必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
131 / 541
26❥

26❥4




 程なく映画が始まり、起承転結のしっかりとした面白可笑しい、そして最後はホロッとくる実に微笑ましい洋画を字幕版で観賞し、近頃忙しかった聖南ものんびりと何も考えずに楽しめた。


「面白かったー!」
「ちょっと昔の映画って、味があっていいね」


 二人が伸びをしながらそう言い合っているのを、聖南は何とも穏やかに見守る事が出来ている。

 トイレへ行くという葉璃に付き添い、出入り口で門番のように待つ背の高い聖南と恭也を、周囲は物珍しそうに見やっていた。

 時折交じる黄色い声も、長身の男性が二人揃うと圧巻らしく、どうやら暖簾のような前髪をした恭也の存在のおかげか、簡単に変装をした聖南の存在は今の所はまだバレてはいないようだ。


「あの……すみません。 今日、ご一緒してしまって。 セナさんが来るって、葉璃から聞いて、俺は遠慮したいって、言ったんですけど……」


 前を向いたまま、努めて小声で恭也が申し訳なさそうに謝ってきたが、聖南はマスク越しの目元だけで笑いかけてやる。

 それを言われてしまうと、葉璃との通話で器量の狭さを発揮した事を思い出して苦笑を浮かべる事しか出来なかった。

 案じていた「友人」が葉璃にも居て、その存在がまさかユニットの相方だとは二人ともが想像だにしていなかったに違いない。

 恭也に嫉妬などしていては、葉璃は悲しむだろう。

 ナンパから守っていたり葉璃の好みを熟知していた事からも、恭也が葉璃を大事に思っているのは聖南にも伝わった。

 冷静になってみると、聖南にとっては何よりも可愛い存在である葉璃を、皆が皆恋愛対象として見るはずがない。

 近しい人物で危険なのはとりあえず一名だけだ。


「あぁ、構わねぇよ。 元々二人の約束に俺が後から割り込んだんだから。 大丈夫、謝るな」
「せっかくのデートなのに、お邪魔してしまいましたね」
「葉璃が譲らなかったんだろ? 恭也との約束が先だって」
「はい……。 前は、そんな事を言える性格では、無かったから……驚きました」
「だよなぁ。 俺も葉璃の変化にはたまに付いていけねぇ、ほんとに同じ人か?って思う事あるよ。 今のが多分、ほんとの葉璃なんだよな。 クラスにも馴染めてるって聞いて俺は嬉しいけど」
「あ、はい。 そうなんです。 葉璃はセナさんと出会って、大きく変わり始めました。 俺もたくさん、良い影響貰ってます。 可愛くて真っ直ぐな、本来の葉璃を引き出してくれたのは、全部、セナさんです。 セナさんのおかげです」


 恭也の言葉は特に、重みがあった。

 葉璃の卑屈さに気付き何とかしてあげたかっただろうに、恭也のこの様子ではそれは無理だったらしい。

 どうしていいか分からない、何とかしてあげたいという気持ちだけが膨らむもどかしさの中、葉璃は聖南と出会い、自分と向き合えるようになって、今がある。

 聖南のおかげだと言われてもいまいちピンとはこなかったが、恭也がゆっくり紡いだ言葉は、葉璃の告白の次に嬉しかったかもしれない。



感想 3

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

魔性の男

久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。