必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
185 / 541
33♡

33♡7




 不埒な王子様スタイルの聖南は、ほとんど辺りを汚す事なく行為を終わらせた。

 俺がはしたなく放ったものは掌で受け止めてくれてすぐにティッシュで拭っていたし、聖南は「中でイきてー」って漏らしてたけどちゃんと外で出してくれたから、俺の体もそれほど汚れず済んでる。

 たぶん俺が聖南にねだってから一時間も経ってないんだけど、俺がツラくないようにって色んな体位で試して(最終的にバックが一番楽だった)、体力の無い俺は力無くソファにくたりと横になっていた。


「中は帰ってから洗ってやるけど……気持ち悪りぃならここのシャワールーム行くか?」


 後始末を全部してくれた聖南が、片膝をついて横になってる俺の髪を撫でた。

 はだけたシャツから覗く鎖骨がいやらしい。

 まったく情事を匂わせない表情が、今の今まで激しく求めてくれてた欲にまみれたそれとのギャップに身悶えそうだ。

 ……ほんとに、王子様みたい。

 優しいその手付きと目前の聖南にうっとりした。


「いえ……今動けないから後でいいです……」


 まだ聖南の先走りが中にあるのは分かってたけど、もうすべて帰ってからでいいやってくらい、下半身が動かせそうになかった。

 脱力してそう言うと、無表情だった聖南がふわりと笑う。

 男に対して言うのはおかしいのかもしれない。 でも聖南の笑顔は「綺麗」という言葉がぴったりだった。


「そか、じゃあとりあえず俺の楽屋行こ。  葉璃は嫌かもしんねぇけどこれ着替えないと」
「……私服がそれだったらいいのに」
「あはは……! 無茶言うなよ」


 聖南の言う通り、俺はちょっとコスプレ趣味があるのかもしれない。

 どんな格好でもかっこよく見えるんだけど、普段とちょっと違う装いなだけでクラクラしてしまう。

 それというのも、ずっと燻っていた佐々木さんとの事が解決した解放感と、何も聞かずにぜんぶ俺に任せてくれた聖南の愛を感じた……っていうのが根底にあって、それが俺にそこはかとない余裕を持たせてくれた。

 俺を信じてくれて、理解してくれて、背中を押してくれて、しかも困った時はいつも助けてくれる、そんな聖南を改めて大好きだって自覚するのも当然だった。

 俺を軽々とお姫様抱っこしてCROWNの楽屋へ行く道中、行き交うスタッフさんから俺の事で声を掛けられても、「事務所の後輩。 貧血っぽいから休ませるわ」ってうまく誤魔化してくれていた。


「あれっ?  ハル君?  どうしたんだよ」


 楽屋へと入るなり、帰る寸前だったらしいケイタさんがグッタリな俺の姿を見て駆け寄ってきた。

 CROWNの楽屋はさっきのこじんまりとした殺風景な楽屋とは雲泥の差で、広々とした座敷があったから、聖南はそこにゆっくり俺を寝かせてくれた。


「………………セナ、まさかお前……」


 ペットボトルのお茶を飲む手が止まったまま、アキラさんが聖南を睨む。

 聖南の衣装が崩れているのを見て、さらに目を細めた。


「えっ、まさかって何?」
「はぁぁ……。  ケイタ見ろ、獣がいるぞ、獣が」
「獣?  獣って……なっ、えっ!?  セナ、マジでぇぇ!?」
「なんだよ獣って。  人聞き悪りぃな」


 アキラさんは溜め息を吐き、ケイタさんは驚いて鞄を落とし、それでも聖南は飄々と着替えを始めて、横たわっていた俺はその三人三様な姿を見て可笑しくなった。

 聖南は何を言われてもこたえない。 二人が呆れたと言わんばかりにたっぷりと聖南を窘めても、どこ吹く風だった。

 胸のドキドキも下半身の感覚もいくらかマシになってきた俺は、ほんとに仲良しな事が窺えるCROWNのやり取りに耳を澄ます。

 三人はまるで兄弟みたいに言い合っていて可笑しくて、俺は贅沢にも特等席でトップアイドル達の会話を聞いて笑っていた。




感想 3

あなたにおすすめの小説

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友
BL
 こぼれ話し、完結です。  ありがとうございました!  母子家庭で育った璃空(りく)は、年の離れた弟の面倒も見る、しっかり者。  でも、恋人の優斗(ゆうと)の前では、甘えん坊になってしまう。でも、いつまでもこんな幸せな日は続かないと、いつか終わる日が来ると、いつも心の片隅で覚悟はしていた。  だがいざ失ってみると、その辛さ、哀しみは想像を絶するもので……

世界征服へと至る愛

鳴海
BL
忘れ物を取りに教室に戻った西島は、そこで学校一のイケメンである石神が、クラスで一番カワイイと噂されている女子生徒に告白されている場面にでくわしてしまった。 そして、全然関係ないはずなのに、なぜだか巻き込まれてしまうことに。 平凡がイケメンにメロメロにさせられる話。 軽いお話です♪

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

魔性の男

makase
BL
俺はとにかくモテる。学生の頃から、社会人になった今でも、異性問わずにモテてしまう。 最近、さえない同性の先輩に好意を持たれている。いつものことだろう。いい人だから、傷つけたくはないな。 そう、思っていた。

人気俳優と恋に落ちたら

山吹レイ
BL
 男性アイドルグループ『ムーンシュガー』のメンバーである冬木行理(ふゆき あんり)は、夜のクラブで人気俳優の柏原為純(かしわばら ためずみ)と出会う。  そこで為純からキスをされ、写真を撮られてしまった。  翌日、写真はネットニュースに取り上げられ、為純もなぜか交際を認める発言をしたことから、二人は付き合うふりをすることになり……。  完結しました。  ※誤字脱字の加筆修正が入る場合があります。

悠遠の誓い

angel
BL
幼馴染の正太朗と海瑠(かいる)は高校1年生。 超絶ハーフイケメンの海瑠は初めて出会った幼稚園の頃からずっと平凡な正太朗のことを愛し続けている。 ほのぼの日常から運命に巻き込まれていく二人のラブラブで時にシリアスな日々をお楽しみください。 前作「転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった」を先に読んでいただいたほうがわかりやすいかもしれません。(読まなくても問題なく読んでいただけると思います)