狂愛サイリューム

須藤慎弥

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57♡見せかけ

57♡⑩※




 え、えぇ~っ!?

 ちょっと待ってよ。聖南、全然そんな素振り見せてなかったよっ?

 何なら俺一人だけで盛り上がってむなしいとまで思ってたくらい、聖南の瞳はずっと正気だったじゃん……!


「が、我慢……っ? 我慢してたってどういう……んっ! やだ、聖南さん何してっ、やだ……っ」


 当然のように俺の両腿を抱え上げた聖南は、おもむろに、しかもすごくナチュラルに大事なところに顔を寄せている。

 いきなりのムード転換に、俺は盛大に戸惑った。

 まっ、待って待って待って。

 俺も苦手なんだよ、それ……!


「…………」
「聖南さん! ひぅっ……んっ……! せな、……さんっ」
「…………」


 空気を読まない俺の分身を、聖南はなんのためらいも無く、持ち主の許可も得ないでパクッとくわえてしまった。

 聖南の頭をグイグイっと押してもまるで無駄だ。乱れた焦げ茶色の髪に触れても、何の反応も示さない。

 あったかい口の中で、飴玉を転がすように舌を使われると息が詰まる。

 気持ちいいよりも、困惑の方が大きい。

 聖南のと一緒くたに握られて扱かれることは多々あっても、フェラは稀だ。

 俺も聖南もこれが苦手だっていう共通認識があって、でも困ったことにお互いがお互いのものを舐めたがる。

 あぁ……だめだ。集中できない……。

 はむはむされてもすぐにその快感に浸れない俺って、ヘンなのかな……?


「…………」
「せなさん……っ、もう……だめだって、言ってる、のに……! んん……っ」
「フッ……濃くなってきた。かわいー。……感じてんの?」
「や、やだ……っ、そんなこと……言わな……あっ……!」
「…………」


 溢れ出た先走りを舐め取った聖南は、俺に嬉しそうな笑顔を向けてまたパクッとくわえた。

 お、俺だって一応男だから、まったく感じないわけじゃないもん。

 あの聖南が俺のものを食べてるって考えただけで、『うわわわぁ~』なんだよ。

 ほんとに食べてるわけじゃないけど、俺の分身は聖南の口にまるごとすっぽり収まるくらいのサイズだから、あったかくてふわふわして、お風呂に入ってる時みたいな気分になる。

 口の中でめろめろされて、時々先っぽをチュッと吸われて気持ちよくならない方がおかしい。

 だけどどうしても、あんまり集中できない。

 やめてほしいって意味で聖南の頭を懲りずに押してるんだけど……その気になった恋人はそう受け取ってはくれなかった。


「……フッ」
「やだ……っ、やっ……せなさん……っ」
「…………」
「せなさんっ、だめ……っ! イっちゃう、からぁ……っ」
「……ん~」
「あぁっ……だめっ、せなさん、だめっ……! だめだってばぁ……!」


 聖南のめろめろは巧みだった。

 男にしては存在感の薄い俺のものを、ほんとに美味しそうに舐めて吸ってを絶え間なくされちゃうと、たちまち意識が朦朧とした。

 聖南にくわえられて五分も保たずに、一気に駆け上がった欲は自分じゃどうにも出来なかった。


「……んんッ──!」


 出る、と思った瞬間、俺はぎゅっとまぶたを閉じた。

 ビクンッと腰が跳ねる。

 それと同時に放った精液を、聖南は嫌がることなく飲み干して、さらには敏感な先っぽをめろめろした。

 ぺろ、と舌先が当たるたびに、無意識に腰が小さく揺れる。

 ……聖南……飲んだの、……。

 真っ白になった脳内の隅っこで、お世辞にもおいしいとは言えないアレを飲ませてしまった罪悪感が生まれたものの、離さなかった聖南も同罪だと開き直るしかなかった。


「……っ、ふっ……はぁ……っ」


 射精した後は、すぐにはまぶたを開けられない。しばらく瞳を閉じてても、チカチカと小さな光のお星様が舞う。

 五十メートルを全速力で走った時みたいに息が上がって、何もかも億劫に感じる脱力感は独特としか言いようが無い。

 射精を促すことだけに集中した聖南の猛攻に、俺は耐えられなかった。

 耐えられるはずが無かった。


「おい、早過ぎるぞ葉璃ちゃん。イイとこ擦りながらイかせたかったのに」
「はぁ……っ、むり……そんなの、むり……」
「やってみる?」
「い、いや……! いまイったばっかだから……っ、触んないでほし、……っ」
「触るなだと~? 俺の葉璃なんだけど~?」
「……っ、聖南さん!」


