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しおりを挟む生きる事を忘れていた十日の間に、体がだるさを感じやすくなってしまっていたため、聖南は再度体力作りから始めなければならなかった。
葉璃達のデビュー曲にという話は一旦置いておき、あの曲を仕上げる事に集中しようと昼夜働こうとしたのだが体がついてこなかったのである。
入院でなまってしまっていた体力を完璧に元に戻したはずが、さらに前よりひどい状態でジムに行くと、専属トレーナーからも何事ですか!と驚かれてしまった。
食事も睡眠もロクに取れていなかったせいだ。
「俺も行ったり来たりだ。 情けねー……」
これでは葉璃に偉そうな事は言えない。
葉璃が変わり始めているなら、聖南も変わらなくてはならない。
大人としての余裕など、見せ掛けだった。
本当の聖南はもっと弱くて脆く、子どもをそのまま大きくしたような人間だ。
メッセージの返事が遅いだの、電話に出てくれないだの、離れているからと言って小さな事で葉璃を問い詰めて困らせていた辺り、非常に心も狭い。
そんな自分に気付けたのも葉璃を好きになってからで、葉璃の気持ちが手に取るように分かるのも自身の過去のおかげである。
色々と考えを巡らせる日々だったが、結局のところ二人は出会うべくして出会い、結ばれるのが必然なような気がしてならない。
他の誰でもなく、葉璃だから。
葉璃のためなら、いくらだって変われる。 そして、強くなれる。
強くならなければ、愛する葉璃を守ってあげられない。
今以上に聖南がもっともっと高みへと上がれば、葉璃が殻に閉じこもらなくても良い環境が作れる。
そんな目標も出来た。
殻を破った葉璃を導くのは自分しか居ないと信じて、答えが出るまで何ヶ月でも何年でも無心で待っていよう。
どんなきっかけで前を向く気になったのか、殻を破ろうとする葉璃の決意は如何程か。
恐らく答えの決まっているデビューの話が動き始めれば、すべてが見えてくるだろう。
聖南にはもう、葉璃しか居ない。
葉璃しか要らないのだ。
何度も折れそうになる心が、ようやく聖南の中で一つの眩い光を見出した。
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