必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
95 / 541
20❥

20❥4




 生きる事を忘れていた十日の間に、体がだるさを感じやすくなってしまっていたため、聖南は再度体力作りから始めなければならなかった。

 葉璃達のデビュー曲にという話は一旦置いておき、あの曲を仕上げる事に集中しようと昼夜働こうとしたのだが体がついてこなかったのである。

 入院でなまってしまっていた体力を完璧に元に戻したはずが、さらに前よりひどい状態でジムに行くと、専属トレーナーからも何事ですか!と驚かれてしまった。

 食事も睡眠もロクに取れていなかったせいだ。


「俺も行ったり来たりだ。 情けねー……」


 これでは葉璃に偉そうな事は言えない。

 葉璃が変わり始めているなら、聖南も変わらなくてはならない。

 大人としての余裕など、見せ掛けだった。

 本当の聖南はもっと弱くて脆く、子どもをそのまま大きくしたような人間だ。

 メッセージの返事が遅いだの、電話に出てくれないだの、離れているからと言って小さな事で葉璃を問い詰めて困らせていた辺り、非常に心も狭い。

 そんな自分に気付けたのも葉璃を好きになってからで、葉璃の気持ちが手に取るように分かるのも自身の過去のおかげである。

 色々と考えを巡らせる日々だったが、結局のところ二人は出会うべくして出会い、結ばれるのが必然なような気がしてならない。

 他の誰でもなく、葉璃だから。

 葉璃のためなら、いくらだって変われる。 そして、強くなれる。

 強くならなければ、愛する葉璃を守ってあげられない。

 今以上に聖南がもっともっと高みへと上がれば、葉璃が殻に閉じこもらなくても良い環境が作れる。

 そんな目標も出来た。

 殻を破った葉璃を導くのは自分しか居ないと信じて、答えが出るまで何ヶ月でも何年でも無心で待っていよう。

 どんなきっかけで前を向く気になったのか、殻を破ろうとする葉璃の決意は如何程か。

 恐らく答えの決まっているデビューの話が動き始めれば、すべてが見えてくるだろう。

 聖南にはもう、葉璃しか居ない。

 葉璃しか要らないのだ。





 何度も折れそうになる心が、ようやく聖南の中で一つの眩い光を見出した。



感想 3

あなたにおすすめの小説

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

元アイドルは現役アイドルに愛される

BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。 罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。 ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。 メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。 『奏多、会いたかった』 『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』 やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

【完結】優しい嘘と優しい涙

Lillyx48
BL
同期の仲良い3人。 ゆっくり進んでいく関係と壊れない関係。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。