必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 扉を開けて個室に入った俺は、まず大量の見舞いの花達に出迎えられて息を呑んだ。

 俺ですらよく知る芸能人の名前が花に添えてあって、聖南が生まれてからこれまでずっと芸能界で生きてきた人だという事を思い知らされた。

 病室とは到底思えないほどの個室の広さに驚愕しながら、点滴が繋がれた聖南が眠るベッドへと重たい足を運ぶ。

 静かに寝息を立てている聖南の顔は、本当に綺麗だった。

 苦しそうに呻いていたらどうしようって不安だったけど、予想に反して安からな顔をしていて心から安堵した。

 なかなか目を覚まさないのはきっと、聖南の毎日が忙し過ぎて、この機会に体が休みなさいって言ってるんだと本気で思う。

 ── 良かった、生きてて……。

 ホッとすると、この寝顔が愛おしくてたまらなくなり、安堵感と共に唐突な感情が込み上げてきて目頭が熱くなった。

 到着して間もなく、そう何時間も寝顔を見ることのないまま聖南は目を覚ました。


「……葉璃……」


 ゆっくりと目を開いて、掠れた声で俺の名前を呼んだ時は、聖南への「好き」が溢れてどうしようもなかった。


 ── 聖南だ、聖南だ……!


 弱々しく右腕を上げてきたから、どこでもいいから触ってほしくて屈むと頬を撫でてくれて、泣くなと言いながら力無く笑ったその切なさに涙が止まらなかった。


 ── 好きだ。俺、この人の事好きだ……!!


 目を覚ました聖南の姿を見ると、今までの聖南との会話ややり取りが一本の映画みたいに全部俺の頭に流れてきた。

 聖南はいつだって真っ直ぐだった。

 男である俺に、好きだと何度も言ってくれた。

 俺なんかって言う性格もすべてひっくるめて可愛いと言ってくれる存在に対する好意を、もう認めないわけにはいかなかった。

 ベッドを起こした聖南と少し話をして、俺は不安を全部打ち明けた。

 本当に俺でいいのかって情けない確認をして、めちゃくちゃ恥ずかしかったけど、俺も好きですってちゃんと言えた事で心が温かい気持ちでいっぱいになった。

 ドラマや漫画の世界みたいに聖南の周りにキラキラが見えて、キスをされた瞬間、目に見えるものすべてに星が散って何も考えられなかった。

 気持ちを確かめ合うと、珍しく聖南も何だか落ち着かない様子だったから、俺はこの何とも照れくさい空間からちょっとだけ逃げたくて、立ち上がった。


「あ、あの……っ、親に連絡してきますねっ。看護師さんにも、聖南さんが目覚めたこと報告してきます!」
「お、おう! 悪いな、面倒かけて」


 そそくさと聖南の個室から出て、ナースステーションに向かう。

 聖南が目覚めた事を伝えると、すぐに中がバタバタと慌ただしくなったからそっと俺は退散した。

 一般で言うデイルームの様な場所にやって来た俺は、座り心地抜群な二人掛けソファに腰を下ろした。

 学食に置き去りにしてしまった恭也に詫びのメッセージと、仕事中の両親にはそれぞれに、今日は帰りが遅くなるかもしれないけど心配しないでとのメッセージを入れておいた。

 すべてを知る春香にだけは洗いざらい長文でメッセージを書いておいたので、両親にもうまく援護してくれると思う。


「ふぅ……」


 とにかく、聖南が目覚めてくれて、しかも思っていたより元気そうで安心した。

 ついに俺も好きだって伝えられた満足感も手伝い、何だか足元がふわふわしてるような新しい感覚に、幸せなため息を吐く。

 窓の外を眺めると、今まで見た事がないくらい景色が明るかった。


「ハル? 何でこんなとこにいるんだ?」


 そこへ、エレベーターが到着して中からサングラス姿の長身男性が出てきた。


「……っ、アキラさんっ」


 スマホをポケットにしまいながら、アキラさんはコーヒー片手にたった今戻ってきた所のようで、病室にいるはずの俺がこんなとこにいるもんだから首を傾げている。


「セナはどんな感じ? まだ目覚めない?」
「あ、いえ……起きてくれましたよ」
「マジで! やっぱ愛の力は偉大なんだなー」



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