってきてよ。 ……葉璃。


「あ、電車きた」


 葉璃は、ものの数分で飲み切ったチョコリスタのカップをゴミ箱に捨てて、「美味しかった、ごちそうさま」って笑顔を向けてきた。

 レールと車輪の擦れる音と共に車両が停車して、プシューっと扉の開閉音がする。

 続々と乗り降りする人波を見て、葉璃もこれに乗って行ってしまうと思うと寂しい。

 もうお別れだ。

 今日一日が、終わってしまう。


「……ねぇ葉璃、俺達はETOILEでつながってるわけじゃ、ないからね。 俺は葉璃の、一番の味方。 親友。 それだけは、覚えておいて」
「そんなの当たり前でしょ。 恭也が居ない俺の人生なんて考えられないもん。 何で今さらそんな事……」
「ほら乗って、電車行っちゃうよ。 ……葉璃、また明日ね」


 え、と困惑する葉璃の背中を優しく押して、乗り過ごしてしまわないように車両の中へと押し込んだ。

 扉が閉まって、車窓から葉璃がまだ困惑顔のまま手を振ってくれる。


「…………また、明日ね、葉璃」


 名残惜しい気持ちを抱えながら、俺も手を振り返して電車を見送った。

 これからmemoryのリハに合流するなんて、いくらセナさんのためとはいえすごくキツイはずだ。

 でも葉璃は、「がんばりたい」って言ってた。

 春香ちゃんの気持ちと、セナさんへの想いを胸に秘めて、サプライズプレゼントとなるライブへ向けて葉璃は邁進する。

 葉璃のために、そして葉璃が大好きなセナさんのために、俺は俺にできる事をしよう。

 きっとみんなが笑顔になるサプライズがうまくいくように。

 大切な葉璃のために。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

【BL】死んだ俺と、吸血鬼の嫌い!

ばつ森⚡️8/22新刊
BL
天涯孤独のソーマ・オルディスは自分にしか見えない【オカシナモノ】に怯える毎日を送っていた。 ある日、シェラント女帝国警察・特殊警務課(通称サーカス)で働く、華やかな青年、ネル・ハミルトンに声をかけられ、【オカシナモノ】が、吸血鬼に噛まれた人間の慣れ果て【悪霊(ベスィ)】であると教えられる。 意地悪なことばかり言ってくるネルのことを嫌いながらも、ネルの体液が、その能力で、自分の原因不明の頭痛を癒せることを知り、行動を共にするうちに、ネルの優しさに気づいたソーマの気持ちは変化してきて…? 吸血鬼とは?ネルの能力の謎、それらが次第に明らかになっていく中、国を巻き込んだ、永きに渡るネルとソーマの因縁の関係が浮かび上がる。二人の運命の恋の結末はいかに?! 【チャラ(見た目)警務官攻×ツンデレ受】 ケンカップル★バディ ※かっこいいネルとかわいいソーマのイラストは、マグさん(https://twitter.com/honnokansoaka)に頂きました! ※いつもと毛色が違うので、どうかな…と思うのですが、試させて下さい。よろしくお願いします!

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

お弁当屋さんの僕と強面のあなた

寺蔵
BL
社会人×18歳。 「汚い子」そう言われ続け、育ってきた水無瀬葉月。 高校を卒業してようやく両親から離れ、 お弁当屋さんで仕事をしながら生活を始める。 そのお店に毎朝お弁当を買いに来る強面の男、陸王遼平と徐々に仲良くなって――。 プリンも食べたこと無い、ドリンクバーにも行った事のない葉月が遼平にひたすら甘やかされる話です(*´∀`*) 地味な子が綺麗にしてもらったり幸せになったりします。

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...