狂愛サイリューム

須藤慎弥

文字の大きさ
252 / 632
24♡ゴシップ

24♡7

しおりを挟む



 聖南は謎の能力を持っている。 メニュー表をめくり「美味しそう」と目を止めた俺の視線を見ていただけで、注文する料理を決めた。

 俺は何も言ってないのに、最後のページを捲り終わるやすぐに立ち上がって、わざわざ個室の外にまで注文しに行った。

 甘やかされてるなぁ、俺……。


「……で? 話は出来た?」


 戻って来た聖南と目が合って、頷く。

 ちなみにルイさんは、メニューを決めてる最中も黙って俺達の様子を見ていた。


「はい、……一応は」
「補足した方が良ければ、俺も話すけど」
「いやいや、その必要は無いです。 ハルポンに惚気てもらいましたんで」
「えっ♡ 葉璃が惚気てた? マジで? 何て言ってた?」
「セナさんのことめちゃめちゃ好きやって言うてました」
「ちょっ、ルイさん!?」
「えー♡ えー♡ えー♡ マジかよっ♡ 葉璃、そんな事言ってたの? なんて惚気てたんだよっ♡」
「えぇっ?」


 クイクイっと肘で俺を押す聖南のアイドルの仮面が、半分は剥がれた。

 ルイさんもルイさんで、誇張してそんな事を言うから見事に聖南が有頂天だ。 お家に二人っきりで居る時の声になってる。

 ニコニコな聖南と、狼狽える俺。

 こんなの誰が見てもバカップルだよ。

 外でここまで甘えたにはならない聖南を間近で見て、ルイさんもケラケラと笑っていた。

 わざわざ聖南が補足しなくても、これだけで俺達の関係が証明されたも同じだ。


「ハルポンがセナさんのこと、いっぱい好きやって言うてたんはこの耳でバッチリ聞きましたんで。 これでお二人の関係もハッキリしたいうもんですわ」
「え、あのっ、ルイさん……っ?」


 笑顔のまま立ち上がったルイさんを、目で追いかける。

 デレデレしかけていた聖南も、さすがに何の話もしていないうちから帰宅しようとするルイさんを引き止めた。


「おい、帰るのか? 一品料理食ってけよ」
「俺はもう腹パンパンっす。 あとは二人で仲良うやってください」
「ルイさん……っ」
「ハルポン、明日は十時な。 セナさんゴチっす!」
「あぁ、……お疲れ」
「……ルイさんっ」


 ……俺には分かった。

 こう見えてルイさんはかなり気を使う人だから、俺と聖南を二人きりにしてあげようとしてくれたんだって。

 個室を出て行く寸前、さっき言えなかった事を伝えるために俺は立ち上がる。

 ルイさんが着るとあんまりガラの良くない迷彩柄のジャケットを捕まえて、


「あの、……ありがとうございます。 聖南さんと俺のこと否定しないでくれて、ありがとうございます……っ」


と頭を下げた。

 するとルイさんは、歳の離れた弟にするみたいに俺の頭に手のひらを乗せて、髪をグシャグシャにして笑った。


「……こちらこそ。 ハルポン、話してくれてありがとうな」


 惚気けられてもうたわーと笑いながら、ルイさんは何ともあっさり個室を出て行った。

 ほんとに、あっさりだった。

 じわ…と聖南を振り返ると、ちょいちょいと手招きされる。

 近寄って行くとすぐに腕を引かれて、抱き締められた。

 甘えたな聖南が顔を覗かせてデレデレしてたけど、ルイさんが居る前では一応我慢してくれてたんだ。

 膝をついた俺もキュッと抱き締め返して、温かくていい匂いのする胸に収まる。


「葉璃、話して良かったと思ってる?」
「……はい。 これからの事を考えると、話しておかないといけない仕方無い状況だからって……思ってましたけど。 ルイさんにはもっと早く言うべきだったな……」
「ルイがETOILEの加入候補者だって分かった段階じゃ、まだ言えなくて当然。 葉璃がルイを贔屓しちまってたのは誰の目にも明らかだったけどなぁ、それも仕方ねぇ。 候補者の中で断トツの素質を見せつけてたルイが、葉璃にあれだけ心開いてんだもん。 新メンバーはコイツしか居ねえって満場一致だったのも頷ける。 加入が決まった時点で俺達のこと知ってもらったのも、いいタイミングだと思うよ?」
「そう、ですかね……?」


 聖南のためにも、もう他の誰にも俺達のことはバレてはいけないと思ってたんだ。

 でも……ルイさんの言葉を借りるなら、〝ルイさんにならいいか〟って思えた。

 俺にだけ秘密を打ち明けてくれたルイさんは、今後何があっても、絶対に俺と聖南を裏切ったりしないって確信した。 この関係を知っても、誰かに吹聴したり茶化したりもしないって、改めて分かった。

 何より普通に受け止めてくれた事が……とても嬉しかった。

 ルイさんにグシャグシャにされた髪を、聖南が撫でながら整えてくれる。 ふと顔を上げると、優しい微笑みを浮かべていた。




しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

灰の底で君に出会う

鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。 それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。 これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

処理中です...