必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
156 / 541
29♡

29♡6

しおりを挟む



 やって来た恭也は、ブラックスーツに白のカッターシャツ、紺に近い落ち着いた青色のネクタイでビシッと決めていた。

 学校指定のブレザーとはまた違った出で立ちは、恭也も俺よりずっと背が高いからよく似合っててめちゃめちゃ羨ましい。


「ごめんね、待った?」
「全然っ、大丈夫」


 いつも鬱陶しい暖簾前髪は後ろにゆるめに撫で付けてあるから、今日も強面イケメンがオープン状態だ。

 そこへ林さんが息を切らしながら走り寄って来て、何故か俺の隣に居る俳優の荻蔵さんを見て盛大にビックリして、一歩後退った。


「ハルくん、ごめんね、遅くなりました!  荻蔵さんお疲れさまです!  来たばかりで申し訳無いんですけど、自分はまだ仕事あるんで事務所戻りますね。  壇上での君達の紹介は代理で成田さんが担当するから」
「分かりました。  林さん、送ってくれて、ありがとうございます。  帰りは迎えが来るので、心配いらないです」
「了解!  それじゃ、頑張ってね!」


 林さんは来た時と同じくらい急いで車へと戻って行った。

 あんまり話の内容が入ってこなかったけど……壇上での紹介っていう言葉が引っかかる。

 いやいや、そんなの聞き間違いだよね。

 デビューが決まったばかりの俺達を、こんなに大勢の有名人の前で紹介するなんて恐れ多いよ。


「へぇ、こいつが相方?」


 荻蔵さんは、俺との初対面だったあの時みたいに上から下まで恭也を観察すると、納得したようにニヤリと笑った。


「そうです。  恭也、こちら俳優の荻蔵斗真さん……って、俺より恭也の方が知ってるよね」


 また「こいつ」とか言ってる荻蔵さんの足を踏み付けたい衝動に駆られたけど、綺麗な革靴が目に入ってグッと我慢した。

 それこそ昨日、俺にこいつって言ってしまって聖南にブチ切れられてたのに、この人、学ばないなぁ。

 まぁそんな事で恭也はキレるタイプじゃないけど、言わない方がいい言葉だと思うのに。


「あ……うん。  荻蔵さん、お疲れさまです」


 恭也が無表情でペコっと頭を下げる。 感情が分かりにくいけど、事務所の先輩である荻蔵さんの迫力に圧倒されてるのが何となく伝わってきた。


「どうも。  なんかさ、ハルの周りって顔のいいやつしか集まんないの?」
「何ですか、それ」
「恭也、だっけ?  恭也もすげぇいい面してんじゃん。  ちと仏頂面だけど。  ついでに俺もイケてるしな。  あとほら、昨日居たCROWNのセナさん?  セナさんなんか、非の打ち所ねぇし」
「……あ、荻蔵さん、聖南さんの後輩になるんでしたっけ?」


 非の打ち所がないって言葉に内心「うんうん、俺もそう思う」って相槌を打ちながら、荻蔵さんが聖南を「セナさん」と呼んでる事に気付いて顔を上げる。

 荻蔵さんを見上げ、恭也に視線を移すと、やっぱりまだ無表情だけど困惑中なのが見てとれた。

 俺と荻蔵さんの接点が見つからなくて戸惑ってるのかもしれない。


「そうそう。  歳は俺のが上なんだけどな。  この世界は芸歴が物言う時もあるからさ~……っと、噂をすれば本人登場だぜ」


 荻蔵さんの視線の先を見ると、アキラさんとケイタさんを両脇に、聖南はさっきまでしてなかったはずのサングラスを掛けてポケットに手を突っ込み、気だるそうに歩いてきている。

 周囲の視線を一心に集めるCROWNの三人の登場に、辺りの時間が数秒止まった気さえした。

 そのオーラたるや凄まじく、三人ともアイドル衣装とはまた違うフォーマルスタイルだからか、より外見が引き立っている。


「すっげー。  モーゼの十戒見てるみたい」
「……あ、それ……」


 何故か聖南が人混みを歩くと一本道が現れる。

 いつか見た光景と同じ事が目の前で起こっていて、恭也と荻蔵さんに挟まれた俺はボケーッとその不思議な現象を見ていた。

 すると一本道は真っ直ぐ俺の方へ伸びてきて、俺に気付いたアキラさんがまず明るく声を掛けてくれた。


「よぉ、ハル。 元気にしてた?」
「ハル君、こんばんは」
「おい葉璃、さっきから電話鳴らしっぱなんだけどなんで出ねぇの?」


 スタジオで挨拶して以来のケイタさんにも優しく微笑まれて安心していたところに、サングラスを外しながらジロッと俺を見てきた聖南はちょっと怒っていた。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

【BL】死んだ俺と、吸血鬼の嫌い!

ばつ森⚡️8/22新刊
BL
天涯孤独のソーマ・オルディスは自分にしか見えない【オカシナモノ】に怯える毎日を送っていた。 ある日、シェラント女帝国警察・特殊警務課(通称サーカス)で働く、華やかな青年、ネル・ハミルトンに声をかけられ、【オカシナモノ】が、吸血鬼に噛まれた人間の慣れ果て【悪霊(ベスィ)】であると教えられる。 意地悪なことばかり言ってくるネルのことを嫌いながらも、ネルの体液が、その能力で、自分の原因不明の頭痛を癒せることを知り、行動を共にするうちに、ネルの優しさに気づいたソーマの気持ちは変化してきて…? 吸血鬼とは?ネルの能力の謎、それらが次第に明らかになっていく中、国を巻き込んだ、永きに渡るネルとソーマの因縁の関係が浮かび上がる。二人の運命の恋の結末はいかに?! 【チャラ(見た目)警務官攻×ツンデレ受】 ケンカップル★バディ ※かっこいいネルとかわいいソーマのイラストは、マグさん(https://twitter.com/honnokansoaka)に頂きました! ※いつもと毛色が違うので、どうかな…と思うのですが、試させて下さい。よろしくお願いします!

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

お弁当屋さんの僕と強面のあなた

寺蔵
BL
社会人×18歳。 「汚い子」そう言われ続け、育ってきた水無瀬葉月。 高校を卒業してようやく両親から離れ、 お弁当屋さんで仕事をしながら生活を始める。 そのお店に毎朝お弁当を買いに来る強面の男、陸王遼平と徐々に仲良くなって――。 プリンも食べたこと無い、ドリンクバーにも行った事のない葉月が遼平にひたすら甘やかされる話です(*´∀`*) 地味な子が綺麗にしてもらったり幸せになったりします。

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

処理中です...