必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 あの驚愕の告白から三日経つ。

 俺も何だか嬉しくなるほど頭に花が生えたみたいにルンルン状態の春香だったんだけど、なぜか満開だった花は日に日に萎んできていた。

 連日のハードなダンスレッスンで筋肉痛だった俺は、今日までスクールを休んで家でくつろいでいる。

 毎晩寝る前に、あの時のセナの驚いたような顔が蘇ってきて寝付きが悪くなっているのも、回復が遅れている原因かもしれない。

 何かに気付いてしまったのか、はたまた俺の女顔にただビックリしただけなのか……今はとにかく、後者であってほしいと願う事しか出来ない。


「はぁ……何も変わらないままでいられますように……」


 ベッドの上でゴロリと向きを変えて、あ、今なら眠れそう……という時に限って、騒ぎはやって来る。


「ねぇ葉璃、入るよー。ちょっと話があるの」


 言いながらもう入ってるよ! と強く怒ろうにも、最近の春香は見るからにしょんぼりしてるから話くらいは聞いてやらないと可哀想だ。


「何?」
「セナからの返事が、あの日の一回だけしか来ないの! どう思う!?」
「どう思うって……向こうは忙しい人なんだから、そんなしょっちゅう連絡できないんじゃない?」
「でもでも、連絡待ってるって言ってくれたわりには、一回だけだよ? やっぱり私、大勢の中の一人なのかなぁ……」


 シュンと肩を落として落ち込む春香に、その類いの経験がゼロな俺は何て言っていいのか分からなかった。

 俺が見た限りでは、セナは間違いなく本気の目をしてたように思うんだけど……。

 他に女がいるとは考えにくいし、考えたくもないだろうけど、確かに忙しいからと言ってLINEの返事くらいはできるよね。

 それがあの初日、たったの一回だけだなんて、よく分からない男だとしか思いようがなかった。

 あんまり気を落とすような事は言いたくないけど、ここは俺も佐々木さんみたいにスマートにフォローしておこう。


「マジであの人忙しいんだって。仕事終わったら即爆睡の人なのかもよ? 俺らと生活リズムも違うだろうから、もう少し気長に待ってみたら?」
「そうかな……」
「好きだって言われたんだから、自信持ってなって!」
「う、うん……! たった三日でこんなに悩んじゃダメよね!  相手は普通の男じゃないんだし!」
「そうそう、その意気!」
「あー葉璃に話して良かったぁ。ありがとう、葉璃」


 我が姉は、俺の睡眠は妨げたけれどとても清々しく部屋を出て行った。

 今のフォローにはなんの根拠もない。ただ春香のメソメソ顔はもう見たくなくて、柄にもなく慰めてしまった。

 この事を知ってるのは俺だけだし、春香が話をしたがるのも当然で、だからこそ元気付けてあげられたのなら良かった。

 それにしてもセナのやつ、あの時の必死な告白は何だったんだよ。

 釣った魚に餌はやらないって言葉がパッと浮かんでしまって、素早く打ち消す。


「モテる男の考える事は分かんないなぁ……」


 きっと今まで女に不自由した事なんてないんだろうけど、それに春香を巻き込むのはやめてほしい。

 このまま春香が都合よく扱われるのは絶対に許せないから、明日こそセナからの連絡が春香に届きますようにと、誰ともなしにそう願った。







 学校帰りにダンススクールへ向かうと、memoryのメンバーはスタジオじゃなく、休憩室で横一列に並んで座っていた。

 そこにはマネージャーの佐々木さんも居て、座る位置の確認を念入りに行っている最中みたいだ。


「お、葉璃来たか。今週末は前も話した雑誌のインタビューが入ってるから、葉璃は記者から一番遠い……ここに座って」
「え、あ、……はい」


 佐々木さんはみんながいる前で、何故か手をつないで座席まで俺を案内した。

 何事も無かったかのように離れた佐々木さんは、さっきの席でリーダーとインタビューの内容の考察に入っている。

 な、何? 手、つないだよね、今。

 わざわざ手を繋ぐ意味がよく分からなかったけど、深く考えるほどの事でもないかって、俺はその事をすっかり忘れてインタビューの流れについてをちゃんと真面目に聞いた。

 その日はレッスンもそこそこに解散となって、帰ってからはなかなか進まない宿題に取り掛かる。

 週末の雑誌インタビューは、memoryの写真撮影と、別室で記者からの質問に答える、という事らしい。

 リーダーのあずさと美南が主に喋ってくれるみたいだし、俺が替え玉に行かなくてもよくないかな……?

 なんてチラッと思ったものの、春香本人が行くとなるとギプスのまま衣装に袖を通す事になる。

 あれは結構大変そうだったから、春香のギプスが取れるまではやるって俺も大見得切っちゃった手前、頑張るしかない……よね。



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