必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
192 / 541
34❥

34❥7




 珍しくCROWNの激励にやってきていた大塚事務所のスタッフ達は、聖南達が衣装を脱ぐと早々に帰って行った。


 「なぜハルくんが居るの?」と帰る間際に不思議そうに問われたが聖南は、


「事務所の後輩だし、俺らの来年のツアーに同行させようと思ってるから見学にな」


などと誰にも相談していない事をサラッと言ってのけて、アキラとケイタ、そして葉璃をひどく驚かせた。


「聖南さん、俺何も聞いてないんですけど」
「俺も」
「俺も」
「だから今言ったじゃん」


 ペットボトルのお茶を飲みながら、葉璃が座っている椅子の隣に腰掛けて華奢な肩に腕を回す。

 二人の前にも関わらず、聖南は葉璃を自分の方へ寄せると大胆にも髪の匂いや首筋を嗅ぎ始めた。


「おいセナ、俺らの事見えてる?」
「いくら二人の事知ってるからって堂々とそんな……!」


 当然ながら、対面位置に掛けている二人の方が動揺している。

 アキラは眉を顰め、ケイタは両手で顔を覆ったが指の隙間から聖南と葉璃をしっかり刮目した。

 聖南はというと、目前の二人と葉璃の動揺などお構いなしと言わんばかりに愛する恋人を嗅ぎ続け、時折音を立てて耳に口付けたりとやりたい放題であった。


「ツアーの同行は葉璃と恭也にとってもいい事だと思うんだよね。  夏にマスコミにデビュー発表すんなら、俺らのツアー最終日にデビュー曲やらせてあげたらいい」
「せ、聖南さん、分かったから離れてください!  話が全然入ってこない!」
「んー。  分かってんよ。  あっ、逃げんなよ」
「ハル、悪いけどちょっと我慢しといて。  とりあえず話聞きたい」


 葉璃はアキラ達の手前逃れようと体を避けてはいるが、それ以上に強い力で引き戻されてまたフンフンと嗅ぎ始めるのでお手上げ状態だった。

 無闇やたらと葉璃にすり寄る聖南は、パフォーマンス終わりで少しテンションがおかしいようだったが、話は出来そうなのでアキラはひとまず着席し直した。

 聖南の葉璃への行動に驚いてまたも鞄を落としていたケイタも、それを拾うとアキラの隣に腰掛け直して問うた。


「ツアーに同行って、ハル君と恭也君にバックダンサーやってもらうとか?  それとも裏方?」
「そうだな、バックダンサーだ。  今まで付いてた子達って何人だっけ?  九人だろ?」
「そう、九人。  プラス、ハルと恭也入れるって事か?」
「その予定。  俺らの全面バックアップもお願いしたいって社長言ってただろ?  後々CROWNと葉璃達をコラボさせようって魂胆だと思うんだよなー」
「あぁ、そういう事か。  切り離して別物として考えるんじゃなく、完全に弟分的な扱いでって事だな?」
「そうそう。  うち男グループで売り出してんの俺らしかいねぇから、もう一つユニットあればコラボ出来るし強みになる。  ……なぁ葉璃、出番終わりまたシャワー浴びたろ?」


 俺の匂いが全然しねぇ、と呟いてようやく葉璃から離れた聖南は、長い足を組みながらマイペースにもお茶を飲んでいる。

 周囲の三人はきっと同じ思いで、しばらくその王様憮然とした聖南を眺めていた。




感想 3

あなたにおすすめの小説

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。