必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
502 / 541
〜十月某日〜(全十話)

4♡〜Dr聖南とNs葉璃〜





   恥ずかしいからシャワーは別でって俺が啖呵を切ると、聖南は盛大に駄々をこねてた。

   けど俺に甘い聖南が最終的には折れて、「しょうがねぇな…」って言いながらいじけてキッチンで水を飲んでる。

   俺はそれを見届けてからシャワーを浴びた。

   自分でお尻を洗うのがちょっと慣れてきて、これを聖南にしてもらうっていうのがまだかなり恥ずかしくて。

   この後散々いじくられるんだろうけど、それとこれとは別。

   興奮してたら俺も訳分かんなくなって素面状態とは言えないから、……いいんだ。

   とりあえずいつものパーカーを着て聖南とシャワーを交代して、その間にさっきの現場から持ち帰ってきたナース服に着替えてみる。

   どういう権限で持ち帰れる事になったのか知らないけど、聖南は嬉しそうに紙袋を持ってギラギラしていた。


「喉渇いたな……」


   ナース服を着てベッドで聖南がシャワーから出てくるのを待ってた俺は、妙な気分に陥っていて急激に喉が乾いてきた。

   ……イメプレのイメージを膨らませるってどうやるの。

   その言葉さえ初めて聞いたのに。

   聖南が怒ってると勘違いして、ビクビクなスタッフさんとの打ち合わせはほんとに十五分くらいで終わってしまい、何にもイメージ出来ないまま今に至ってる。


「聖南さん、水貰っていいですか……あっっ」


   シャワーの流水音が消えてしばらく経つから扉を開けてみると、長身の人影がまさに入って来ようとする所だった。

   ……聖南ってば……卑怯だ!

   ベッドルームを出た俺の前に、ドクターコート+眼鏡を掛けた聖南が居た。

   こんなの、見惚れないはずがない!


「…………っっ」
「倉田ちゃん、目が♡になってんよ」


   えっ? く、倉田ちゃん……!?

   もしかして聖南、もう演技に入ってる!?


「色々考えたんだけど、設定あった方が楽しめんだろ」
「せ、設定……っ?」


   目を丸くした俺に、眼鏡聖南は中指でクイと眼鏡を上げながらニヤリと笑う。


「そ。 俺は二十八歳の整形外科医。 父親の個人医院の跡継ぎで、まぁボンボンだな」
「はぁ……」
「葉璃は看護学校出たての二十歳。 高校で准看、その後正看取った新米ナース。 俺の医院に就職してすぐ二人は意気投合」
「……」
「付き合ってまだ半年でラブラブだ」
「…………」
「でもな、俺は他のナースから言い寄られまくってて、葉璃は患者やら医師からモーションかけられてて、お互いヤキモチ焼きまくりなわけよ」
「………………」
「て事で」
「…………っ!?」


   途中からあんまり聞いてなかった!

   そんなに細かい人物設定を作ってるなんて思わなかった。

   えっと……聖南はボンボンのお医者さんで、俺が新米ナース?

   二人は付き合ってて、お互いにヤキモチ焼き合ってる……こんな感じかな……?


「倉田ちゃん、今日の非常勤の宮下と何喋ってた?」
「み、宮下……って……」


   恭也の事か!

   な、なんかごめん……恭也……。

   聖南の中でのイメプレ設定の中の登場人物に、恭也が入ってるみたい……。

   ずいずいと俺をベッドルームに押し込みながら、聖南がドクターになりきり始めたから俺も合わせなきゃ……だよな。


「え、あの……今日の患者さんのカルテを持って行って、少しお話しただけ……です」
「その話した内容聞いてんだけど」
「なっ、内容……えぇっと……ハグしていいかって……」
「はぁ? ダメに決まってるよな? ハグなんてしてねぇよな?」
「………………」
「したのか?」


   イメージを湧かせるなんて出来ないから、真実を織り交ぜつつさっきの光景を思い出す。

   緊張で震える俺を出番前にいつも優しく抱き締めてくれる恭也は、「セナさん公認だから」と言ってほぼ毎回ハグしてくれるから……素直に頷いた。


「なんだよそれ……っ」
「……やっ……ちょっ……!」


   早速ヤキモチを焼き始めた聖南に体を抱えられて、あっという間にベッドに押し倒された。

   眼鏡の奥の瞳がギラギラしてる。

   演技なの、……これ?


「最近あんま連絡してくんねぇよな? メッセージの返事も遅えし。 俺から宮下に乗り替えようっての?」
「そんな……っ、そんな事ない……!」
「じゃあなんでハグなんてすんだよ。 この体は誰のものだっけ、倉田ちゃん?」


   現実との境が分からなくなってきた。

   聖南、マジでヤキモチ焼いてない……?

   ほっぺたに触れてくる聖南の手のひらの熱が心地良くて、その手に俺のも重ねて眼鏡の奥を見詰めた。

   そんな事を言う聖南も、他のナースからいっぱい声掛けられてるんだろ。
  
   面食いの聖南が面接して雇った(っていう設定にしとく)、美人揃いのナースばかりなのに……俺の方こそ、いつ鞍替えされるか分かんないんだよ。


「日向先生も、人の事は言えないでしょ」
「ひゅ、日向先生……っ! いいな、それ!」
「うちの病院は美人ナースが集まってるから、俺なんて脇役にしかならない……俺の方が、いつ捨てられるんだろって怖いよ……日向先生……」


   聖南のイメプレ設定に完全に乗り切った俺を見て、麗しい瞳がスッと細められた。



感想 3

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

元アイドルは現役アイドルに愛される

BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。 罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。 ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。 メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。 『奏多、会いたかった』 『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』 やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。

【R18】兄弟の時間【BL】

BL
色々あってニートになった僕、斑鳩 鷹は当たり前だけど両親にめっちゃ将来を心配されまさかの離島暮らしを提案されてしまう。 待ってくれよ! アマゾンが当日配送されないとこなんて無理だし、アニメイトがない世界に住めるか!  斯くて僕は両親が改心すればと家出を決意したが行く宛はなく、行きついたさきはそいつの所だった。 「じゃぁ結婚しましょうか」 眼鏡の奥の琥珀の瞳が輝いて、思わず頷きそうになったけど僕はぐっと堪えた。 そんな僕を見て、そいつは優しく笑うと机に置かれた手を取って、また同じ言葉を言った。 「結婚しましょう、兄さん」 R18描写には※が付いてます。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です