必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 俺が仕掛けてしまった朝の濃厚な一戦のあと、「あー遅刻する~」と言いながらものんびりコーヒーを飲んでた聖南を急かしてテレビ局へとやって来た。

 今日までレッスンが休みな俺は、家でお留守番してるって言ったのに半ば無理やり連れて来られている。

 今日はツアーの宣伝を兼ねて、CROWNの三人はバラエティー番組の生放送にお昼から出演するらしい。

 以前、交際宣言をした翌日に出演した際に、聖南が盛大に惚気けまくってたあの番組だ。

 俺達が楽屋へと入ると、アキラさんとケイタさんはすでに来ていてお弁当を食べていた。


「お、ハルも来たのか。 おはよー」
「おはよ、ハル君! 昨日はお疲れ様~!」
「おはようございます。 お忙しい中、昨日はありがとうございました」


 ライブ後、控え室でかなり足止めを食ってたから二人ともドラマの収録には間に合ったのか気になっていた。

 貴重な待ち時間を無理に割いてしまったんじゃないかと案じていたら、アキラさんもケイタさんもとても嬉しそうな笑顔を向けてくれた。


「いや、こちらこそ。 圧巻のパフォーマンスが観られて楽しかったよ」
「うんうん! ハル君が踊ってた二曲目の振り超良かった!」
「そ、そうですか。 ……良かったです」


 そんな風に言ってもらえると、俺だけじゃなく春香達memoryもバックダンサーの子達もすごく喜ぶだろうな。

 帰ったら春香に伝えてあげよ。


「セナ、衣装はそっちにあるから着替えて待ってろってよ」
「打ち合わせは今から……三十分後、別室な」
「りょーかい。 とりあえず葉璃、弁当食お」


 着替える前に腹ごしらえするみたいで、聖南がアキラさんの横に座って俺に手招きしてきた。

 CROWNのために用意されたものなのに、俺が食べるわけにいかないから「お腹空いてないです」と言いながらケイタさんの隣に腰掛ける。


「なんでそっち座んだよ。 こっち来い。 んで何か食べろ」
「え、あ、いや……そっち椅子ないじゃないですか。 それにほんとにお腹空いてな……」
「……よいしょ……っと。 とりあえずコレとコレとコレ食え」


 話を聞かない聖南に椅子ごと俺を運搬されて聖南の隣に腰掛けさせられて、目の前に違う種類のお弁当を三つも置かれた。

 その様子を見てる二人はもう何も見えてないって感じで弁当を食べ進めてて、すっかり黙認されちゃってるなぁって苦笑してしまった。

 置かれたお弁当を前に困ってたら、アキラさんがクスクス笑っている。

 聖南、……俺を大食い選手か何かと間違えてない?


「いくらなんでも三つも食べないだろ、ハル」
「あーそうか。 まだ昼だもんな。 二つでいいか?」


 アキラさんの助け舟にうんうんと頷いてたら、聖南に変な勘違いされた。


「ハル君の食欲、昼とか夜とか関係あるの?」
「あんま昼一緒に食わねぇから分かんねぇな。 葉璃、食えるだけでいいから食っとけ。 今から三時間はここに缶詰めだから」
「三時間ですか……」


 聖南がお弁当を食べ始めたから、俺も箸を取った。

 番組自体が一時間半あって、ヘアメイクと打ち合わせ、その他諸々などで番組前後で一時間半、トータル三時間はかかるって事か。

 せっかく連れて来てもらったから番組は観覧するつもりだったし、三時間と聞いてもそんなに長いとは感じなかったけど……それだとほんとに何か食べておかないといけないかもって思いで呟いた。

 それをどう捉えたのか、ケイタさんが聖南に向かって「可哀想じゃん」と鋭い視線を投げた。


「退屈だろ、ハル君。 セナ、なんで連れて来たんだよ。 可哀想」


 あ、いや、退屈とかそんな事は思わないから大丈夫です……!

 ケイタさんが俺を気遣ってくれた気持ちはありがたい。

 でも聖南も、何か意味があって俺を現場に連れて来たんだろうから、言い合いになりそうな雰囲気はやめてほしいと口を開きかけたんだけど。


「一緒に居たかったから」


 白米を口に入れて、モグモグしながら聖南は平然と言い放つ。

 あれ、そんな理由……っ?

 連れて来てくれたの、何か深いワケがあったのかと思ったら単に一緒に居たかったからだなんて……。

 そんな事を当然のように平気で言う聖南、カッコ良過ぎるんだけど。


「…………ハル、大変だな。 彼氏がでっかい子どもで」


 やれやれと言いたそうなのを隠さないアキラさんが、俺に苦笑を向けてきた。

 とんでもない。

 俺も聖南と同じ気持ちだったから、連れて来てもらえて嬉しいよ。


「いえ、そんな……。 嬉しいです、そう思ってもらえるの」


 数分で一つ目のお弁当を食べ終えた俺は、へへへと笑いながら二人を交互に見て、最後に聖南と微笑み合う。

 うん、今日も聖南は最高に素敵。


「待ってよ、ハル君までセナのレベルに落ちたらダメだよ!?」
「おいハル、お前がしっかりしないと誰がこの猛獣を手懐けんだよ」
「誰が猛獣だ、誰が」
「セナ」
「セナ」


 二人の息がピタリと合ったから聖南は怒りだすかと思ったけど、何食わぬ顔で俺の肩を抱いて二つ目のお弁当を目の前に置いてきた。


「猛獣は猛獣でも愛する耳垂れうさぎには優しいんだよ。 なー、葉璃♡」
「耳垂れうさぎって俺の事? でも聖南さんはほんとに優しいです。 俺がバカみたいな事しても全然怒らないです」
「葉璃はバカじゃねぇよ、俺に夢中なだけだろ」
「ふふっ……そうですね。 それは合ってます」


 聖南がニコニコで顔を覗き込んでくるから、思わず顔を寄せてしまいそうになった。

 二つ目のお弁当のおかずは何かなってそっちに気を逸らさないと、そのまま唇を合わせてしまってたかもしれない。

 黙って俺達を見てるアキラさんとケイタさんは、二人とも俳優としても大活躍してるはずなのに、何とも間の抜けた顔をしていた。



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