必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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─聖南─



 その細い腰を抱いたまま、聖南は葉璃の唇をたっぷり堪能していた。

 アキラが葉璃の頭を撫で、それを見上げる葉璃の甘さを含んだ顔を蚊帳の外で見ていたあの瞬間、生まれて初めてヤキモチを焼いた事を自覚した。

 胸が焼け付き、焦げてしまいそうになるほど、ジリジリと聖南の心を得体の知れない重たいものが支配した。


 ── あんな顔していいのは俺にだけだろ。


 葉璃が狙ってやっていない事など分かっているはずなのに、問い詰めるような事をしてしまった自分を悔いてはいたが、それだけ相手をその気にさせてしまう魅力が葉璃にはあると本人にしつこく教えていかなければならない。

 この瞳も、鼻も、口も、髪も、体も、すべて俺のものだと言って歩きたいなどという、生まれて初めて抱いた独占欲を経験した聖南は、猛烈に、葉璃と体を繋げたいと思ってしまった。

 一刻も早く心と体を手に入れないと、聖南自身が安心できない。

 キスをしながら淫らな妄想までしてしまっていると、強めに胸を押されて葉璃が離れていった。


「……っぷはっ……」


 どうやら長過ぎたキスで酸欠に陥ったらしい。

 ベッドから降りようとしている所をすかさず抱き締めて、背中を優しく撫でてやる。


「苦しかったか。鼻で息すりゃ何時間でもキスできる。練習だな」
「長過ぎですよ! 聖南さんは……、慣れてるかもしれないけど、……俺、聖南さんしか知らないのにっ」


 聖南の胸元から見上げてくる葉璃が恨めしい瞳を向けてきて、例の凶器である上目遣いにクラクラした。

 飛び出す台詞までいちいち可愛い。

 濃いキスを仕掛けたせいで葉璃は前屈みになっているしで、聖南はキュンキュンしっぱなしだ。


「俺しか知らなくていいんだよ、この先も」
「……うー……」


 小さく唸る葉璃の唇にもう一度キスを落とし、頭を撫でてやる。

 葉璃のアソコが反応している事に気付いてしまうと、触ってみたい衝動に駆られた。

 しかし聖南は、体を繋げたいと強く思うわりにはいきなり触ると葉璃が逃げ腰になると分かっているので、努めてその事は考えないようにした。

 自身のモノも含め、何とか落ち着いてもらおうと赤ん坊を寝かし付けるように背中をポンポンと穏やかに叩いてやる。

 どうしても、葉璃相手だと強引に事を進められない。


「なぁ葉璃。俺が退院する日……いつか分かんねぇけど、その日ウチに来いよ」
「家にですか……? 聖南さんの?」
「俺ん家以外にあるかよ。いいな、来いよ?」
「えーー……考えておきます」
「考えんなよ!」


 突然の招待に緊張が走った葉璃の動揺が愛おしくてたまらなく、聖南は笑ってしまう。

 まだ引きつるような感覚があるため、少し庇いながらククッと笑っていると、神妙な面持ちで葉璃が聖南の患部付近を見た。


「聖南さん、……痛かったでしょ……?」
「あーまぁな。痛かった。けどこれは俺がやってきたことの代償だからな、仕方ない。内臓やられてなくて良かったと思うようにしてる」
「また代償とか言ってる。聖南さんの言ってた罰って、何なんですか?」


 心配気だった表情がきょとんと幼くなり、葉璃は首を傾げている。

 本気でその意味を分かっていない風で、聖南はどう答えたらいいのか迷った。

 今までの聖南は大人として恥ずべき事を飄々と行ってきたために、それを純真な葉璃に伝えるには相当な勇気がいる。

 言わない方がいい気もするが、別の誰かに吹聴される方がよりいけない気がした。


「……家に来たら教えてやるよ」
「…………卑怯ですよ」
「分かってる。口実だ。でもここで話す事ではないのは確かだから」
「……分かりました、……行きます」


 ちゃんと誠意を持って話したいと思ったのは本当だったが、我ながら良い交換条件を思い付き、それに乗ってくれた葉璃の返事を聞いた聖南は心の中で『よっしゃあ!』とガッツポーズをした。



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