283 / 632
27♡不穏な影
27♡8
しおりを挟む…………え? ……俺? なんで?
写真の被写体は聖南とレイチェルさんじゃないの?
どうして俺が当事者なの?
もちろん間接的には関係あるのかもしれないけど、ゴシップそのものとは何も……。
「……と、当事者……? ……え? 俺が、ですか……?」
心の声そのままに、険しい表情の社長さんに戸惑いをぶつけた。
ここに呼ばれた時点である程度の覚悟はしてたし、俺にこの件の話が通ってるかの確認をされたって事は、間違いなくゴシップ絡みなのは分かってた。
でもいきなり俺が当事者呼ばわりされるなんて思ってもみなくて、驚くというより唖然としてしまう。
社長さんはそんな俺の心中を察して、険しかった表情をわずかに曇らせた。
「そうだ。 単刀直入に言う。 この件が下火になるまでセナとの同居はやめなさい」
「……えっ!?」
「ハルは現在のセナの住まいの隣の部屋に住民票を移しているだろう? それの通り、そちらに住むんだ。 もしくは一時的に実家に帰るか」
「……なっ……?」
なんで……? なんで聖南と離れなきゃいけないの……?
確かに聖南は、誰かに何かを勘繰られても言い逃れ出来るように、わざわざ母さんを説得してまで隣の部屋に俺の住民票を移したと言っていた。
同じマンションに帰宅し、エレベーターで同じ階に上がろうとも、隣同士だからって言い訳がきく。 新人の俺があんな高級なマンションに住んでる事自体が怪しまれそうなものだけど、それに対する言い訳も聖南は考えていて、〝俺が衣装部屋として借りてるところに後輩を住まわせてるだけ〟なんだそうだ。
そう、聖南は俺と同棲するため、万が一が起こっても対処できるよう抜かりがなかった。
「あ、あの……なぜ、でしょうか」
レイチェルさんとの写真を撮られたからと言って、一緒に住む事を禁じられるなんてますます意味が分からない。
この件が下火になるまでって、そんなの理由もなく受け入れられないよ。 何より聖南も、絶対に納得するはずない。
少し反抗的になってしまった事にも気付かないほど、俺は不審感と疑念の目を社長さんに向けた。
けれど俺の問いに対する社長さんの答えは、思いがけないものだった。
「例の写真の送り主、……いやアレを激写した人物を特定した」
「──えっ!?」
「その者は恐らく、セナではなくハルの失墜と精神崩壊を目的としている。 これがどういう意味か分かるか?」
「………………」
お、俺の……俺の失墜と、精神崩壊……?
写真を撮ったその人は、聖南じゃなく俺を標的にしてる、……? 聖南のゴシップを使って、……?
どういう意味か分かるかってそんなの……分かるわけないじゃん。
もう何が何だか……頭の中がぐちゃぐちゃだよ。
なんでここには俺一人だけしか呼ばれてないの?
社長さんは何を考えてるの?
聖南はこの事、知ってるの?
俺を陥れようとしてるその人って……いったい誰なの?
次々と湧く疑問が、頭の中で複雑に交錯する。
知らないところで、いつからか俺が、聖南の火種になっていたという事実。
どれだけ気を付けていても、秘密にしていたいと思っていても、俺自身では防ぎようのない他者からのマーク。
〝失墜〟するほどのものを持たない俺が標的になるなんて、そんなことあり得るの……?
膝の上に置いた自分の手元に視線を移して、脳内を飛び交う疑問に俺はただただ愕然とした。
「申し訳ないが、まだこちらも証拠を集めている段階でその者の名は明かせん。 ただし用心してほしい。 相手は〝普通〟ではない」
「………………」
「自らの手を汚さんよう上手く動いているのだ。 今は必要以上にセナと関わらない方がいい」
「………………」
「〝ヒナタ〟の正体も知られている可能性が高い。 残り一ヶ月、レッスンに出向く事も避けなくてはならん。 それについてはすでにSHDと話をつけてある」
「……レッスンも、ですか……」
「そうだ」
そんな……そんなところまで知られてるの……?
〝ヒナタ〟はごく一部の人間しか知らない。 そのうちの誰かが口外してしまえば確実に、両事務所を巻き込んだ大騒動に発展する超極秘事項なんだ。
その秘密を握られてしまっているかもしれないとなると、社長さんのこの表情も頷ける。
未だ俺の頭の中は大パニックだけど、受け取る情報があまりに多過ぎて処理が追いつかない。 おかげで感情的になれもしない。
「セナの住まいは素人ではやすやすと侵入する事は出来んかもしれん。 しかし住人を装いセキュリティーを突破し、いずれ決定的証拠を撮られ世にばら撒かれるだろう。 それはハルが一番恐れている事ではないのか?」
「……ま、待ってください。 という事は、もうその人には俺と聖南さんの関係を……」
「ああ、大方知られているとみていい。 まだ相手は二人の関係を裏付ける決定的証拠を掴んでおらんだけだ。 あの写真をこちらに送り付け、まずは私達の反応を見ているのが何よりの根拠だ。 世間に恋人が居ると宣言しているセナなら、ツーショットを撮られたと分かるや何かしらの反応をするだろうと踏んだのだろうが……現状セナはよく堪えてくれている」
「………………」
10
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
灰の底で君に出会う
鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。
それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。
これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる