必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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〜十二月某日〜(全六話)

2♡〜ミュージカル観劇後〜




   CROWNの二人が居るってバレちゃいけないから、三人でヒソヒソ話してるみたいにアキラさんとケイタさんがニヤニヤしながら両サイドから俺に寄って来た。

   マスク越しだけど、二人が笑ってる。

   目元が細くなってるから分かっちゃうって。

   ていうか……俺、コスプレ好きなの二人にバラした事あったかなぁ?

   ……ん~~……無いと思うんだけど……。


「え~ほんと? 聞きそびれちゃってたけど、あのハロウィン企画の収録の後はどうしたの? セナとハル君、いそいそと先に帰ってたよね」
「そ、そそそそれは……っっ」


   ケイタさんの言葉に、ふとあの日のイメプレと濃厚なエッチが蘇ってきて顔が熱くなった。

   マスクしてるのに真っ赤なのバレちゃってそうだから、両手で顔を覆って二人からの興味津々な視線を避ける。

   するとアキラさんがフッと笑った。


「これは何かあったな」
「俺達の打ち上げは前に行った料亭予約してるから、たっぷり聞かせてもらわないと」
「えぇっ!? い、いいですよ、そんな……っ。 聖南さんはキャストさんとスタッフさんで打ち上げあるでしょうし……!」
「ハルが来てるのにセナが抜け出して来ないわけないだろ。 料亭には恭也も合流出来るって言ってたしな」
「恭也が……!」
「楽しくなりそ~♪」


   えぇ……!

   待ってよ、俺達だけの打ち上げって何っ?

   恭也も合流できるって、俺は知らなかったのになんで二人は知ってるの……っ?

   今日は聖南のミュージカル初日を激励に来てるんだよ。

   俺と聖南の話は要らないって……!


「あ、二部始まるみたい」


   まだ心の整理が付かないまま、再び辺りが暗闇に包まれた。

   ケイタさんの呟き通り二部が始まり、聖南は終盤にかけて主役の女優さんと歌いっぱなしだった。

   マリー・アントワネットの生涯、ところがそれは主に心情を描いてるから、フランス革命についてはそこまで詳しくは触れてない。

   もちろん聖南演じるフェルゼン伯爵についてもだ。

   生い立ちから最期までの一生、彼女の周囲との人間模様、夫との別れ……。

   歌唱や舞台セットもさることながら、中世ヨーロッパ貴族の豪華な衣装は目を瞠るものがあった。

   予備知識だけでも入れて来れば良かったとひたすら後悔したくらい。

   でもそう思ってたのは俺だけじゃなかったみたいで、舞台が終了して客席を立つ観客達は「フランス革命について調べてみよう」「ルイ16世の最期はどうなったの?」と、CROWNのセナ目当てに来てたっぽい子達は口々にそう言って帰って行った。

   考えさせられる事が多かった。

   彼女の、破天荒ながらその時代を生きる術を見出そうと苦悩した、愛と絶望に満ちた一生を、かつての同名ミュージカルとは少しテイストを変えて劇化したという触れ込みは本物だった。

   ……と、アキラさんとケイタさんが言ってる。


「うん。 素晴らしいミュージカルだった」
「素晴らしかったね。 セナの大根イジろうと思ったのに、ほとんど歌唱だったから圧巻の一言」


   やっぱりイジろうと思ってたんだ……!

   客が居なくなったのを見計らって席を立ったアキラさんとケイタさんが、息ぴったりに頷き合ってる。


「裏行ってキャストに挨拶しようか」
「ハル君、付いておいでー」
「はい……っ」


   俺も行かなきゃダメかなって逃げ腰だったのを、ケイタさんに捕まってしまい挨拶へと出向く事になった。

   裏へ行くと、まだ着替えの済んでいない出演者達が互いを励まし労い合っている最中で、俺は二人の背中に張り付いて気配を消す。


「お疲れ様ですー」
「お疲れ様でーす」
「えぇぇっ! CROWNのアキラとケイタだ!!」
「すごい! 本物だー!」
「お二人とも、セナさんの応援に!?」


   二人が激励の言葉を掛けている間も、キャストの皆さんは興奮気味にワーキャー騒いでて、俺は縮こまった。

   ───こ、こんなに居たんだ……!

   出演者がごった返す控え室内は、舞台のキャパと同じくそこまで広くはない。

   そこには豪華な衣装をまとった何十人もの出演者達が居たから、俺は話なんか到底出来なくて、とにかくペコ、ペコ、と頭を下げて「お疲れ様でした」を伝える。

   視線で聖南を探してみても、どこにも居ないと分かってからは特に、アキラさんとケイタさんの背後で気配を消す事に専念した。

   CROWNの二人の訪問に喜んでいた皆さんは、俺の事も指差してくれたけど……ガチガチな俺の姿を見て笑い、必要以上に踏み込んで来ない大人の対応をしてくれた。


「セナどこ行ったんですか? シャワー?」
「セナさんならさっきまでそこに……あら?」
「多分シャワー室居ると思うんで外探してみますね。 皆さんお疲れ様でした」


   アキラさんはそう言って扉を閉めた。

   いつの間にか俺は、アキラさんのシャツをしわくちゃになるくらい握り締めていて、慌てて離れて頭を下げる。


「わっ! すみません! アキラさんのシャツが……!」
「別にいいよ」
「ハル君さぁ、なんでアキラにはそんな懐いてんのに、俺にはまだ壁があるんだろ~」
「え、え、? 壁なんて……」
「あるよ、ありまくり。 俺拗ねちゃうぞー」



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