必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 聖南の眉間に濃い皺が刻まれていく。

 プロポーズをしたその日に浮気発覚など、断じて許せない。

 あくまでも聖南の誤解なのだが、カッと頭に血が上った聖南は語気荒く葉璃に詰め寄る。


「抜いたんだな!!? 相手誰だ!!」
「ち、ちが……っ」
「何が違うんだよ!! 葉璃の精液の濃さの違いくらい、俺はもう分かんだよ! あの濃さは直近だろ! こっち来てからって事だよな!?!」
「聖南さんっ、落ち着いてよ! た、確かに抜いたのはほんとだけど、でも……っ」
「なっ……!?」


 抜いたのは本当だと聞かされた聖南は、見事にキレた。

 聖南がライブの準備にかかりっきりで葉璃を放っておいたのもいけないが、聖南ではない誰かと葉璃が交わったなど憤らないはずがない。

 葉璃の頭を囲うように両腕を付いて見下ろすも、こんな時でも可愛く映る自分の欲目が許せない。

 ピリついた二人は見詰め合ったまま、唇をわなわなさせている。


「てめぇ……覚悟して浮気しろっつったからには分かってんだろうな? 相手殺すからな?」
「……っもう! 話聞いてよ!」
「こっちは? 使ったのか? 相手誰だよ」
「聖南さん!!」


 浮気をしたにしてはキリッと聖南を見詰め返し、尚且つ強気で言い返してくるので、窄まった穴に指先を伸ばした聖南の眉間の皺は一層濃くなる。

 愛する葉璃に向かって、ドスを効かせた「てめぇ」を口走った事にも気付けない。


「何だよ。 そんな大声出さなくても聞こえてるよ。 俺は、相手は誰だって聞いてんだけど」
「相手なんか居ません! ……い、居るとしたら、俺!」
「………………」


 濡れていない指で無理やり穴をイジろうとしていた聖南の動きが、ピタリと止まった。

 見知らぬ男とベッドインしている葉璃を想像して憤怒していたが、葉璃の言葉を脳内で整理していくうちに、聖南の想像の中から見知らぬ男が少しずつ消えてゆく。


「…………何つった?」
「ねぇ、聖南さんっ、俺そんなに浮気者に見える!? 話も聞かないですぐヤキモチ焼かないでくださいよっ」
「………………」


 葉璃が珍しく怒っている。

 目尻が上がり気味のまん丸な瞳がキッと聖南を睨んでいて、聖南の脳裏に描かれた浮気相手が忽然と姿を消した。


『……って事は……』


「……葉璃がしたの? 自分で?」
「はい……」
「嘘だろ、いつ?」
「…………今朝……」
「マジで? 俺何してた?」
「聖南さんが部屋を出てから……布団に入ったら聖南さんの匂いして、思い出したら寂しくなってぐるぐるして、それで……したくなっちゃった……」
「────ッッ!」


 よもやこんな事を白状させられるとは思っていなかったようで、恥ずかしそうに手のひらで顔を覆っている。

 よく見れば耳まで真っ赤になって「言いたくなかったのに…」と呟いているので、それが真実なのだと知ると現金にも聖南の嫉妬心は強い興味へと変わった。


「え、え、そんな事あんの? そんなに俺としたかったんだ?」
「……はい……。 だからさっきもそう言ったでしょ……」


 小さく頷いた可愛い恋人は、聖南が手を出さずにいたせいで我慢出来ずに一人エッチを敢行したようだ。

 聖南の居ない間に、聖南の匂いを辿って、聖南を思いながら。


『何だよ何だよ何だよ……かわい過ぎるだろ……!!』


 顔を覆っていた手を握り、鼻先を付き合わせて魅惑の瞳を覗き込むと、可哀想に涙で潤んでしまっている。


「……葉璃……なんでそんなかわいーの……? 俺、鼻血出てない?」
「え? ……出てないですけど……」
「そっかぁ、葉璃が一人でしたのかぁ。 んな事させるなんて彼氏としては、……あ、もう違うか。 旦那としては甲斐性ねぇよなぁ……やっぱ禁欲なんてするもんじゃねぇ」
「だ、旦那様……っ?」


 ローションを取り出して穴に塗りたくっていると、耳まで真っ赤にした葉璃が聖南を見詰めてくる。

 指を入れる瞬間、反射的に体を強張らせてしまうのを知っている聖南は意識を逸らしてやろうと首筋や鎖骨を舐めて愛撫していた。


「……それすげぇいい響き。 「あなた♡」って呼んでもいいよ」
「呼ば、ないですよ……! 照れ……あっ、やだ、……んんっ、んっ、……!」
「照れんの? 今さら? かわいーんですけど?」
「あっ、待って……っ、やだ……っ舐めるの、……だめ……っ」


 中指を入れた穴からぐちゅぐちゅとほぐれた音がし始める。

 人差し指と中指でじっくり中を抉り、葉璃のいいところを擦る事も忘れない。

 美味しそうだからと穴に舌を入れようとしたのだが、指が引き抜かれてしまいそうなほど腰をくねらされてしまい阻止された。


「いっつも舐めさせてくんねぇよな、葉璃。 腰上げれる?」
「……っ……せな、さ……ん……っっ」
「そんなかわいー顔してもダメ。 今日は許してあげらんない。 葉璃が何回ぶっ飛んでも起こしてやる」


 舌は入れないからと折れて、弄られて濃くなったピンク色の挿入口を凝視した。

 指を増やして中で蠢かせていくと、熱を持ったそこは三本の指を見事にふやけさせてしまう。

 抜き差しする毎に溢れ出たローションが太ももを伝っていて、穴の具合の良さも相まって興奮が抑えきれなくなってきた。


「葉璃、入れてい? ……痛かったら教えて」


 張り詰めた自身は禁欲のせいかいつもより太く長い気がする。

 先端を入り口に押し当ててみたが、もしかして痛いかもしれないと聖南が案じるほど膨張していた。


「やっ……あっ……あっ……入ってる……っ」
「入ってるよー。 たまんねぇよー。 気持ちいいー……。 葉璃ちゃん、痛くねぇ? 大丈夫?」


 あれだけほぐしたのに、押しつぶされそうなほどに狭い。 ゆっくり挿れていかなければ、万一裂けてしまうと大変だ。

 長い時間をかけて先端を埋め込み、じわじわと挿抜を繰り返しながら挿入していく。

 葉璃の左の耳たぶを甘噛みしながらもう一度「大丈夫?」と問うてみると、突然、一際可愛く葉璃が啼いた。


「あぁっ……! こ、声……っ! やめっ……やめて……!」
「声? 葉璃ちゃん、俺の声好きだったっけ?」
「んぁっ、……っ好き! 前から、言ってたよ……!」
「覚えてねぇなぁ。 ……好きなんだ? 葉璃」
「んんんっっ……♡  やめてよ、っ意地悪、……しないで……っ」


 葉璃に声を褒められた聖南は、上機嫌だ。

 ゆるゆると腰を動かしつつ、そんなに内側がキュンとなるほど喜ぶのならと、耳元で何度も葉璃を呼んで甘く啼かせた。


『声が好きって嬉しい……かわいーなぁ♡』



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