必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 頭の回転が早くないからと言う恭也は、勉強もめちゃくちゃ出来るし、普段ぬぼーっとしてるから最初は驚いたけど運動神経も抜群だ。

 彼がそれほどまで気にしてしまい、内気な性格になってしまう、何か引き金となるきっかけがあったのかもしれない。

 そんな中、俺がぐるぐると考え込んでる事に気付いて、恭也はきっとこうして話をするのも勇気を出してくれてるに違いなかった。

 喋るのが苦手で、普段はほとんど単語で会話してくる恭也が、一生懸命思いを伝えてくれた事にぐっときた。

 でも、一人で抱え込むにはツラ過ぎる聖南との事を、話していいものか。

 特殊過ぎる関係に加え、相手があの聖南だ。

 信じてもらえるのかすら危ういし、もし話してみて、男同士なんて気持ち悪いと恭也に言われたら、俺はきっともう友達なんて二度と作れない。


「……お願い、葉璃。 葉璃を悩ませてる事が、どんな事でも、受け止めてあげるから、話して」
「恭也……」


 不安な俺の心を読んだみたいに、優しく諭してくれる、この恭也になら話してみようかなと思った。

 春香にも「大切に思ってくれてる人を大事にしないなんて」とお説教されてしまったばっかりだから、もう……閉じこもって居られない。

 殻を破ってみるチャンスかもしれない……よな。

 そこで俺は、一から十まで、ぜんぶ、説明した。

 春香の影武者になった経緯から、聖南とエッチしてから連絡をやめていることまで。

 ジッと黙って聞いていた恭也は相変わらずの無表情で、前髪が長くてあんまり顔は見えないけど、真剣に耳を傾けてくれてるのは分かった。

 話し終えたところで一度うん、と頷いた恭也は、俺と自分の分のドリンクを注いで戻ってきて、それから。


「……葉璃、ちょっと、トイレ付いてきて」


 と言うと、俺を連れてトイレの個室へと入った。

 何なんだと戸惑う俺をよそに、狭い個室に男子高校生が二人入ってしまうと、ほとんど密着する状態になる。


「ちょっ……なんで個室? どした……わっ」


 至近距離で並んで立つと、やはり恭也は俺より十センチ以上は背が高そうだ、なんて思ってると、突然カッターシャツのボタンを全開にされた。

 どんなマジックを使ったんだってくらい、それは一瞬だった。


「すごいね……これ。 痛かったでしょ……」


 晒された俺の体には、至るところに聖南が残した跡が付きまくってて、こんなもの見せたくないとカッターシャツを慌てて閉じる。


「恭也っ、物好き過ぎ!」
「だって……見たかったから……」


 まじまじと聖南の痕を見てくる恭也に、パンケーキ冷めちゃう、と俺はシャツのボタンを急いで留めてそそくさと席に戻った。

 対して、戻ってきた恭也はいつも通り平然としていて、友達にあんな恥ずかしい情事の痕を見られた俺だけがドギマギする羽目になった。


「セナさんは、葉璃のこと、大好きなんでしょ? 葉璃も、好き?」


 コーヒーを飲みながら、恭也がまるで普通の恋バナをしているかのようなトーンで聞いてくる。

 俺はまだ色んな意味で動悸が治まらないのに、こんなに何事もなかったように態度に出ないなんて、恭也は本当に何者なんだ。


「……うん。 好き……だと、思う。 でも怖いんだ。 好きだって言うの」


 すでに俺の体を含むすべてを曝け出してしまい、それについて何の否定もしてこなかった恭也を全面的に信頼した俺は、無意識にそう心情を吐露していた。

 自分でもビックリするくらい、サラッと言ってしまってた。


「……何で?」
「……捨てられたらどうしよって。 俺なんか、ちょっと女顔してるくらいの普通の男だし、聖南の周りの女の人達には到底敵わないから、いつポイ捨てされるか分かんないじゃん……」
「何で、捨てられる前提、なの? セナさんが、そう言ったの?」
「言うわけないよ、そんな事。 それどころか、その反対みたいな事、たくさん言ってくれてた」
「じゃあ……葉璃が、いけないね」
「うっ」


 自分でも分かってたし、身近な存在である春香には「よくないこと」だと言われ、さらに第三者の恭也にズバッと言われると、さすがにこたえた。

 ショックを隠しきれない俺に、恭也はさらに続ける。


「葉璃は、卑屈っぽいところもあるから、そう思い込んでるだけ、なんじゃないかな? セナさんに相応しくないから、捨てられるって」
「う、うん……そう……」
「じゃあ、葉璃が、相応しくなるように、なればいいんじゃない?」
「……っどうやって……!」


 ズバズバと、こうもハッキリ的確に指摘されては、俺の心が保たない…と思う反面、こんなに俺の事を分かってるなんて、マジですごいと感動を覚えた。

 恭也の皿のパンケーキはいつの間にか無くなっていて、先に食べ始めたはずの俺のは半分以上残っている。

 食べながらもしっかり聞いてくれてて、話してた俺は必死過ぎてそれが疎かになってたみたいだ。



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