必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 マンションを出ると、まだ早朝にもかかわらず数名のマスコミの姿があった。でも以前ほどの過熱ぶりではなさそうだった。

 土地勘もなく、さらに方向音痴なのも手伝い、俺は疲労感たっぷりの体を引き摺ってぐるぐると街を徘徊して、ようやく駅に辿り着いた。

 そこからはちゃんと自宅まで迷わず帰れて、まだみんな起き出す前だったから静かに部屋に上がり、慣れたベッドへダイブする。

 こんな事ならタクシー拾えば良かった。


「疲れた……」


 俺はこう呟いた後、ベッドにうつ伏せたままの状態で意識が途切れた。

 学校がある月曜日の朝も起きられず、夢なんか見ないで爆睡していて、目を覚ましたのはなんと月曜の深夜だった。


「── 葉璃、大丈夫ー? 入るよー?」
「だからもう入ってるじゃん」


 お馴染みのやり取りを交わすと、春香がホッとした表情でいつもの様に俺の椅子に腰掛ける。


「あ、起きてたんだ。めちゃくちゃ寝てたけど、どうしたの? 具合悪い?」


 熱測ったけど無かったからほったらかしてた、と春香が心配そうに体温計を見せてくる。


「今何時?」
「月曜の0時過ぎだよ。正確にはもう火曜」
「月曜の0時!? 火曜!? お、俺そんな寝てたの……」


 ビックリした。

 信じられないほど寝てたみたいだ。

 頭をポリポリと掻きながら体を起こすと、寝過ぎたせいか聖南とのエッチのせいなのか、体中がバッキバキだった。

 痛くて気休めに伸びをすると、春香が物言いたげに俺を見てるのに気付く。


「何?」


 こんな夜中に春香が俺の部屋に入ってくるのは、何か話がある時だ。


「あのさ、セナさんと何かあったの? すごいんだよ、私への連絡が」
「え、っ? 春香に……?」
「葉璃またスマホの電源切ってるでしょ。葉璃に連絡付かないけどどうなってるんだって、一時間おきくらいに電話してくるの」
「え……」
「葉璃、日曜の朝に帰ってきてから死んだように寝てたじゃない? セナさん、家に来るってしつこかったけど、葉璃起こしちゃ可哀想だからそれは遠慮してもらったの。セナさんには葉璃は寝てるとだけ伝えといたけど、起きたのなら早く連絡してあげてよ」


 ……そう言われても、俺なりに物凄い覚悟を決めてあの家から出てきたのに、軽々しく考えを変えるなんて出来ないよ。

 痛む体を引き摺って、早朝の電車内で知らないオヤジに話し掛けられて鬱陶しい思いをしながら、電車とバスを乗り継いでやっとの思いで帰ってきた事が無駄になる。

 想いを消さなきゃっていう決意が、ポロポロと崩れてしまう。


「いやぁ……しない」
「なんでよ、何かあったの? このままじゃ私ずっとセナさんから問い詰められちゃうじゃん」
「そっか……そうだよね。どうしよ……」


 俺と連絡が取れないからって春香に迷惑をかけ続けるわけにもいかないし、どうしたらいいんだろ。

 俺は一回だけのつもりで聖南とエッチしたのに、聖南は足りなかったのかな。

 あの美女達の話しぶりだと、一回したら終わりって聞こえたのに、何回も呼ばれるとか、そういうパターンもあるんだろうか。


「とにかく、何でもいいからセナさんに連絡しなって! 何があったか知らないけど、うまくいくようにしなよ。葉璃はいっつも自分を犠牲にし過ぎ」
「そんな事ないけど……」
「嫌な事頼まれても、嫌だなって思ってるくせに安請け合いしたり、何か悪い事が起きたらぜーんぶ自分のせいにしてるでしょ。恭也くんも言ってたよ? 葉璃は何もかも自分のせいにして、背負い込んで、自分だけがバチ被ればいいと思ってるって」
「何でそこで恭也が出てくるの……」
「葉璃のこと親友だと思ってるんだよ。葉璃が高校入って出来た友達って恭也くんだけでしょ? 今日お見舞いに来てくれた時、そう言ってたよ」
「……そうなんだ」
「あんたの根暗なとこ受け入れてくれてるの、セナさんと恭也くんくらいじゃないの? なんで自分を分かってくれてる貴重な人を大切に出来ないの? 意味分かんない」


 起き抜けに耳の痛い話を矢継ぎ早に聞かされて、俺は縮こまるしかなかった。



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