143 / 541
27♡
27♡8
「ん………」
枕にしていた自分の腕の痺れで目を覚した俺は、聖南の番組を見た後ソファでうたた寝してたらしい。
お腹が空いて起き出して、午後十時を回った時計を見て慌ててスマホを確認しても、聖南からはまだ連絡が無かった。
何時に帰るか分からない聖南を待てるような空腹加減じゃなくて、我慢出来なかった俺は何か買いに行こっと呟いて玄関を出た。
コンシェルジュに外出の旨を伝えて、街に繰り出す。
「……夜出歩くの久々かも……」
最近は車移動が多かったし、公共機関使うにしても日中だったから、こんなに夜の街が明るいなんて物珍しかった。
コンビニもいいけど、お弁当屋さん、ないのかなぁ。
この時間だと、聖南を待ってるより開いてるお弁当屋さんを探す方が大変なのに、俺はそんな事知らなかったから、コンビニを何軒も素通りして街をブラつく。
ちょっと歩いていると、お弁当屋さんを探すどころか何だか見覚えのある所をぐるぐるしてる気がして一回立ち止まる。
聖南のマンションすら分からなくなったかも……と辺りをキョロキョロ見回していると、突然肩を叩かれて思わず飛び上がった。
「───ッッ!?!?」
「あ、やっぱり」
肩を叩いてきたのは、夜なのにサングラスを掛けている背の高い変な男だった。
やっぱり、などと知り合いを装うナンパも今まででいくつかあったから、ナンパに昼も夜も関係ないんだってこの時初めて知って逃げ出そうとしたんだけど。
「そんな全力でビビらなくてもいいじゃん。 ほら、俺。 事務所の廊下ですれ違っただろ?」
サングラスをずらしてチラッとだけ顔を晒すと、苦手なキツネ目が現れて息を呑んだ。
「…………あっ!! 嫌な人!!」
「シーッ。 ちょっとこっち」
聖南に教えてもらったのに、この人の名前を忘れてしまったから何と叫べばいいか分からず、つい嫌な人って言っちゃった。
口元を軽く塞がれて、辺りから見えない物影に連れ込まれる。
「ちょっ、離してください! 大声出しますよ!」
俺が逃げないようになのか腕を掴まれてて、少々暴れても、この人は聖南くらい背が高くてがたいがいいから簡単には振りほどけない。
「もう出してるよな、それ。 てか嫌な人って言わなかった? 俺なんかした?」
「あ、あの時……っ、廊下ですれ違った時! ジロジロ見てきてました。 すごく嫌でした! だから嫌な人です!」
「……あはは……! そういう事か。 ごめんな、男と女どっちだろう?と思って見ちゃったんだな」
「それも失礼です! も、もう行っていいですか? 俺お腹空いてるから早くご飯買って帰りたいんですけど」
「え、腹減ってんの? 偶然だなー。 俺も今撮影終わったところでお腹空いてるんだ。 飯行こうぜ、飯!」
「えっ? ……えぇー!?」
最後まで離してくれなかった腕をそのままに、俺は名前も分からないこの人に連れ去られた。
話すのは初めてで、しかも視線を寄越されたら「ヒッ」てなりそうなほど苦手なキツい目をした人とご飯だなんて、考えただけで嫌なんだけど……。
腕を引かれてる今思ったのは、この人は同じ事務所だから先輩にあたるんだし、ここで断ったら妙な波風が立ちやしないかって事。
色んな事を瞬時に考えた。
デビューを控えた俺と恭也や、この人にとっても事務所の先輩である聖南の立場を鑑みると失礼な態度は出来ない。
キツネ目の嫌な人の強引さに面食らってた俺は、久々にネガティブを発揮していた。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
魔性の男
久野字
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。
最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。
そう、思っていた。
元アイドルは現役アイドルに愛される
陽
BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。
罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。
ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。
メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。
『奏多、会いたかった』
『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』
やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【R18】兄弟の時間【BL】
菊
BL
色々あってニートになった僕、斑鳩 鷹は当たり前だけど両親にめっちゃ将来を心配されまさかの離島暮らしを提案されてしまう。
待ってくれよ! アマゾンが当日配送されないとこなんて無理だし、アニメイトがない世界に住めるか!
斯くて僕は両親が改心すればと家出を決意したが行く宛はなく、行きついたさきはそいつの所だった。
「じゃぁ結婚しましょうか」
眼鏡の奥の琥珀の瞳が輝いて、思わず頷きそうになったけど僕はぐっと堪えた。
そんな僕を見て、そいつは優しく笑うと机に置かれた手を取って、また同じ言葉を言った。
「結婚しましょう、兄さん」
R18描写には※が付いてます。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。