必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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『は? マジ? それマジで言ってる?』
「……はい。部屋に戻ったら急に寂しくなりました……」
『……はぁ……』


 ── ヤバイ。調子に乗って正直に言い過ぎたかも。

 大きなため息の後、電話の向こうで沈黙してしまった聖南はきっと「キモい」と思ったんだ。さすがに男から寂しいなんて言われたら気持ち悪くて、だから黙っちゃったんだ……。

 変な事を口走ったせいでいたたまれず、弱虫な俺は電話を切ってしまおうとスマホを耳から離した時、聖南の甘やかすような声がした。


『葉璃、お前……今それ言うか。またすぐ会いたくなるじゃん……』
「……え……?」
『……かわいーな、葉璃。可愛い』


 失言を後悔して電話を切ろうとしたのに、聖南にとっては嬉しかったみたいで声が柔らかく、明るくなっていた。

 運転で疲れた様子だったのを、俺なんかが元気にしてあげられたんなら、それだけで俺も嬉しい。


『あーもう。せっかく両想いになったのに、何で今俺の隣に葉璃がいねーの?』
「……明日も学校だから」
『そうだよな、それだよ。葉璃、早く大人になれ』
「……ふふっ、そんな無茶苦茶な……」
『あ!! いま笑ったか!? 笑ったよな!?』
「えっ? ま、まぁ……笑いましたけど……」
『うぉぉやべぇ!! 顔見てぇ!! 笑ったとこ自撮りして送って!』
「ダメ、無理です」
『えーーーー』


 笑った顔見たことねぇのに……と呟く聖南に、これからいくらでも見れるじゃないですかと思いはしても、口には出せなかった。

 自撮りして送れ!といつまでもしつこかった聖南とは、五分くらい話をしてから通話を切った。

 たった、五分。

 着歴に残る聖南の名前を見詰めて妙な高揚感を覚えた俺は、もしかしたら今日は眠れそうにないかもなぁ……。





… … …



 案の定眠れたのは明け方のニ時間くらいで、俺はスマホのアラームで飛び起きて学校に向かった。

 いつになく浮足立った明るい気持ちなのは、たぶん誰にも気付かれていない。俺の普段のポーカーフェイスが功を奏したみたいだ。

 午前中は眩しい陽射しに瞼が重たくなりながら、授業がまったく耳に入ってこなかった。

 考えるのは、聖南の事ばかり。

 背が高い聖南に抱き締められると俺の小柄さが際立っちゃうんだけど、温かくて良い匂いのする人に包まれるのは嫌な気はしなかった。

 加えて、「可愛い」「好き」って連呼してくる熱量は、恋愛経験のない俺には受け止めきれないほどだった。

 言われる度に照れて、思い出してしまった今もどうしようもない気持ちだ。

 休み時間になって、唯一の友達である恭也と学食でご飯を食べて教室へ戻ると、何やら女の子達が色めき立っていた。


「ねぇねぇ、昨日の歌番見た?」
「見た見たー! やっぱりセナが断トツよね!」
「なんであんなにカッコイイんだろー♡」
「子役の時から他とは違ってたもんね。来月のHottiも絶対買わなきゃ!」
「いつ発売だっけ!」


 派手に湧くクラスメイト達の横をしれっとすり抜けて、気配を消しつつ自分の席に静かに座る。

 昨日出演番組が放送されたからか、聖南やCROWNの話題で持ち切りだ。

 そんな彼女らの横で、少しだけ、ほんの少しだけ、……優越感を感じてしまった。

 休み時間だからいいよな……と、トイレに行ってる恭也が戻る前にスマホの電源を入れてみると、聖南から何度もLINEのメッセージが届いていた。

 隣でワーキャー言われてる本人からのメッセージが、こんな平々凡々な根暗野郎の俺の元に届くなんて、やっぱりどこか信じられない。

 恭也が戻ってきたから早々に窓を閉じて、聖南からのLINEメッセージを見ずに、そしてもちろん返信もしないまま、スマホの電源を落としてポケットにしまう。

 ほんとは信じたいし、聖南の想いに応えてみたいってちゃんと思ってるのに、明確な応えをあげられなかった。

 あんなに真剣な瞳を見ても、何が俺をセーブさせてるのか俺自身もよく分からなかった。





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