必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 あんなにもムードたっぷりなレストランは初めてで、ほとんど味なんか分からないほど緊張しつつ上品な料理を嗜みながら、夜景をバックに聖南と新年の挨拶を交した。

 レストランを出てから、上等なもふもふの絨毯の上を弾みながら歩いてると「かわいー」と聖南に笑われて、しょうがないじゃんって膨れたけど。

 エレベーターでひとつ下の階に降りて、取っていたという部屋へ入ると俺はまたも回れ右したくなって、現在、扉に張り付いて動けないでいる。


「何してんの、おいで」


 コートをハンガーに掛けている聖南は、扉にひっついて離れない俺を見て笑顔を溢した。

 聖南は似合うよ、うん。

 誰が見てもこの部屋の主って感じだ。

 でも俺みたいな庶民は、こんな……こんな、テレビの中でしか見た事ないようなホテルの一室なんて衝撃しかないんだよ。


「む、無理です、足が動きません。  寝るなら俺は廊下で充分です」


 俺を手招きする聖南に、ぶんぶんと頭を振る。 あの廊下の絨毯すら俺には勿体無いくらいだ。

 まだ俺は扉から一歩も動いてないけど、ここからでもこの部屋の凄さが分かる。

 一昨日寝かせてもらったホテルの一室の軽ーく三倍以上の広さがあって、どこに向かって伸びてるのか分からない螺旋階段まで設置されてて「ひぇぇ」だ。

 ピカピカな室内と豪奢な造りから、これはもしかしてスイートルームというやつなのではと思い始めると動揺が止まらない。


「動かないんなら仕方ねぇな。  よいしょっと」
「わわっ、うー!  降ろして下さい!  聖南さんは慣れてるかもしれないけど、こんな立派なとこ、俺には場違いですってばー!」
「うるせぇな、俺も初めて来たっつーの」


 抱き抱えられて暴れてても、軽々と運搬されて優しくベッドに置いてくれた聖南の顔を見上げると、まだ頬が赤かった。


「初めて……?  聖南さんも初めてですか?  なんで?」
「なんでって……なんで?」
「だって聖南さん……いっぱいこういうとこで、その……あの……」
「してねぇよ、こんないいとこ連れて来るわけねぇだろ。  葉璃が初めて。  連れて来たいと思ったの葉璃しかいねぇから」


 そんなズバッと言い切られちゃうと、俺は黙るしかない。

 色々と慣れてる様子だったから、てっきり聖南はお目当ての人を落とすために何度もこのホテルを利用した、常連なのかと思った。


「どうする、シャワー浴びるか?  このまま襲っていいならそうするけど」
「……あ、浴びます! 浴びたいです!」
「ふっ。  じゃあ運び直しな」


 笑顔の聖南は再度俺を抱えると、バスルームへと運んでくれた。

 やたらとシャワーを浴びたがる俺にちゃんと聞いてくれたはいいけど、この後待ってる事が予想できてつい手付きが遅くなってしまう。

 聖南のお家もピカピカだけど、このホテルのバスルームは目をやられちゃいそうなくらいすべてが磨き上げられていた。

 さ、さすがスイートルーム……。


「葉璃、俺の体も洗ってくれる?」
「へっ!? あ、え、……いいですけど……」
「うろたえ過ぎ。 ここでは襲わねぇから安心しろ」


 だって、だって、俺の髪とか体とか洗ってくれてる聖南の股間に、つい目がいっちゃったんだもん……!

 恋人なんだからこんな事でドキドキしてても仕方ないのに、聖南の体に触れるのは未だに緊張する。

 俺のとは比べものにならないくらい立派なものを成長させて、やらしい瞳で物言いだげに見下ろしてくるんだよ。

 ……そんなの、平静でいられない。

 聖南の家以外のベッドでするなんてのも初めてだから、俺はセレブな雰囲気と聖南の色気に呑まれて、どうしてもドキドキが止められなかった。




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