171 / 632
16♡
16♡6
しおりを挟む熱くなった顔面を手のひらでパタパタ扇いで冷ましながら楽屋に戻ると、ルイさんが神妙な面持ちでスマホを長机に置いた。
誰かと電話してたんだ、……って、たぶん聖南なんだろうけど……戻った俺を見る視線が何だか怖い。
顔が整ってる人は真剣な表情をしてるだけで怒ってるように見える。
「今な、セナさんから連絡あったんやけど。 ハルペーニョ連れてロケ見に来いて」
「あ、っ……」
机に散らばった私物を鞄にしまうルイさんが、明らかに「何かおかしい」といったように表情を崩さない。
頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになるだろうなって思ってたのに、この雰囲気はそれとはちょっと違いそうだ。
この間も似たような空気になった。
聖南が必要以上に俺を過保護に扱ってる……ように見えてならないルイさんの疑問が、今また再燃したっぽい。
「なぁ、ハルペーニョ。 俺になんか隠してることあるやろ」
「…………ん、へ、っ? な、なな、なっ? なんで急にそんな事言うんですか! 無いですよそんなの!」
まさにその通りで図星をつかれた俺は、ついムキになって声を荒げた。
バレちゃダメだ。 聖南との関係はもう、誰にも勘付かれちゃいけない。
嘘が下手な俺のその思いが前面に出てしまって、勘の鋭いルイさんの片眉がぴくっと上がる。
「……いや、そんな怒るようなこと、俺言うたか? いきなり怒鳴ったら血圧ボーン上がるで」
「………………っ」
「ついでに言うと、その反応は黒一色。 分かりやすいなぁ、ハルペーニョ」
「………………っ」
「そんじゃ、白状してもらおか」
「何をですか!」
「俺の口から言うてええの? これは結構な特ダネやと思うけど?」
「なっ……」
「俺なぁ、気付いてもうたんよ。 ハルペーニョとセナさんがなんでそない仲がええのか」
「────!?!?」
これは……っ、き、気付かれてる……!!
結構な特ダネだなんて、そりゃそうかもしれないけど、そんな言い方されたら心臓がギュッてなるよ……!
ていうか、いつ? いつからバレてたの? 俺そんなに「聖南さん好き好き」ってオーラ出してたかな? 我慢してるつもりだったのに……!
いや……我慢出来てなかったかも。
「二人は、……」
「あぁぁぁ……! だめっ! だめっ!」
「……喘ぐなや」
「喘いでないです!」
「単純明快やんな。 今まで気付かんやった方がおかしいわ。 よう考えたら分かることやったのに……俺とした事が」
「………………っ」
言わないで。 ルイさんにバレたからって世間に広まるとは思わないけど、でも俺も聖南も必死で隠してる "特ダネ" なんだよ。
気付いてても、気付いてないフリをしててほしかった。
聖南の立場が危うくなるくらいなら、俺はどうなってもいいから……!
目を回しかけた俺に、ルイさんは「車行こか」と言って鞄を抱えた。
特ダネだから楽屋では話せないって気を利かせてくれたのかもしれないけど……その用心深さが、ルイさんの疑問の答えを表してる。
ルイさんに背中を向けて急いで私服に着替えると、そそくさと社用車の後部座席に乗り込んで瞳を瞑った。
寝たフリ大作戦だ。
「セナさんとハルペーニョは親戚なんやろ?」
…………ん? ……親戚?
ルイさん、……?
運転席に乗り込み、エンジンを掛けてすぐに発せられたルイさんの台詞。
思いがけない事態に、寝たフリ作戦を即座に中断して瞳を開ける。 ルームミラー越しにルイさんと目が合った俺は、小さく首を傾げた。
「………………?」
「そやから大塚のレッスン生でもないハルペーニョのデビューがトントン拍子にいってる。 そこまでせんでええやろぐらいのセナさんの特別扱いも、二人が家族ぐるみで仲がいいからや。 っていう、俺の推理」
「……あ、……」
「どうなん? 当たりやろ」
「うっ、……」
……当たりじゃない。 ハズレだよ。
俺と聖南は少しも血は繋がってない。 将来を誓い合ってはいるけど、それもまだ先の話。
運転を始めたルイさんの得意気な表情が、ルームミラー越しに見える。
そう誤解されてるんだったら、いっそ当たりだって言った方がいいのかな。
でも俺は、聖南からお墨付きを貰うほど嘘が下手だ。
嘘に嘘を重ねたら、どんどんわけが分からなくなって絶対にボロを出す。 しかも毎日一緒に居るルイさんに、これ以上嘘を吐くのは気が引けた。
だから俺は……。
「……俺の口からは言えません。 セナさんに聞いてください」
「そんなん正解やって認めてるようなもんやん! ……まぁええわ、今から会う事やし聞いてみようやないの」
「…………はい、そうしてください」
こんな時、聖南ならどう返事をするのか。
我ながら卑怯だと思いつつ、俺が下手に説明するとせっかくルイさんが誤解してくれてるのに新たな疑問を抱かせてしまうから、素知らぬ顔で窓の外を見た。
──聖南さん、あとは頼みましたっ。
10
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
灰の底で君に出会う
鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。
それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。
これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる