必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 罪悪感から、聖南はこの事件と傷跡を罰として受け入れなきゃならなかった。

 そんなにも贖罪の気持ちがあるなら、もうそれだけで救われる気もする。

 そもそも、聖南が女遊びをしてたと聞いて驚くわけがなかった。

 だって……。


「聖南さん見た目チャラいですもん」
「は、はぁ??」
「自分の事、チャラくないと思ってました? 俺初めて聖南さん見た時の第一印象がそれでしたけど」
「マジかよ……」


 ちょっとズバッと言い過ぎたかなって思ったけど、この方が遠慮が無くていい。

 聖南はきっと、そういうのを嫌う人だと思う。


「そうか……だからあんな塩対応だったのか……」


 でも思いのほかショックを受けてるようで、やっぱり言い過ぎたかもと思っても遅い。

 聖南はらしくなく肩を落として凹んでしまい、ヤバイと思った俺は勇気を出して聖南の手を握って顔を覗き込んだ。


「そんなチャラい聖南さんの事、俺もちゃんと好きなんですから、もう何も気にしないで下さい」
「おい、それ微妙にフォローになってねぇ」
「そ、そうでした?」
「……葉璃かわいーから許す」


 ジロッと見られた時は一瞬ヒヤリとしたけど、聖南に軽く唇を奪われた事で安堵した。

 聖南が凹んだままは嫌だから、口下手で気の利いた事の一つも言えない俺なりに、どさくさに紛れて「好き」って伝えてみたんだ。


「葉璃、マジで気にしない? 俺今は葉璃しか見えてねぇけど、もし過去が気になるなら……」
「ならないです。ネットで検索したりもしません。……俺が出会ったのは今の聖南さんだから」
「葉璃……」


 俺は、一目惚れしたとしつこく追い掛けてきた、一途で強引で不器用な聖南しか知らない。

 あの時アキラさんが話していた意味も、これでやっと分かった。

 聖南の本質は、もっと深く暗い、両親の愛を知らないままに育った子どものような大人なのかもしれない……と。





… … …



 処方されたのが強い薬だったのか、薬を水で流し込んだ直後にブラックコーヒーを一気に飲んだのがいけなかったのか、聖南は服用してから一時間くらい経つと急激な睡魔に襲われた。

 葉璃が来てるのに寝れない、と必死で起きていようとする聖南を宥めて、しかもベッドには行かないと断固として譲らなかったので、今聖南はソファに座る俺の膝枕でスヤスヤと眠っている。

 聖南の家のコーナーソファは、長身の彼でも足がはみ出さないほど充分に広くてしっかりとしてるから、少しも起きる気配がないくらい熟睡中だ。

 入院生活中に染み付いたのか傷跡が痛まないよう仰向けで寝てるから、いつもは照れてマジマジと見れない聖南の顔面を俺はたくさん堪能し、時には触ってみたりもしていた。


「肌スベスベ……」


 聖南の頬に触れてみると、しっとりと水分が保たれた上質な触り心地だ。

 ワイシャツに隠れている腕も、細身に見えてちゃんと男らしい筋肉が付いていて、俺がいくら抵抗しても逃げられなかったわけだって納得した。

 バランスの良い体に、長い手足、小さな顔……起きてる時ですら超絶カッコイイのに、寝顔までイケてるなんてズル過ぎる。

 金に近い茶色の髪を肩ほどまで伸ばしている聖南は、男にしては長髪で男臭くない顔立ちと人懐っこい話し方だから、どんなにチャラくても人気な理由が分かる気がした。

 見た目だけじゃない、持って生まれた人好きされる才能っていうのかな。

 顔にかかっていた前髪を耳にかけてやると、キラッと光る輪っか状のピアスが両耳についていた。

 これだ。これもチャラさの原因だ。

 聖南の耳には他にも、今は塞がってるみたいだけど穴を空けた形跡がいくつもある。ほんとにヤンチャしてたんだなぁと、彼の過去に思いを馳せた。

 両親の事はあまり話したくなさそうだったから、無理には聞けない。

 きっと、寂しさを埋めるために聖南なりに奮闘したのかもしれないって、女性関係はさておき勝手に切なくなった。

 俺はたっぷり、深い眠りに堕ちている聖南を観察し、それは時間が経つのを忘れさせた。

 シーリングファンの回る微かな音だけが響く聖南の部屋は、広過ぎるところが難点だけど居心地はいい。

 引っ越してきたばかりなのかな。

 物が少なくて質素ではあるけど、所々に置かれた観葉植物やアロマランプが可愛くてほっこりする。


「ふぁ……」


 起こしては可哀想だからと微動だにしなかったからか、膝の上の聖南のぬくもりにやられた俺もつられて何度もあくびが出た。

 そしていつの間にか、そのまま眠ってしまっていた。



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