必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 収録が行なわれるスタジオ前の廊下で、聖南はハルカを待ち伏せする事にした。

 どれだけ策を練ろうが、人と協力しようが、無理な時は無理なのだから、非常に原始的なやり方ではあるがこの方法しかないと悟ったのだ。

 終わり時間の兼ね合いで、memoryの収録順が一番だったのは確認済みだ。


 ── もうこれしかねぇ。接触するには多少のリスクも負わないとな!  やっぱ自分で行動しないと意味がねぇよな!


 つい先程まで成田と結託していた聖南が言えた台詞ではないが、聖南にはもはや男のプライドすらもハルカに捧げている。

 するとそこへ、memoryがやって来た。

 聖南は死角となる場所で、派手な衣装で怪し気に佇み、ジッと息を殺す。


 ── お、来た来た。……んーっと、ハルカは前から……四人目か。


 収録が終わってから接触を試みようとしていた聖南だったが、以前のmemoryのパフォーマンスをまた観たいという衝動に駆られて、しれっと自分もスタジオ内に侵入する。


「セナ? こんなところで何やってるんだ? CROWNの収録はこの子らの次だぞ」


 当然ながらそこに居たスタッフから一斉に注目を浴びたが、「カメラ位置とか確認しとこーと思って」などともっともらしい事を言って納得させた。

 事前説明で聞いているので、今までそんな事は一度もした事はない。

 ただ単にそこに居るための嘘だ。


 ── あーやっべぇ。今日も絶対的にタイプだ。


 本物のハルカを前に、だらしなく空いた口からよだれを垂らしかけた。

 今までの人生で、あんなにも可愛くて抱き締めてみたいと思った子は初めてだった。

 外見もそうだが、あの時、あの強い瞳に射抜かれてしまったのだ。

 今日のダンスを見て、葉璃の動きが前回よりもかなりナチュラルに、指先まで気を使った女性らしさを伴なっている事にもすんなりと気付けてしまうほど、聖南自身がドン引きしてしまうくらいには繰り返し凝視した。

 こんなに心がときめくような恋は、一生に一度あるかないかだと思いながら。


 ── クッソー。ハルカ目の前にしたら緊張して固まっちまうかもなぁ……。


 memoryのパフォーマンスはカメラリハーサルと通しリハーサル、本番の3回行われた。

 笑顔を振りまく彼女達の中で、ハルカだけは笑顔とは到底言えない、ひきつった顔でそそくさとメンバーの後ろに隠れてしまう。

 前回も思ったが、あの子は笑わないキャラなのかもしれない。

 収録後、スタッフ一人一人に丁寧に挨拶している今も、ハルカは背の高い黒髪ロングのメンバーの背後にピタリとくっつき、形ばかりのお辞儀だけしているようだ。


 ── お、そろそろか。


 全員がそれぞれ談笑しながらスタジオから出て行こうとしているのが見え、聖南も気付かれぬよう素知らぬ顔で後に続く。

 運良くハルカは最後尾にいるので、大チャンス到来だ。

 スタジオから控え室への廊下、メンバー皆がぞろぞろと曲がり角を曲がっていく。

 と、その時。聖南はハルカの腕を取り、素早く無人の空き部屋に連れ込んだ。


「……っ!?」


 ハルカは突然の事に目を丸くし、聖南の顔を訝しげに凝視してくる。

 当然の反応だ。


「……突然ごめん。どうしても話がしたくて」


 ── 話だけじゃなく、あんな事やこんな事もしたい! 驚いているその表情すら可愛過ぎる!


 欲望にまみれた思いは絶対に悟られてはならないと、聖南は真面目にハルカの目の前に立った。



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