必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 聖南の勘違いキスで変な空気になり、怒ってた俺もすっかりその気分じゃなくなった。

 再び走り始めた聖南が、一度腕時計を確認して俺を横目に見る。

 眼鏡姿に弱い俺は、視線を向けられる度にいちいちドキッとしてしまう。


「じゃがいも作戦はともかく、葉璃は頑張ったよ。  意識飛ばす寸前の顔してたけど、よく耐えたな。  偉かった」
「……あ、……はい……。 ありがとうございます」


 いきなり真剣なトーンで改まってそんな事を言うから、いよいよ怒れなくなった。

 怖い顔して俺の挨拶を見守ってた聖南も、俺の緊張が伝わってしまってたのかもしれない。

 いや、まさしく俺の緊張が伝染してるみたいだった。

 壇上から聖南の姿が見えて心強かったんだよ、すごく。

 あぁ、だからか。

 終わってホッとしたところに俺が変な事言っちゃったから、聖南は気が抜けて爆笑してしまったんだな……きっと。


「あの場で大塚からユニットがデビューする事を発表しちまったから、もしかしたら来年の夏を待たずにマスコミに追われる事になるかもしれないけど、それは我慢な」


 信号が青に変わり、再び運転を再開した聖南に今日を境に何かが変わるかもしれない事も教えられて、俺はなるほどと思った。

 こういう時に大先輩がいると、すごく頼りになる。


「……そっか、そうですね。  大塚事務所の年末恒例のパーティーって言ってたから、その情報は知られてるだろうしスパイみたいな人が居てもおかしくないんだ……」
「あはは……っ。 スパイか、まぁそんなとこだな。  それも、いい宣伝になる、くらいに思ってたらいいから」
「はい、分かりました」


 俺の周りが変化するなんて、もはや今に始まった事ではないし、聖南っていう心強い味方もいるからきっと何とかなる。

 相方の恭也も俺を置いてみるみる成長してるから不安は尽きないけど、俺が乗った船はもう動き出してるんだ。

 がんばる。

 今の俺には、その言葉しか浮かばない。

 それよりも、キスの合間に感じた風味が俺は気になっていた。

 飲まないって言ってたお酒の味がしたのに運転しちゃってる聖南を視線も交えて嗜める。


「ところで聖南さん、お酒飲んだでしょ」
「あ?  酒は飲んでねぇよ。  運転あるっつったら、ノンアルビール渡されて付き合いで少し飲んだけど」
「え~ほんとですか?  え~」
「葉璃乗っけるのに酒飲むわけねぇじゃん。飲んだら運転はしねぇ」


 ノンアルコールでもあんなにちゃんとお酒の風味が残るんだ。

 そもそもアルコールを飲んだ事がない俺はその辺がよく分からない。

 そういえば俺がノンアルコールカクテルを飲んだ日、聖南はそれをズバリ言い当てたっけ……甘いカクテルの味っぽいって。


「てか、俺そんな強くねぇから飲むとすぐバレんだよ。  あんま酒自体好きじゃねぇしな」
「えっ!? そうなんですか!  意外です」


 俺の中で、何故だか聖南は酒豪のイメージだった。

 過去のたくさんの浮名なんて特に、そういうのってお酒が強いからこそ飲んだ勢いで関係を持ってしまうんだろうと思ってた。

 ホテルのお洒落なバーとかで、聖南と綺麗な女の人がグラス片手に……みたいな、ほんとに勝手な想像。

 お酒が強くなくて、あんまり好きでもないなら、自然と大人の飲む物は限られてくる。


「聖南さん、だからコーヒーが好きなんですね」
「あぁ、そう言われてみればそうだな。  どうしても酒飲むってなったらカルーアミルク好き」
「…………?」


 カルーアミルク?

 お酒の名前を言われても分からない俺は首を傾げながらスマホを取り出し、カルーアミルクっていうのを調べてみた。

 聖南が好きなものなら知っておきたいって思ったから、だったんだけど……。


「せ、聖南さん、……可愛いの好きなんですね。  カルーアミルクは女性に大人気ってありますよ。  へぇ~コーヒーリキュールかぁ」
「あっ、調べるなよ!  まだ知らねぇだろと思ってぶっちゃけたのに!」
「いいじゃないですかっ。  聖南さんが好きなものは何だって知りたいです。  いずれバレる事ですよ!」
「さっきまでうさぎみたいに震えてたのにこのやろー。  ……デビューしたらそのキャラウケそうだな」


 最後の聖南の言葉は俺には届かなかった。

 聖南はお酒が強くない。 しかもどうしても飲まなきゃって時は女性が好むカルーアミルクを嗜む。

 新たな聖南を発見して、ご機嫌な俺がいた。

 一つ一つ、こうして聖南を知れる事が、今の俺にとっては一番の喜びかもしれない。




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