必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 やって来た恭也は、ブラックスーツに白のカッターシャツ、紺に近い落ち着いた青色のネクタイでビシッと決めていた。

 学校指定のブレザーとはまた違った出で立ちは、恭也も俺よりずっと背が高いからよく似合っててめちゃめちゃ羨ましい。


「ごめんね、待った?」
「全然っ、大丈夫」


 いつも鬱陶しい暖簾前髪は後ろにゆるめに撫で付けてあるから、今日も強面イケメンがオープン状態だ。

 そこへ林さんが息を切らしながら走り寄って来て、何故か俺の隣に居る俳優の荻蔵さんを見て盛大にビックリして、一歩後退った。


「ハルくん、ごめんね、遅くなりました!  荻蔵さんお疲れさまです!  来たばかりで申し訳無いんですけど、自分はまだ仕事あるんで事務所戻りますね。  壇上での君達の紹介は代理で成田さんが担当するから」
「分かりました。  林さん、送ってくれて、ありがとうございます。  帰りは迎えが来るので、心配いらないです」
「了解!  それじゃ、頑張ってね!」


 林さんは来た時と同じくらい急いで車へと戻って行った。

 あんまり話の内容が入ってこなかったけど……壇上での紹介っていう言葉が引っかかる。

 いやいや、そんなの聞き間違いだよね。

 デビューが決まったばかりの俺達を、こんなに大勢の有名人の前で紹介するなんて恐れ多いよ。


「へぇ、こいつが相方?」


 荻蔵さんは、俺との初対面だったあの時みたいに上から下まで恭也を観察すると、納得したようにニヤリと笑った。


「そうです。  恭也、こちら俳優の荻蔵斗真さん……って、俺より恭也の方が知ってるよね」


 また「こいつ」とか言ってる荻蔵さんの足を踏み付けたい衝動に駆られたけど、綺麗な革靴が目に入ってグッと我慢した。

 それこそ昨日、俺にこいつって言ってしまって聖南にブチ切れられてたのに、この人、学ばないなぁ。

 まぁそんな事で恭也はキレるタイプじゃないけど、言わない方がいい言葉だと思うのに。


「あ……うん。  荻蔵さん、お疲れさまです」


 恭也が無表情でペコっと頭を下げる。 感情が分かりにくいけど、事務所の先輩である荻蔵さんの迫力に圧倒されてるのが何となく伝わってきた。


「どうも。  なんかさ、ハルの周りって顔のいいやつしか集まんないの?」
「何ですか、それ」
「恭也、だっけ?  恭也もすげぇいい面してんじゃん。  ちと仏頂面だけど。  ついでに俺もイケてるしな。  あとほら、昨日居たCROWNのセナさん?  セナさんなんか、非の打ち所ねぇし」
「……あ、荻蔵さん、聖南さんの後輩になるんでしたっけ?」


 非の打ち所がないって言葉に内心「うんうん、俺もそう思う」って相槌を打ちながら、荻蔵さんが聖南を「セナさん」と呼んでる事に気付いて顔を上げる。

 荻蔵さんを見上げ、恭也に視線を移すと、やっぱりまだ無表情だけど困惑中なのが見てとれた。

 俺と荻蔵さんの接点が見つからなくて戸惑ってるのかもしれない。


「そうそう。  歳は俺のが上なんだけどな。  この世界は芸歴が物言う時もあるからさ~……っと、噂をすれば本人登場だぜ」


 荻蔵さんの視線の先を見ると、アキラさんとケイタさんを両脇に、聖南はさっきまでしてなかったはずのサングラスを掛けてポケットに手を突っ込み、気だるそうに歩いてきている。

 周囲の視線を一心に集めるCROWNの三人の登場に、辺りの時間が数秒止まった気さえした。

 そのオーラたるや凄まじく、三人ともアイドル衣装とはまた違うフォーマルスタイルだからか、より外見が引き立っている。


「すっげー。  モーゼの十戒見てるみたい」
「……あ、それ……」


 何故か聖南が人混みを歩くと一本道が現れる。

 いつか見た光景と同じ事が目の前で起こっていて、恭也と荻蔵さんに挟まれた俺はボケーッとその不思議な現象を見ていた。

 すると一本道は真っ直ぐ俺の方へ伸びてきて、俺に気付いたアキラさんがまず明るく声を掛けてくれた。


「よぉ、ハル。 元気にしてた?」
「ハル君、こんばんは」
「おい葉璃、さっきから電話鳴らしっぱなんだけどなんで出ねぇの?」


 スタジオで挨拶して以来のケイタさんにも優しく微笑まれて安心していたところに、サングラスを外しながらジロッと俺を見てきた聖南はちょっと怒っていた。




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