40 / 632
3♡「ルイ」
3♡⑤
しおりを挟む───成長、途中……。
それって……俺は、これからも成長出来るってこと……?
聖南はまだ途中だって思ってくれてるの……?
それとも、俺が傷付かないようにまた甘やかしてくれてる……?
「………………」
ネガティブな俺は、どこまでも優しい視線をくれる聖南の瞳から真意を読み取ろうとした。
聖南は俺に甘くて、いつも優しくて、何も心配するなと俺の前に颯爽と立って弊害から守ってくれようとする。
だから今も、俺がこれ以上悩まなくて済むように本音を語っていないんじゃないかって不安だった。
けれど聖南の瞳は、鼓舞激励に満ちていた。
甘々な恋人としてではなく、突如として現れた「CROWNのセナ」が俺の手を力強く握った。
「葉璃は努力してる。 才能もあるし、この世界で生きるためのオーラも、運も、華も、確実に持ってる。 誰に何を言われたのか知らねぇけど、少しずつでも成長は見えてるよ。 一つ言える事っつーと、スタートが遅かった。 それだけだ」
「……そ、それがもしほんとでも、上がり症とか、すぐ緊張しちゃうのとか治してからデビューすれば良かったんじゃないのかなって……」
完全にチャラ男の言葉を真に受けてる俺って、ほんとに情けない。
あっという間に「いつの間にか」ステージに立ってた俺は、経験をいくら積もうと未だ恭也からギュッてされないと震えが止まらない。
成長著しい恭也に引っ張ってもらい過ぎて、いよいよ迷惑をかけてやしないかなって考えさせられた。
CROWNの三人みたいに強くて尊い絆があって、それぞれに活躍の場もあって、何があっても揺るがないCROWNが眩しい。
恭也ともそんな風に、二人が輝ける居場所がETOILEでありたいと思ってるのに、俺はこの一年ですっかり置いてかれた。
思えば恭也は、デビューするまでの一年の間の成長も凄まじかった。
あの時点で俺は遅れを取ってたんだ。
補い合うだけの力が、俺にはない。 何にもないよ。
何だか恭也にも申し訳なくなってきて、目の奥がツンとしてきた。
けれど視界が潤んでしまう直前、聖南が俺の腰をグッと引き寄せて抱き締めてくる。
「みんな完璧だと面白くねぇよ。 アイドルは色んなタイプが居る。 造られたものを無理に演じるより、素で居る方が楽だし楽しくねぇ? 見てる視聴者もファンも、その辺はすげぇシビアなんだぞ、今」
「……でも俺は、素を曝け出し過ぎて周りに迷惑をかけて…」
「かけてねぇって。 てかマジで誰だよ、余計な事言いまくってんな! 俺のかわいー葉璃ちゃんをこんなに悩ませやがって!」
「うむっっ、く、苦しいです……っ、聖南さん……!」
腰に巻き付いた聖南の腕にふいに力がこもって、ぎゅむっと締め上げられた。
聖南の顔が俺のお腹にめり込んで痛い。
着痩せする体にはしなやかな筋肉がまんべんなく付いてるんだから、いきなり強い力で抱かれると苦しくて呻いてしまった。
パシパシ、と聖南の肩を叩くと、「あ、ごめん」と笑いながら離れて立ち上がる。
二十センチ以上も身長差のある聖南が、間近で俺を見下ろして八重歯を見せた。
「ま、俺としてはいい悩みだったから安心した。 葉璃が惰性で仕方なくこの業界に居る事を選んでるわけじゃねぇって分かったから、聖南さんは嬉しい」
「惰性なんて……それはないです。 聖南さんとずっと一緒に居たいですから。 ……悩んだのは、そのせいです。 ……聖南さんに呆れられてないかなって思ったら、自分がどうしようもない奴に思えて仕方なくて……」
「えっ、嬉しいこと言ってくれんじゃん♡」
ついさっきまでの不機嫌オーラは何だったのってくらい、聖南が笑顔を絶やさない。
すっぽり抱きすくめられて大きな背中に腕を回すと、俺にも聖南のぽかぽかした気持ちが伝染してきた。
かなわないな、ほんとに。
俺の事ぜんぶ受け止めて、欲しかった言葉を真っ直ぐにくれて、怒りや悩みを引き摺らないように俺の顔色を見て、何気なく勇気付けてくれる。
ぐるぐるしててもいいと言ってくれた聖南は、いつでもこうして励ましてくれる。
これは甘やかされてるんじゃない。
導いてくれてるんだ。
聖南が棲む領域に、正反対のところで暮らしてた無知な俺を。
「なぁ葉璃。 誰が何と言おうと、俺の言葉だけを信じてろって言ったはずだ」
「……はい……。 ごめんなさい……」
「素直に謝れる葉璃が好き」
「好っ……!」
不意打ちは卑怯だ……!
見詰められたら誰もがほっぺたを真っ赤にしちゃうくらいの熱い視線を向けられて、俺は思いっきり照れた。
この聖南の温かくてヤンチャな笑顔…大好きだ。
照れくさいけど、聖南の胸に顔を埋めて「俺も好きです」って返した。
打ち明けた事でホッとして心が軽くなったからなのか、ドキドキとうるさい心臓の音に紛れてお腹が鳴った。
「そういえば晩ご飯全然食べられなかったな……」
「……ん、んっ? いつもよりは少なかったけど、葉璃ちゃん一品料理も白飯もぜんぶ食べてたぞ?」
「…………そうでしたっけ……」
「お腹空いてきたの?」
「はい、……ちょっとだけ」
「そんじゃ軽く食べるか? 食材残ってっから作ってやるよ」
「え! ほんとですかっ? あ、いや……でも聖南さんお仕事終わりなのに……」
「俺に気を使うなよ。 深夜だし、チャーハンか雑炊?」
「……! どっちでもいいです!」
「よーし。 じゃあ手洗って待ってろ? そんで食べたらお仕置きだからな~」
「…………え……っ?」
腕捲りをしてキッチンへ向かう聖南が、振り返ってニヤリと意地悪に笑った。
思いがけずの聖南の手料理が楽しみで、わーい!と両手を上げて喜んでた俺はそのまま一時停止する。
いま、お仕置きって言った?
……なんで? ちゃんと打ち明けたのに、なんでお仕置きなの……?
「俺に冷たくした、お仕置き」
「そ、そんな……っ」
両手を上げてフリーズした俺に、聖南は一言告げてベッドルームを出て行った。
こんな日に限って、お仕置き……。
しばらく動けなかった俺は、ある事を思い出してぷるっと体を震わせた。
──聖南は二日、禁欲している。
10
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
灰の底で君に出会う
鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。
それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。
これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる