448 / 541
61❥
61❥3
食べている最中なのに申し訳ないと思いつつも、話の流れがこうなってしまった以上は後には引けない。
「俺が前に誓いの言葉言った時、返事は三年待ってくれって言ってたじゃん? 一昨日分かったんだけど、俺もう葉璃ナシじゃ生きていけねぇから今日に繰り上げてよ」
「なっ……そ、それは……」
「簡単だろ、イエスかノーだ。 俺の名字になりたいかなりたくないか、それだけ」
「…………っっ!」
キッチンでの調理の最中、聖南手作りのカスミソウのブーケを肌見離さず持っていた事でそれを返事としたかったが、きちんと葉璃の口からも聞きたかった。
何も知らなかった葉璃にはまだ早いかもしれない。 重たいかもしれない。
分かっていても、聖南は葉璃を離してやれる気がまったくしないのだ。
自身の成長と、生きていく糧となってしまった葉璃の人生を縛る事は、聖南にとっても大きな決断だった。
何しろ出会ってまだ一年。
だが「もう一年」という思いもある。
葉璃と出会う前の二十三年間よりも濃密な時間を過ごしたこの一年で、聖南は人間らしさを取り戻した。
このまま葉璃と過ごす事が出来るなら、聖南が行う事すべてを葉璃に捧げて生きていきたい。
葉璃も同じ気持ちだと信じて立ち上がると、どこに消えたのかと思っていたブーケが葉璃の太ももの間に挟んであった。
パスタは両手を使うのでそうしているらしいが、聖南は返事を聞く前から嬉しくなった。
ゆっくりと席を立ち、葉璃の傍に寄って片膝を付く。
そして、葉璃の太ももに挟んであったブーケをそっと抜き取って、一度深呼吸をした。
「ふぅ……。 ノーは聞きたくないけど、今の葉璃の正直な気持ちを教えてほしい。 無理なら無理って言っていいから。 プロポーズしたのだって、葉璃を困らせたくてやったわけじゃない。 ぐるぐるする葉璃は見ててかわいーけど、もう余計な不安は与えたくねぇから縛りたいって言ったんだ」
葉璃を見上げてブーケを差し出すと、おずおずとながら受け取ってくれた。
そして葉璃も、気持ちを落ち着かせるように瞳を瞑って深呼吸をしていて、その表情を一瞬たりとも見逃すまいと聖南は凝視する。
じわりと瞳を開いた葉璃がブーケを持って立ち上がり、片膝を付いた聖南をきゅっと抱き締めた。
「…………イエス、しか無いです……」
「───!!」
耳元で葉璃の甘い囁きが聞こえた瞬間、聖南の頭の中で式場で向かい合う二人の情景が浮かんだ。
この言葉が欲しかった、ずっと。
気持ちを通わせた日から、いや、好きだと言ってしつこく追い回していた頃から、葉璃を完全に手に入れるこの日を夢見ていた。
葉璃が聖南ではない他の誰かと付き合う想像をして震えが走った時から、どうやれば葉璃は自分のものになるのかと考え続けていて、それはもう結婚しかないという結論に至った。
ようやく、ようやく、本当の意味で葉璃が聖南のものになった瞬間だった。
「っっしゃあぁぁ!!!!!」
「…………っっ!?!」
葉璃を力強く抱いて雄叫びを上げた聖南は、勢い良く立ち上がって喜びをぶつけるかの如く荒々しく唇を奪った。
「んんっ……っ……!」
「葉璃……やっと俺のになった、俺の葉璃だ」
「……ふぁっ……」
何度も何度も角度を変えて、チュッ、チュッ、と絶え間ないキスを繰り返す。
葉璃の背骨が折れてしまいそうなほど抱き締めていたせいで、キスの合間に「痛いっ」と文句を言われたがやめられなかった。
舌を交わらせて狼狽える葉璃が可愛くて、愛おしくて、狂いそうだった。
「ヤバ……。 メシだな、メシ」
甘い唇と舌を夢中で追っていると、聖南の足がテーブルとぶつかって我に返った。
まだ腹が満たされていない葉璃を、このまま抱き上げて二階へ連れ去ろうとしてしまうところだった。
せっかくの葉璃の誕生日を、プロポーズとセックスだけの思い出にしたくはない。
「…………っ! そ、そうですよ、あれは……ご飯とお風呂の後ですよ」
「お、積極的だなぁ」
「そんなんじゃないですっ」
ピンクに染まった両頬を取っておかわりとばかりに優しいキスを落とすと、葉璃の頭を撫でて聖南は着席した。
対面する葉璃も困惑の面持ちで腰掛け、また太ももの間にブーケを挟んでいて笑ってしまう。
テーブルの上で葉璃の手のひらを掴まえて握り、たった今プロポーズが成功して浮き足立つ聖南は穏やかに微笑んだ。
「……なぁ、葉璃……ありがとう。 俺ノーって言われる想像もちゃんとしてたんだよ、マジで。 だけど……ビビっちまった」
「ノーなんて言うわけないです。 そりゃ、驚きましたけど……。 でも今の俺じゃ聖南さんを支えてあげられないですよ? もっとこの世界の事を知って、少しでも成長してからじゃないと……。 そう思って三年後って言ったのに」
「今日言うのも三年後に言うのも返事は一緒だろ? じゃあ今日でいいじゃん。 待つって言ったのは俺だからデカい口は叩けねぇけど」
「…………ほんとですよ……」
「待てなかったんだからしょうがないだろ。 俺頑張るから。 葉璃に捨てられないように、カッコイイ男で居続ける」
もはや今すでに駄々っ子のようになっていたが、それは葉璃にしか理解してもらえない些細なものである。
聖南が本音を吐露しても、葉璃は照れたように笑ってくれるので安心した。
「聖南さんはカッコいいし、可愛いです。 今のままで居てください。 今でも追い付けないのに、聖南さんがもっと遠くに行っちゃったら俺またぐるぐるしちゃいます」
「俺は遠くになんか行かない。 今も行ってるつもりない。 そばに居るだろ、葉璃の一番近くに」
「…………はい」
俯きがちな葉璃がじわりと聖南を捉えてきた。
葉璃にシャンパングラスを渡し、自身もそれを手に取って掲げる。
「そんじゃ仕切り直し。 葉璃、誕生日おめでとう」
本日何度目かの祝いの言葉を口にすると、葉璃のグラスにカツン、とぶつけて微笑んでやる。 すると葉璃は、可愛くはにかんだ。
今度は照れた様子で俯いて、小さく頷く。
「……ありがとうございます」
俯いていても分かるほど、葉璃は頬を赤く染めてグラスに口を付けた。
あなたにおすすめの小説
元アイドルは現役アイドルに愛される
陽
BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。
罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。
ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。
メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。
『奏多、会いたかった』
『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』
やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。