必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 急に大声を出されて驚いて上体を起こそうとすると、覆い被さってきた聖南の肩口におでこをぶつけた。

 とてもじゃないけど、「痛いよ」などと軽口を叩ける状態ではない。

 獣化した聖南にはきっともう、何を言っても届かないと思う。 そして俺も、話せる状況じゃなくなった。

 自分で動けとしつこく言われてたはずなのに、俺を押し倒した聖南は休み無く腰を打ち付けてくる。

 そんな聖南の背中にしがみついて、ギチギチと内壁を擦られる快感に俺は喉を枯らした。


「あっ……あっ……あっ……や、あっ……も、もう……だめ、っ……」
「触んないでイケるんじゃね?」
「んぁ……っ、んっ……あっ……んぁっ……」


 あまりに無慈悲な早い打ち付けに、俺は自分のものを触る余裕すらなくて、聖南の動きに合わせる事で必死だった。

 聖南のものをより深く感じてみようと自ら腰を浮かせると、力んでしまった穴をキュッと窄める事になってしまって。

 眼鏡の奥で二重の瞳が細められた瞬間、グッ、グッ、と二度、一際強く中を擦られた。

 ピンポイントなその刺激が背中から爪先までビリビリと走り抜けて、俺も聖南とほぼ同時に果てて胸元まで精液を飛ばしてしまう。


「……はぁ……はぁ……んっ」


 凄かった…と息を整えていると、聖南は俺の酸素を奪い取りにきたかのように唇を合わせてきた。


「んっ……くるし……っ」
「……はぁ…葉璃にお仕置きはまだ無理だな。  俺が」
「……充分、お仕置きだったよ……」


 ほっぺたをすり寄せて甘えてくる大きな獣が、吐息を漏らしながら俺の体をぎゅっと抱き締める。

 こんなに恥ずかしくて戸惑った事はないかもしれない。

 無知な俺には刺激が強過ぎて、何をどうしたらいいかも分からなくて泣けてきた。

 聖南の嫉妬が愛情によるものだと分かった上で全部を受け止めたかったけど、俺にはまだまだ無理そうだ。


「俺が眼鏡掛けた時点で葉璃にとっては違うだろ?  全然目合わせてくんないし」


 それは…と言葉を濁す。

 男としてカッコいいと尊敬し、実際外見までパーフェクトなんだから、ドキドキするに決まってる。

 しかも眼鏡かけてるんだよ、聖南。 エッチしてる最中に直視できるはずないじゃん。


「じゃ次やっか」
「え!?  まだするんですか!」
「当たり前だろ。  いっそこのままやっちゃうか。  抜きたくねぇ」
「………………」


 まだ息が整わない俺は、瞬きも忘れて聖南の苦笑を見詰める。

 でも出した後だとゴムずれっからなぁ、とぼやいた聖南は渋々と俺から離れて、いつものように手慣れた手付きでコンドームを変え、先端を押し当ててきた。


「聖南さん……」
「ん?」
「それすごく慣れてますよね……」


 この素早い動作は、聖南の経験値をまざまざと見せ付けられてるみたいでちょっとだけ胸がチクっとする。

 聖南の中では普通の事らしくて、俺の言わんとする事が分からないと首を傾げた。


「それ?」
「あ、いや……何でもないです」


 聞きたくない事を聞かされたら嫌だから、自分から言っといて知らん顔をしたけど、口を閉ざした俺を聖南は中に入ってきながら「なんだよ」と不機嫌そうに見下ろしてくる。

 墓穴掘っちゃったかな……。


「何、慣れてるって?」
「んっ……その……ゴムつけるの」
「あ、あぁ、それって ″それ″ か。  まぁ人並みに経験してる事だからな。  葉璃は気にしなくていい」


 明らかに少しだけ動揺した聖南は、それを悟られまいとしてるみたいだけど、一番嘘がつけないアレがピクッと俺の中で動いた事で余計に胸がざわつく。


「人並み?  聖南さんが人並み?」
「何だよ突っかかってくるなぁ。  今頃ヤキモチ?」
「今頃じゃないです。  最初から……慣れてるなぁって、ずっと思ってました」
「………………」


 正直に言ってしまうと、聖南が口元を押さえて固まってしまった。

 数秒の沈黙の後、ジーッと俺を見詰めて笑顔を零す。


「……これか。  ……ヤキモチ焼かれんのっていいな」
「は!?」
「葉璃がさ、ヤキモチ焼かれんの嫌な気はしないって言ってたじゃん?  はぁ?って思ったけど……気持ちよく分かった」
「えぇ……」
「不安とか卑屈な思いとかナシで、今のって単純にヤキモチだろ?  なっ?」


 期待のこもったキラキラした瞳を向けて、そんな事を言わないでほしい。

 嫌だなって思ったからそう言ってるのに、なんでこんなに喜んでるんだろう。


「…………はい」


 俺は頷きながら、「あ、そっか…」とさっきの怒り心頭だった聖南を思い出す。

 これが聖南の気持ちだったんだ。

 聖南の場合は、俺があまりに不安を煽るような事を自覚がないまま知らない間にやっちゃってたから、今の俺よりも当然イライラしたはずだ。

 なんでこんな事でそんなに怒るの!って言い返してやりたいと思ってたけど、それは違った。

 心配と不安が入り混じり、例えようのない怒りが聖南の中で止めどなく湧いてたんだ。

 ヤキモチ焼かれるのは嫌じゃない。

 けど、焼く方はすごく嫌な気分だ。


「…………か、かわいーっ♡」


 考えなしに行動して、聖南に悪い事したなぁと思った矢先、甘えた声で感極まる恋人は予告無く一気に奥を貫いてきた。


「うぅっ……! んんん……っ痛っ……聖南さん、痛い……っ!」


 グリグリっと奥を擦られ、おまけに大興奮の聖南は俺の背骨が折れてしまいそうなくらい強く抱き締めてきた。

 悪い事したなぁっていうの、前言撤回したい、かも……。


「はぁ……もう……最高。  葉璃、大好き」
「…………! お、俺も……大好きです」


 照れながらそう言うと、獣は眼鏡の奥でとても嬉しそうに微笑んだ。 その笑みは、貫かれて呼吸もままならない俺が見惚れるほど、凄まじく綺麗だった。

 欲望のままにガツガツと腰を振ってる肉食獣のように暴れん坊な恋人は、三回目はコンドームを使わなかった。

 俺がヤキモチ焼いたから、気にするなっていう意思表示なのかもしれない。

 たまに小さな子どものようにタガが外れる聖南の広い背中をかき抱いて、俺ってば物凄く愛されてるなぁとしみじみ実感していた。



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