 薄っすらと確認できた聖南の表情は、明るい声色通りのそれだった。

 そんなに楽しそうに、射精直後の敏感なソコを揉まないで……。

 ただでさえ全身の脱力感がハンパないんだから、いちいち腰をビクつかせてたら疲れちゃうよ……。


「んっ……んっ……」
「今日は一段と感度いいなぁ。どしたの」
「わ、かんな……っ……あっ」


 またやる気を育てようとしてるみたいに、微笑んだままモミモミを続ける聖南の手を振り払うことも出来ない。

 触られたら声が出ちゃうのも、しょうがないじゃん。意識してるわけじゃない。


「なぁ、葉璃ちゃん。一人で考えて結論出たんだよな?」


 ……だから、聖南がいつ笑顔を封印したのか分からなかったんだ。

 唐突にそう問われても、ふわふわぼんやりしていた俺はついてけないって。

 だってまだ、真顔に戻った聖南は柔らかくなった俺の大事なところをモミモミしてる。

 話をしたいのか、やらしい事を続けたいのか、ハッキリしてほしい。


「ん……えっ? いま、その話……するんですかっ?」
「気になるから同時進行でいこうかと」
「えぇ!? そんなの……んっ……ムリですよ! 俺、聖南さんみたいにマルチタスク出来な……んんっ」
「でもこの方がたくさん話出来るよ。時間は有効に使わねぇと」
「それ、は……っ、器用な人なら、出来るでしょうけど……あぅっ」


 同時進行なんて出来ないよ……!

 俺のモノを散々弄んで離れた聖南が、ふと馬乗りになってくる。

 見上げると、重みに耐えかねて妙な声を上げた俺の髪を優しく撫でてくれた。


「葉璃が風呂行ってから、俺も一人で考えてたんだよ。てか嬉しくてさ」
「う、嬉しいっ? えっ? あっ……そこダメ……っ、一緒にしたら……っ」
「葉璃ちゃん乳首めちゃめちゃ感じるようになったよなぁ。まぁ最初っから感度良かったけど」
「……っ、あっ……」


 頭を撫でられて気持ちよくなれたのは一瞬のことで、大きな手のひらは俺の首筋から胸元をさらりと這った。

 それだけじゃなく、いたずらな指がきゅっと乳首を摘んだ。もう一方の乳首もちろちろと舐められていて、またも声が抑えられない。


「あっ、んっ……」
「俺が考えナシな発言したのはマジで悪いと思ってる。悩ませるつもりはなかった。……俺も、一人になって反省してたんだ」
「や、やだ……っ、せなさん……っ」
「葉璃はマジで逃げなくなったよな。大事な局面で一人になって考えたい、なんてさ。三年前だったら考えられなかったよ」
「んぁっ、あっ……やっ、せなさん! そんなに、めろめろしたら……っ」
「俺が悪いのは最前提として、葉璃の成長を垣間見られて単純に嬉しかった。結論は何でもいいんだ。俺は葉璃の気持ちが一番大事だから、葉璃の考えに従う」


 俺の左の乳首を舐めながら、いったいどうやって喋ってるんだろ……。

 平べったい胸に吸い付く聖南の髪が、体に触れてくすぐったい。

 聖南の話をちゃんと聞きたいのに、快感を追わせようとしてくる指と舌が、巧みに俺を攻め立てる。

 ほんとにどっちも進めようとしてる聖南を止めるには、もう……言うしかない。


「おれ、……っ、やります、ヒナタ……っ」


 すべての動きを止めた聖南が、パッと顔を上げる。

 他にも言いたいことはあったけど、聖南の意識を逸らすためには結論から言った方が効果的だと思った。


「……マジ?」
「はい、やります。俺の気持ちが一番大事だって、いつも聖南さんが言ってくれるから……。ヒナタのこと、聖南さんがすごく真剣に考えたプランがあるなら、俺の方こそ聖南さんに従います。俺は……俺のことを大事に思ってくれる聖南さんの考えを、俺も大事にしたいと……んぐっ」


 聖南は、最後まで言わせてくれなかった。

 体を締め上げる勢いで抱きしめられた。

 これはいつものやつ……いや、いつも以上に熱烈だ。

 背中に回った腕があまりにも強くて、息が出来ない。


「聖南さん、……ぐるじい……っ」
「…………」


 一人になってじっくり考えたいと言っただけで、なぜか嬉しくなってくれた聖南の事だ。

 俺の結論は、プラン存続にも、そのあとの聖南の展望にも光が見えて、感極まったに違いない。

 苦しくて聖南の背中をパシパシ叩いてみても、ビクともしなければ離してもくれない。

 それだけ、感情が昂ぶった証拠なのかもしれない。

 ね、聖南。

 いくらマルチタスクが得意な聖南でも、さすがに同時進行はムリだったでしょ。

 俺はまだぜんぶ話せてないよ。

 『すみません』の撤回と、俺のがんばりを認めてくれて『ありがとう』、言わせてほしいんだけどな。






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